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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第二章

121/121

121.毒

 朝、いつもの野外。
 アブソリュートロックの石を人数分揃えたあと、ファミリー総出で性能チェックにきていた。

「それじゃいくです」
「ああ、来い」

 エミリーは頷き、アイテムを使い、自分の体を石にかえた。
 そうしてハンマーを頭上でぐるぐる回して、俺に飛びつこうとして――が。

 ドスーン!

 わずかに飛んだだけで、エミリーはすぐに墜落(、、)して、頭から地面に突っ込んだ。
 まるでドジっ子の様なずっこけ方、見事なヘッドスライディングだ。

「大丈夫なのエミリー!」

 とりあえず観戦モードだったセレストがエミリーを案じた。そのエミリーはむくっと立ち上がり、表情はケロッとしていた。

「大丈夫なのです、ちっとも痛くないのです」
「石だもんね今のエミリーって」
「でも、動き変」

 イヴの指摘通り、エミリーの動きは確かに変だった。
 生粋のパワーファイターにしてインファイターだが、だからといって動きが鈍重とかそういうことはない。
 エミリーはむしろ軽やかにハンマーごと飛びついて、それで強烈な一撃をたたき込める戦闘スタイルだ。

 それが、飛び上がる事すら出来なくてずっこけた。

「エミリー、もう一回やってくれ」
「……はいです」

 エミリーは真顔で俺を見つめ返して、はっきりと頷いた。
 本人も気づいて……いや本人が一番実感してるのかも知れない。

 石のまま距離を取って、エミリーはもう一度ハンマーをぶん回して、俺に飛びつこうとした。

 ドスーン!

 結果は同じだった、いやさっき以上だった。
 顔から地面に突っ込んでいったエミリー、地面に亀裂を走らせでっかいクレーターを作った。

「またずっこけちゃったね」
「やっぱいそうなのか?」
「はいです」

 はっきりと頷くエミリー。

「そうって何が?」
「石になってるとき、普段通りの動きは全然大丈夫なのです」

 エミリーはそう言い、どこからともなく包丁とニンジンを取り出し、見事な手さばきで皮をむいた。
 一本繋がった皮で剥かれたニンジンはつるつるで美味しそうだ。

 それをイヴに与えたあと、エミリーはハンマーを持ち直して振る。

「攻撃をするときだけ急に体の動きが鈍くなるのです」
「そんな落とし穴があったのね」
「セレストも試してみてくれないか」
「分かったわ」

 エミリーが石から生身の体に戻って、入れ替わりにセレストが石になる。
 石のまま魔法を唱える。

「インフェルノ!」

 セレストの得意技、レベル3の広範囲魔法、インフェルノ。
 フランケンシュタインすら焼き尽くす地獄の業炎を呼び出す魔法だが――。

「せ、切ないよこれ!」
「まるで炭みたいね」
「これがインフェルノなの……」

 あまりの光景に言葉を失う一同。
 セレストが放ったインフェルノは業炎ところか火ですらなく、赤く熱した炭程度のものにしかならなかった。

 そのセレストにエミリーはハンマーでぶったたいた。
 戻ったエミリーは地響きすら起こすほどの一撃を叩き込んで、セレストはセレストで石になっていて無傷だ。

「すごく硬いです、手がヒリヒリするです」
「そのかわり攻撃が出来ない……と言う訳ね」

 頷きあう仲間たち。これで大体の性能が見えてきた。

     ☆

 一通りテストしたら昼になったので、俺たちはエミリーが用意した昼食タイムにはいった。
 シートを地面に敷き、様々な料理が並べられている。
 ただのビニールシートだがまるで高級な絨毯のように心地よく、作り置きの料理は湯気が立ちこめていて香りが鼻をくすぐった。

 野外であるのにもかかわらず、エミリー空間はいつにもまして温かくて優しかった。

「石になってる間、本人の攻撃はかなり弱くなるようね。ほとんど最低レベルまで落ち込むわ」

 サンドイッチをつまみつつ、手元のメモを見つめて話すセレスト。
 あれから色々試してみた結果がそのメモに書き込まれている。

「リョータの力まで弱くなったのは笑ったね。腕相撲であたしに負けたし」
「うさぎの最大の武器は……残ったまま」

 そういってイヴはまた石になって、扇情的なポーズをとった。
 自前のうさ耳に色っぽいバニースーツ。それは石になっても変わらず色っぽかった。
 最大の武器というのも分かる。

「……冗談、だよ?」

 冗談なのかよ。

「でもヨーダさんの銃は普通に使えたです、アリスちゃんの仲間たちも普通に戦えたです」
「アリスのモンスターは別存在だからね。リョータさんの銃に関しては――」
「ハグレモノのドロップ品なのか、それともダンジョンの精霊の力を取り込んだからなのか。どっちなのかは分からないけど、どっちかなんだろうな」

 俺がそういうと、セレストは頷いた。
 彼女が持っている、バイコーンホーンも石になってる間使おうとしたが不発だったからだ。

 食事をしながらまとめる、これで石の性能が大体分かった。
 無敵になる、動ける、攻撃は弱くなる。

 ざっとまとめてこんなところだ。
 弱くなるのはつらいが、無敵になって動けるのはやっぱり強い。
 いくらでも使い道はありそうだ。

「助けて、低レベル」
「どうしたイブ」

 助けの声に反応すると、石のままのイヴが悲しそうな顔をしていた。
 持っているのはお椀、入ってるのはエミリーが作ったキャロットスープ。

「ニンジンの匂い、わからない」
「それは切実だな」

 なるほど匂いも分からないのか。
 石になってる間は呼吸もしないのかな。
 まあ、石だからな。

     ☆

 午後はみんなとわかれて、ニホニウムにやってきた。
 アルセニックを完全攻略したから、次はやっぱりニホニウムだ。
 三種の神器を揃えて、ニホニウムにあう。

 それが俺の次の目標だ。

 ダンジョンを次々と降りていって、初めての階層に足を踏み入れる。
 ニホニウムダンジョン、地下6階。
 ダンジョンスノーを抜けて降りたそこは霧でほとんど何も見えなかった。

「雪の次は霧か……」

 つぶやいた瞬間、急に視界がゆがんだ。
 頭がくらくらして、がくっと膝を地面についた。

 なんだ? 何が起きたんだ?
 攻撃されてるのか? それとも――。

「――っ!」

 とっさに立ち上がり身を翻して駆け出した。
 足元がふらつくが、それでも必死に走って――息を止めたまま走った。

 きた道を引き返して5階に戻った。

「ぷはあ……はあ……はあ……」

 両手両膝を地面につけて、必死に息をする。
 5階の空気を吸って少し頭が発揮した。

 回復弾を自分に撃ち込んで体力を回復した後、改めて下を見る。
 ニホニウム地下六階、体力を奪う毒きりが充満している場所だった。

「あぶねえな、とっさに逃げ出さなかったらやばかったぞ」

 毒が充満しているダンジョン。ゲームでもそういうのがよくある。
 毒なのか、あるいは瘴気の類なのかは分からないが。

 あれをすっているとどんどん体力が奪われていくようだ。

「……まあ、それでもいけるけどな。今は無限回復弾があるし」

 体の状況をチェックした。
 6階で毒霧を吸い込んだあとはくらくらしたが、戻ってきて回復弾を撃ったらすっきりした。

 徐々に減っていくHPでも、無限の回復が出来れば問題はない。

 改めて攻略しようとダンジョンを降りよう――としたその時。
 おれはある事を思い出した。

 イヴの姿、石になってニンジンスープの香りがかげないと悲しそうに話すうさぎっ子の姿。

 アブソリュートロックの石を取り出した、体を石にして、今度こそ6階に降りた。

 6階は霧で充満していた。その場に立ちつくしたまましばらく待った。
 頭はくらくらしない、全然平気だ。

 石の体には、毒きりはまったく効かないみたいだ。
 ラッキーだな、と思いつつダンジョンを徘徊する。

 すると、モンスターと出くわした。
 赤いゾンビだった。
 地下二階のゾンビに比べて更に体の腐敗が進んでいる様子で、その上体から毒々しい色の霧が出ている。

「なるほど、この霧はモンスターが放っていたのか。さしずめポイズンゾンビってところだな」

 ポイズンゾンビは襲いかかってきた、俺に抱きついて、かみつこうとする。
 もちろんそんなのは通じなかった、今の俺は石になっている、無敵の防御力の石になっている。

 思いっきりパンチで殴ってみた――こっちもきかなかった。
 きかないところかポイズンゾンビを押しのける程の力も出なかった。

 石のままじゃ肉弾戦も出来ないな。
 だが、既に性能チェックは済ませている。

 銃を抜いて、歯が立たないのに必死にかみつこうとするゾンビの頭を至近距離から打った。

 ゼロ距離ヘッドショット、ポイズンゾンビの頭がはじけ飛んだ。
 後ろ向きで倒れて、やがて消える。

 消えた場所に種がドロップしていた、それを拾い上げると。

 ーー知性が1あがりました。

 いつものアナウンスが聞こえてきたのだった。
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