この記事は、平成29年1月にブログにアップしたものであるが、平成29年6月に諸般の事情で、いったんは削除したものである。しかし、国分寺駅北口再開発が完成に近づきつつある中で、過去に再開発の成否を左右する大事件があった事を忘れてはならないことから、再度、掲載するものである。掲載するにあたっては、議会の議事録、訴訟の裁判記録などで公開されている事実に基づき、記述したものである。 国分寺駅北口市街地再開発とパチンコ店出店阻止 国分寺駅北口再開発事業が順調に推移しているようだ。東街区・西街区のビルは完成に近づき、ツインタワーは、西街区135m、東街区125mの高層ビルを見ることができるようになった。この事業のスタートは、昭和40年(1965年)に遡る。この年、国分寺市が駅前広場を整備する決定を行ってから実に半世紀が経過したわけである。 この間、様々な立場の方々が再開発の完成を心待ちにしていたが、その中には、すでに他界された方も多い。多大な協力を惜しまなかった先人方に対して感謝を申し上げたい。 さて、この事業の経過については、国分寺市のHPでかなりの頁数で説明され、資料も公開されている。しかし、この経過の中で全く触れていない事実がある。その点について、概要を明らかにしておきたい。 それは、パチンコ店出店に関わる一連の経過である。国分寺市が、なぜこの経過を公表していないか、その理由は定かではないが、市議会の議論もあり全て議事録を検索すればわかることである。 私は、新規のパチンコ店出店計画のあった時期は、政策部長として関わっていた。この事件への対応について、政策課題の解決の視点から記憶をまとめておくことにする。後述の「経過資料等」は参考としてお読みいただきたい。 1.パチンコ店の新規出店計画が明らかに 国分寺駅北口には複数のパチンコ店があり、再開発事業の権利者となっていた。全国の再開発の権利変換計画で課題になるのは、パチンコ店の権利床の対応であることは、再開発に関わった人であれば周知の事実である。区域外への転出、補償金による廃業などへの対応が理想だが、事はうまくいかないことが多い。あまりにパチンコ店の権利床が多いと、完成した再開発ビルの大半をパチンコ店が占領してしまうことになるから、権利変換計画で他の権利者の同意が得られないことになる。 国分寺駅北口でも同様の悩みを抱え、平成18年・19年当時は、渉外担当が連日、権利者対応に奔走していた時期であった。 事件の情報は、いきなりもたらされた。ひとりの権利者「島田商事」の所有に「バザールK」という店舗があったのだが、この所有者である島田商事の社長から、星野信夫国分寺市長にバザールKは、浜松に本店のある株式会社浜友観光と賃貸借契約を締結したという報告があったのである。平成18年7月だったと記憶している。 島田商事は先代の社長・関係者を含め、北口再開発に全面的に協力し、古い店舗の1階を専門店(八百屋・魚屋・総菜屋など)に貸す事業を行っていたが、財務状況の悪化で、やむなく条件の良い借主、(株)浜友観光と賃貸借契約を締結したのであった。 庁内で緊急会議が開催され、経過が報告された。もともと、バザールKの土地については、再開発事業で重要な位置を占めるため、先行買収の交渉をしている最中であったから、市の関係者もショックな事件であった。さらに、浜友観光の事業参入は、パチンコ店であることから、二重のショックだったのである。まして、この時期は、北口再開発計画案の全面的見直しをしている最中であり、新規のパチンコ店の出店により、再開発計画が成り立たない恐れがでてきたのである。 2.権利者・議員・市民の意見 新規のパチンコ店の出店計画の情報は、あっという間に、議会、権利者、関係団体、地元市民へ伝わることになる。北口再開発計画案の市民説明会では多くの市民から懸念の声が出された。 市議会においては、平成18年9月定例会の一般質問、さらには、国分寺駅周辺整備特別委員会(平成18年9月14日及び11月2日)において多くの質疑が行われ、その質疑の中で、バザールKは、2階建てに改築され、1,800uのパチンコ店の計画であることが明らかになった。事業者は東京都に対する建築確認申請を準備し、国分寺市に対しては、まちづくり条例に基づく事前協議の相談があったことも明らかになってきた。 なぜ、このような事態になったのか、権利者対応がまずかったのではないかという質疑もあったが、結論的には、民間同士の契約であり、国分寺市は介入できなかったのである。このような経過の中で、関係市民からも心配の声があがり、商工会などの関係団体からは、パチンコ店出店の反対が表明され、市にいくつかの団体から要望書も提出されたと記憶している。 市議会は、市長に対して、パチンコ店の出店を何とか阻止できないのかという趣旨の質疑をするだけで、解決策を政策提言する動きも無く、議会としての名案もなかったのである。代表的な質問の例を紹介しておく。 ★★★★★★★★★★ 2006.11.02 平成18年 国分寺駅・西国分寺駅周辺整備特別委員会 ◯川合委員 そこで今、法律上はなかなか難しいということですが、あとはやっぱり政治的な、あるいは世論的なそういう動きなんだろうと思うんですね。そこで、法人会を初め、商店街連合会ですか、商連といわれているところとか、先ほど5カ所説明会を行ってかなりこれらに対する意見も出たというお話ですが、市長、いかがでしょうか。市民的世論としては、これ以上のパチンコ店出店は好ましくないと。その中に先ほど申し上げたまちづくりの面から、補償費の面からとあるのでしょうが、そういう世論はあるんだろうと思うんです。いわゆるこれは、まさに市民全体、総体的な潜在世論もあるでしょうし、あるいは超党派的なそういう世論もあるのだろうと思うんです。したがって、そこがですね。いわゆる法律でこの規制できない場合に、その世論をどう味方にしながらあきらめてもらうのかと。阻止するのかと。こういう点が、大きな市長の政治的な分野の仕事なんだろうと思うんです。この点、市長どうお考えでしょうか。 ★★★★★★★★★★ 3.国分寺市の対応と苦悩 市長以下、再開発担当、政策担当を含め、苦悩の日が続いた。都市計画担当を交えた庁内会議においても、名案が浮かばなかった。 苦悩のポイントは、 @新規のパチンコ店の出店が現実化すると、パチンコ店は借家人となり、再開発事業の権利者となる。 A結果的に再開発ビルにパチンコ店の床が大幅に増加することになる。 B再開発ビルの大半をパチンコ店が占有することになれば、権利床の価格が下がり、商業系の権利者は、権利変換計画に同意しないのではないか。 Cこれらの状況は、国分寺駅北口再開発事業が頓挫することを意味する。 D半永久的に再開発は不可能になるのではないか。 Eその結果、再開発に今まで協力してきた権利者から損害賠償を求められるのではないか等、再開発事業は危機的な状況に追い込まれたのである。 そして、権利者、関係団体、市民からは、何とかパチンコ店の出店を辞めさせてほしいとの要望が日増しに強まってくる状況にあったのである。 時間は過ぎる。バザールKの改造計画は進み、パチンコ店出店の専門コンサルタントからの協議なども市に持ち込まれた。このまま計画が進むと、建築確認申請などが年内(平成18年末)に完了するのではないかとの見通しも示された。都市計画上もまちづくり条例上も、さらには、再開発法においても、パチンコ店だからといって差別はできない。八百屋や寿司屋などと同等の権利者であり、法の下では平等である。 パチンコ店がギャンブルで射幸性を煽る社会悪だといっても、事業者としては平等の権利を持つので、パチンコ店だけをターゲットにして、再開発の権利者として認めないわけにはいかない。同様に、建築確認行政、都市計画行政からも同じ事が言えるのである。 まさに、八方塞がりとはこのような状況にふさわしい言葉である。何回もの庁内会議が行われた。私は、政策部長として会議に参加していた。 ある会議の終了後に、再開発の担当部長が「パチンコ店は風営法の許可が必要なんだが…」という趣旨の発言をしたことを記憶している。今になって考えてみれば、この時点で、再開発の担当の間では、パチンコ店の出店阻止のために、風営法が利用できるという議論をしていた節がある。具体的な案になっていなかったので、会議の中で正式議題にしなかったのかもしれない。 この時の再開発担当部長の発言がヒントとなった。ここから、私の挑戦が始まる。パチンコ店出店を断念させるための挑戦が…。 4.図書館分館設置の検討を開始 この当時の国分寺駅北口は、地図のようになっていた。 バザールKに隣接して国分寺市所有の土地と建物があった。この建物は、遡れば、三和銀行の国分寺支店だったと思う。その後UFJ銀行となった。そして詳しい経過はわからないが、所有権は債権機構に移った。これを、国分寺市が再開発事業用地として先行取得したものであった。 建物は十分使用できる状況にあったので、2階部分を市の都市開発部の事務所とし、会議室は説明会などに使用された。1階部分の活用については、保育園など様々な検討をした経過があり、平成18年当時は、産直会が野菜を販売する場所に活用し、東京経済大学を中心とする市民活動の場「国分人」として、講演会、展示、ワークショップなどに活用されていた。しかし、稼働率などの課題もあり、より有効活用すべきとの指摘を議会から受けていた。 その検討は私の所管であり、この建物の1階奥の部分をどのように活用するかを模索中であった。その一つに本多図書館の駅前分館とした「IT図書館」の発想があった。蔵書だけの図書館ではなく、インターネット検索などを中心とした図書館であり、地域資料や市民の情報交流の場にしたいとの考えもあった。急いで報告書をまとめた。「旧UFJ銀行施設の活用について」である。報告書最後の記述には、図書館の分館を整備することで、隣接する地域には、風俗営業(パチンコ店など)が規制されることも付け加えた。 この建物に隣接してバザールKがあったので、議会、権利者、関係団体、世論を反映し、パチンコ店出店を結果的に阻止できるのではないかとの見通しがあった。報告書が完成し、庁内調整に入った。市長も含め、この方法しかないとの内部意思決定をした。 しかし、後追いのパチンコ店出店阻止であるから、訴訟リスクがあることも事実である。過去の判例も検討材料となった。また、市の顧問弁護士及び専門家などの意見を聞いたが、対応についての意見の違いもあった。 法的リスクを軽減するためには@出店阻止の合理的理由を全面に出す。A出店阻止ではなく、図書館の必要性を全面に出し結果として出店できなくする。どちらの方法が良いかは、確定的な結論が出なかったように記憶している。私は、どちらにしろ、法的リスクはあると考えていた。そして、国分寺駅北口再開発事業が事実上不可能になることが、行政運営上最大のリスクだと考えていた。説明の方法はどちらでもよいと考えていたが、「旧UFJ銀行施設の有効活用について」の報告書をまとめた立場から、図書館分館の必要性があり、結果としてパチンコ店出店を阻止できると説明し、議会の答弁もこの考え方を通した。 本多図書館分館の設置に向けて、その具体的手順の検討に着手した。図書館は教育委員会の所管であるので、分館の具体的設計・機能、必要な予算の検討とともに、図書館条例の改正の検討を教育委員が行うこととなった。私の役割は、「旧UFJ銀行の活用について」の報告書を整理するとともに、平成18年12月議会への対応を模索した。図書館条例の改正が先行しなければ意味がない。一方で、パチンコ店出店の建築確認申請(用途変更)、まちづくり条例協議などが先行し風営法の出店許可が下りれば、再開発事業はどうにもならない状況に追い込まれる。そんな危機感があった。 教育委員会の検討が進み報告があった。分館の具体的設計・機能、必要な予算の検討は進んだが、図書館条例の改正について教育委員長の理解が得られないという報告があった。教育委員会の所管事項について条例改正をする場合は、教育委員会の決定をもって、市長が議案を提案する仕組みになっている。つまり、教育委員会の決定が無ければ、市長は条例改正議案を議会に提案できないのである。 まずは、教育委員会開催の当日、開催前の30分間で、図書館条例改正の必要性について説明することになった。そして、この案の「言い出しっぺ」である私が説明することになった。教育委員5人に非公式会議で、図書館条例改正の必要性を説明した。国分寺駅北口再開発の方向性がかかっていることも強調した。しかし、当時の教育委員長は弁護士であり、パチンコ店出店阻止を目的とする後追いの対応であり、法的リスクの懸念があることから、条例改正案を決定せず、継続審議とした。平成18年11月24日午前中の事である。 当日の午後、再度庁内会議が開かれた。せっかく良い方法で進むかと思ったにもかかわらず、図書館条例の改正は教育委員会の決定という壁にぶち当たったのである。 庁内会議は、重苦しい空気に包まれ、沈黙が続いた。教育長も出席していたが、良い案は浮かばなかった。 私が発言するしかなかった。発言の趣旨は「条例改正の議案提出権限は、市長だけではなく、議員提案という方法もあるのではないか。市長の予算権を侵害しない範囲であれば、議会の提案で条例改正できる。これは合法的な方法ではないか」であった。この考えの背景には、地方自治法、地教行法の規定の関係とともに、議会には、政策集団としての役割があるという佐々木信夫(中央大学教授)氏の著書に学んだことがあった。この際、市議会もパチンコ店出店に反対しているのだから、一役買ってもらう必要があると思ったことも事実である。 また、道は開けたのである。議会には、当時、東京都から派遣されていた鈴木隆夫助役が話をすることとなった。市議会は、7月以降の質疑で、パチンコ店出店を反対していることから、この方法はうまくいくのではないかと思った。この日は金曜日であった。仕事が終了し図書館条例改正の見通しもついたので、市役所前の居酒屋に飲みにいった。午後7時位だったと思う。鈴木助役から電話があった。そして、月曜日までにやるべき仕事の指示を受けた。またしても「言い出しっぺ」がやらなければならないのか。こんな気持ちにもなったが、国分寺市のためだからと納得しつつ、もう一杯…。 5.図書館条例改正の議案は議員提出議案 平成11月30日(木)に12月議会が始まった。11月24日の教育委員会で、図書館条例の改正案は継続審議になってから、一週間あまりが経過していた。そして、12月5日の一般質問の終了後、議員提出議案第4号が上程された。全会派代表の連名による議案であった。以下はその提案理由である。(議会会議録より) ★★★★★★★★★★★★★★★★ 2006.12.05 :平成18年 第4回定例会(第4日) 本文 ◯20番(横田美郎君) 国分寺市立図書館条例の一部を改正する条例の提案理由について、御説明申し上げます。 最初に、本条例案を議員提案するに至った経過について申し上げます。11月30日の市議会本会議の一般質問において、国分寺駅北口再開発に関係する旧バザールKのパチンコ店出店に関し、市長答弁がされております。その要旨は、1、旧UFJ銀行の1階部分に本多図書館の分館を設置する方針を決断したこと。2、この図書館はIT技術を活用した市政情報の提供を中心としたものであること。3、同様の図書館を将来は西国分寺駅周辺にも設置したいこと。4、この図書館の設置に関して、教育委員会に検討を依頼し、11月24日、教育委員会では継続審議となっていることであります。 また、この判断に至った理由は、1、旧UFJ銀行の1階部分の有効活用の検討を継続して進めてきたこと。2、旧バザールKへのパチンコ店出店を阻止すべきとの多数の意見を踏まえ、図書館が設置できれば、風営法に基づく規制によりパチンコ店の営業許可がおりないという答弁をしています。さらに、旧バザールKへのパチンコ店出店に関しての事業者の意向について、新しい動向も明らかにしています。このような市長表明を受け、市議会としても、早急な対応が必要であるとの判断に至りました。 まず、図書館の必要性であります。図書館は図書の貸し出しだけでなく、市政情報など、あらゆる情報の発信拠点として重要な施設との判断から、市議会としても地域バランスを考慮し市内に5館の設置を推進してまいりました。また、利用者のサービス向上に向けた取り組みとして、本年3月には図書館協議会設置条例を可決し、より利用者の立場に立った図書館行政を進めるべきとの立場を明確にしています。しかし、この間、市内の開発に関係し、西国分寺駅周辺などにも新たな図書館設置を求める市民の声が上がっております。また、開館時間の延長や、貸し出し、返却の利便性、インターネットの利用による図書館システムの充実など、図書館をめぐる要望も多様化、高度化しています。これらの市民要望にこたえるためにも、IT技術を活用した図書館の設置は有効な手段であると考えます。今回の市長表明である国分寺駅北口だけでなく、西国分寺周辺や市の公共施設の活用を含め、さらに研究、検討が必要な施策であると考えます。 次に、旧UFJ銀行1階部分の活用であります。本年より「まちづくり広場 国分人」として、東京経済大学、JA、商工会などと活用を図っていることは周知のとおりです。しかし、土日の開館や夜間の貸し出し、団体利用の拡大などについては、ことし6月の議会並びに9月において、複数の議員が一般質問等で取り上げており、この場所を利用して図書館の設置を行うことは、図書館利用を通じてこの施設の市民利用を大きく拡大することであると考えます。 次に、旧バザールKへのパチンコ店出店についてであります。この件については、国分寺駅・西国分寺駅周辺整備特別委員会でも、この間の経緯が説明されています。多くの団体や権利者、市民から、何とかこの計画を阻止できないかという意見も市議会に届いています。行政側からの説明では、現在のところ、事業者からは正式な申請等はなされていないようでありますが、多くの関係者の声を反映した対応が必要であることは言うまでもありません。国分寺駅北口再開発については、昭和50年代からの課題であり、都市計画変更、事業認可に向けた準備が進められております。長年の課題の解決に向けた関係者の努力と協力が必要な事業であり、これ以上のおくれは許されません。 今回のパチンコ店の出店の影響に関しては、市長答弁で次のように説明されています。1、パチンコ店の出店により補償費が増大し、財政フレームに影響する。2、パチンコ店の出店により権利者対応が困難になる。3、パチンコ店の出店により権利床の価格が安くなることが予測される。このような影響は、国分寺駅北口再開発の計画推進を大きく阻害するものであり、国分寺駅・西国分寺駅周辺整備特別委員会でも複数の委員が発言しているように、市として、何らかの対応策をとることが必要であるとの認識を持つものであります。したがって、このパチンコ店出店に関しては明確に反対の立場を表明するものであります。 最後に、図書館設置、旧UFJ銀行の有効活用とパチンコ店出店の計画の関係についてであります。今述べましたように、市議会としては、旧バザールKへのパチンコ店出店に関しては明確に反対の立場を表明するものであります。また、図書館については、国分寺駅北口周辺まちづくり構想の検討の中においても、再開発のコンセプトとして、IT図書館の必要性、市民への情報発信拠点などの記述があり、市長の表明に沿った事業計画を推進すべきであると考えます。さらに、旧UFJ銀行の1階部分の有効活用は議会でも求めてきたことであり、推進すべきであります。このような事業計画により、結果として風営法及び東京都の関係条例の規定により、事実上、パチンコ店出店の対抗措置がとれるとの市長判断に関しては、国分寺市議会としても同様の立場をとるものであります。したがって、民意を反映する役割を持つ国分寺市議会は、市長の議案提案を待たず、この事業を総体的、早急に推進すべきものとの判断から、本議案を提案するものであります。よろしく御審議いただきたいと存じます。 ★★★★★★★★★★★★★★★★ この提案理由は、現在までの経過、市長の考え方、市議会としての明確な意思が現れている。なかなかの出来ばえではないか。議会事務局の原案作成も大変だったのではないか…。誰が作成したかは別にして。 市議会全体の意思と星野信夫市長の方針が、これほどまでに一致した事例は、これまで全くなかった。議案に対して若干の質疑があった。@この条例改正による図書館分館の整備予算を市長は提案する考えはあるか。AIT図書館とはどのようなものか。などであるが、短時間で質疑は終了し、委員会付託は省略され、本会議で即決された。 国分寺市議会始まって以来の出来事であり、私の行政経験の中で、唯一、議会が議会の本来の役割を果たしたと思える出来事であった。この議決をもって、国分寺駅北口再開発は、課題は山積していたが、一つの大きなハードルを超えたのである。 6.損害賠償請求とその決着 平成18年12月議会が終了した後、パチンコ店出店を計画した(株)浜友観光の社長と弁護士から市長への面談の申し入れがあった。秘書担当部長とも相談し、市長の代理で私が対応することにした。鈴木助役が体調を崩して休んでいたので、お鉢が回ってきたのである。 面談の趣旨は、「市議会がほんとうに図書館条例の改正を議決したのか。その事実を確認したい。」であった。私は、一切余計なことを言わず、12月5日の本会議の事実だけを説明した。正式な議事録は翌年2月位になるのではないか。正確な質疑は議事録を確認していただきたいと付け加えた。この面談は、将来の損害賠償請求を予感させるものであった。この時の私の感想である。その後の争訟関係の経過は次のとおりである。 ★★★★★ 訴訟関係の経過(概略) @平成19年3月8日…東京簡易裁判所に島田商事、浜友観光が、国分寺市を相手に損害賠償の調停を申し立てる。 A平成19年11月20日…調停は不成立となり終了。 B平成20年9月8日…東京地方裁判所に浜友観光、島田商事が、国分寺市を相手に損害賠償請求を提訴。訴額は、19億円を上回る金額だったと記憶している。 C平成25年7月19日東京地裁判決…主文1.被告は、原告浜友観光に対し、2億477万9,919円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2.被告は、原告島田商事に対し、8,690万円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。3.原告らのその余の請求をいずれも棄却する。4.訴訟費用は、これを4分し、その3を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。5.この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 D平成25年7月29日…臨時議会・控訴提起 東京地裁の判決に対して原告及び被告の両方が控訴の手続きをしたと記憶している。 E平成26年2月24日…東京高裁から和解案が提示…その後協議が整う。 F平成26年3月25日…和解議案議決 和解案…原告2者に対する和解金額は、4億5,100万円。 ★★★★★ 東京地裁には、参考人として、星野市長、自民党横田議員(図書館条例の提案者)、私の3人が呼ばれた。初めての経験であったが、1時間40分ほどにわたり、原告側及び被告側からの証人質問を受けた。裁判長からの質問もあったと思う。聞かれた事だけに答えた。 最初の訴額は、約19億円程度だったと記憶しているが、最終和解金額は、4億5,100万円であった。一審と控訴審の弁護士費用も多額に上ったが、判決ではなく和解となった。一審では、国分寺市の違法性が認められた記述もあったが、控訴審の判決がされなかったため、この点は、司法の最終判断が無い結果となった。和解金額の考え方は、実費的な損害の認定であり、将来の「得べかりし利益」の認定は無かったと思う。 争訟は、調停から和解まで、約7年の時間を要した。この間に、国分寺駅北口再開発計画は進行し、@平成24年2月都市計画変更、A平成24年4月事業計画変更し、新たな施設建築物の計画を策定、B平成25年6月6日 特定建築者を住友不動産株式会社に決定、C平成25年9月5日 住友不動産株式会社と「国分寺駅北口地区第一種市街地再開発事業に係る特定建築者の業務に関する基本協定書」を締結(基本協定書の締結)。という経過をたどることになる。そして、平成27年7月1日、着工の運びとなるのである。 平成26年3月25日 和解議案の質疑にあたって、委員会に付託されるも一切の質疑もなく、市議会は和解案とともに補正予算を議決した。これをもって、国分寺駅北口の新規パチンコ店出店計画の最終決着がついたのである。 7.まとめ 国分寺駅北口市街地再開発事業は、前述した新規パチンコ店出店阻止が無ければ、成立しなかったのではないかと思っている。和解金及び弁護士費用に多額の予算を支出することになったが、再開発という長年の政策課題を解決するために、やむを得ない公費支出であったと思う。そして、パチンコ店出店阻止のために図書館分館を設置するという発想と、星野市長の最終政策判断がなかったら、国分寺駅北口再開発の現在の姿はなかったのではないかと確信するのである。そして、図書館条例の改正を議員提出議案とする枠組みは、私の発想であったが、この仕組みによって、最終和解議案と和解金額の支出にあたって、市長と議会の対立リスクを避けることができたのではないかと思っている。 このような経過があって、現在の国分寺駅北口再開発事業の現状があることを、関係者は決して忘れてはならない。 国分寺市がHPで公開している経過は、このパチンコ店出店の経過や訴訟などについての記述は一切見当たらない。情報公開の姿勢に疑問を持つとともに、国分寺市が公開していない経過の一端を知っていただければ幸いである。 ★★★★ 経過資料等 ★★★★ @国分寺市のHPで説明されている経過等(2017.1.15現在) 国分寺駅は、多くの市民が利用する交通の結節点であり、とりわけ北口周辺は、商業をはじめとする国分寺市の中心市街地として発展してきました。しかし、市の人口や駅利用者の増加に対して道路や駅前広場の整備が遅れてしまったため、交通、防災、環境、景観などさまざまな課題が未解決となっており、商業をはじめとする中心市街地としての機能や活力が停滞しています。 これらの課題を解決するため、市は平成2年、国分寺駅北口地区第一種市街地再開発事業の都市計画決定を行ないましたが、商業市況の低迷や地価の急落などの社会経済状況の変化により、未着手のまま17年以上が経過してしまいました。 このような状況を打破するため、市は、平成16年より、国分寺駅周辺地区まちづくり構想の検討と連携して、再開発事業計画の見直しに着手し、駅前広場の位置の変更など、再開発事業の施設計画を大きく変えることとしました。この見直しを踏まえ、平成20年3月に都市計画の変更告示、続けて、平成21年5月に事業計画の決定告示を行ないました。 ◇施設建築物の計画およびスケジュールについて 平成20年9月のリーマンショック以降の世界的な不況の影響により、商業・業務床を主体とした西街区ビルの保留床について、処分(売却)の見通しが極めて厳しく、平成21年5月に決定した事業計画のままでは再開発事業の成立が困難な状況となりました。 このことを受け、市では、西街区ビルへの住宅導入など施設計画を見直すこととし、平成24年2月に都市計画を変更、さらに同年4月には事業計画を変更し、新たな施設建築物の計画のもとで事業を進めてきました。その後、都市再開発法に基づいて,施行者である市に代わって施設建築物(再開発ビル)を建築する特定建築者を公募し、平成25年6月、住友不動産株式会社を選定しました。 特定建築者による施設建築物(再開発ビル)に関する見直し提案等を踏まえた実施設計を平成26年度に実施しました。下図及び添付ファイルは、この実施設計に基づく施設建築物(再開発ビル)の完成予想図です。平成27年度は、いよいよ施設建築物(再開発ビル)を着工し、平成29年度末の竣工に向けて工事を進めていきます。 A特定建築者「住友不動産」の報道資料の内容 ○JR中央線国分寺駅直結 延床約9万u超の大型プロジェクト「国分寺駅北口地区第一種市街地再開発事業」着工 ○超高層ツインタワーマンション 総戸数587戸 始動! 住友不動産株式会社(本社:東京都新宿区西新宿2‐4‐1、代表取締役社長:仁島浩順)は、国分寺市が施行する「国分寺駅北口地区第一種市街地再開発事業」の特定建築者※に選定(平成25 年6 月6 日付)され、事業推進してまいりましたが、平成27 年7 月1 日に着工することとなりましたので、お知らせいたします。本事業は、JR中央線・西武線「国分寺」駅北口約2.1ha を施行区域とし、交通広場や幹線街路・区画道路などの市が行う基盤整備と、当社が建設する住宅を中心とした商業・公益施設等が入る「特定施設建築物(西街区・東街区ビル)」で構成される延床面積約9.3 万u(約2.8 万坪)の大型複合再開発です。土地の高度利用、駅周辺の安全性・利便性の確保、商業誘致による賑わいの創出を図る本事業は、「まち全体の魅力向上」に貢献する“国分寺の新たなランドマーク”として期待されております。前回の東京オリンピックの翌年である昭和40 年(1965 年)に、市が駅前広場を整備する決定を行ってから実に半世紀の時間をかけて、市および地域住民の悲願である建築着工に至ることができました。 ※再開発によって生ずる保留床を取得する前提で、施行者に代わり特定施設建築物を建設する者 ☆☆☆国分寺市HPより…事業経過(一部加筆)☆☆☆ 昭和49年12月 :国分寺市基本構想(市の6大事業の1つとして位置づける) 昭和60年6月 :国分寺駅北口交通広場の都市計画変更 昭和63年12月 :国分寺駅南北自由通路オープン 平成元年3月 :国分寺駅ターミナルビルオープン 平成2年3月 :国分寺駅北口地区第一種市街地再開発事業の都市計画決定(都告示第377 号) 平成4年3月 :西武多摩湖線移設工事完了 平成16年4月 :北口再開発計画案の全面的見直し、再検討開始 平成19年8月 :国分寺駅周辺地区まちづくり構想策定 平成20年3月 :国分寺駅北口再開発に係る都市計画決定及び変更(国分寺駅北口地区第一種市街地再開発事業の都市計画変更:市告示第81号) 平成21年1月 :国分寺都市計画事業国分寺駅北口地区第一種市街地再開発事業の施行に関する条例制定 平成21年5月14日 :国分寺駅北口地区第一種市街地再開発事業・事業計画決定公告及び施行規程施行(国分寺市告示第151号) 平成24年2月 :都市計画変更 平成24年4月 :事業計画変更し、新たな施設建築物の計画を策定 平成25年6月6日 :特定建築者を住友不動産株式会社に決定 平成25年9月5日 :住友不動産株式会社と「国分寺駅北口地区第一種市街地再開発事業に係る特定建築者の業務に関する基本協定書」を締結(基本協定書の締結) 平成27年7月1日 :着工 平成29年度 :完成予定 |
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