恐るべき10代の登場だ。川崎市の高校の軽音楽部に所属する宮崎朝子(Vo&G)、松本彩(B)、吉川美冴貴(Dr)の同級生3人組から成るSHISHAMO。オリジナル曲を作り始めて1年半程度、人前でライブを行ったのもわずか数回というにもかかわらず、バンドコンテストでの受賞や今年10月にタワーレコード限定でリリースしたシングルCD「宿題が終わらない」がオリコンインディーズチャートで7位獲得、さらには11月に放送された『オールナイトニッポンR』(ニッポン放送)のパーソナリティーに大抜てきされるなど、各方面で熱く注目されている。その3人娘が1月23日にファースト・フル・アルバム『卒業制作』をリリース。ここに収められた8曲は、10代ならではの瑞々しい感性を感じさせる一方で、すでに完成された才能をうかがわせる。この3月で高校を卒業し、音楽活動に本腰を入れていく彼女ら。今後の注目株になっていくことは間違いない。MUSICSHELF初登場です。
-- 唐突ですが、SHISHAMOの曲からものすごい才能を感じるわけですが、曲は宮崎(朝子)さんが作られているんですよね。どういう経緯で作曲をするようになったのですか。
宮崎 : オリジナル曲を作るようになったのは、最近のことで、部活の顧問から言われたのが始まりです。でも最初は乗り気じゃなかったんです。ドラムの吉川(美冴貴)からも「オリジナルを作れ!」って、うるさく言われてはいたんですけど(笑)。直接的なきっかけはライブハウスでオリジナルをやっている年下のガールズバンドを見て悔しくなって、作曲する心が燃えてきたんです。それで、「宿題が終わらない」を高校2年の夏休みに作りました。
-- ホントに最近のことなんですね。オリジナルに興味がなかったんですね。
宮崎 : はい。私はコピーをするのが好きで、チャットモンチーやGO!GO!7188の曲をよくコピーしていました。わたしより他のメンバーの方が作詞作曲に興味があったと思います。
-- 曲を作るうえで影響を受けたアーティストはいましたか。
宮崎 : 特にないと思っているんですけど……。でも、ザ・ピーズが好きでよく聴いていて、それを人に言うとわかる気がするって言われたことはあります。
-- ちなみに最初に買ったCD、というか、意識的に聴いた音楽は?
吉川 : わたしはORANGE RANGEのアルバムを小学生のときに買ったのが最初です。
宮崎 : わたしもORANGE RANGEかもしれない(笑)。小学生のときにお姉ちゃんからはブランキー・ジェット・シティを聴かされていましたけど。
松本 : 買ったCDはよく覚えていないんですけど、子どもの頃、スピッツをよく聴いていました。
-- 宮崎さんの作るメロディの感じや声質とか、初期の椎名林檎を想起しますが。
宮崎 : とくに意識はしていませんが好きです。東京事変も好きです。
-- あとは相対性理論とか?
宮崎 : 相対性理論は3人とも好きです。コピーしていたよね。
松本 : 相対性理論の曲はなかなか3人ではできないんですけど、できそうな曲はコピーしています。
-- なるほど。徐々に分かってきました。宮崎さんが作曲する上でこころがけていることはありますか。
宮崎 : 曲を作った後に、聴き直して反省点を出して、同じフレーズばかり出てくるしつこい部分は減らして、というのはします。あと、部活の顧問に聴かせて「ここ変えたほうがいいんじゃない?」と指摘されたところを変えてみたり。
-- ところで、宮崎さんと松本さんは幼稚園の頃からの幼馴染ということですが、どんな子どもでどんな友達関係だったんですか。
松本 : 幼なじみというか、幼稚園が一緒というだけで、中学校が一緒で仲良くなったのは受験のときですね。それから高校に入って、軽音部に誘われて、という流れです。最初はベースの存在も曖昧でした。
-- 昔から芸術活動みたいなことをやっていたんですか。
宮崎 : 絵を描くのは好きでした。
-- そうか。みなさんは絵心があるんですね。
吉川 : 3人ともデザイン科で試験はデッサンでした。長期の休みになると、デザイン科はコンテストに出す作品を作らないといけなくて。あと、いろんなコンテストがあってポスターとか作るんです。
-- みなさんが通っている川崎総合科学高等学校ってどんな高校なんですか。
吉川 : 校舎が普通の学校と違ってビルなんです。設備が大学並みに整っていて、恵まれた環境です。
-- その学校の軽音楽部はどんなクラブですか。きっと由緒正しいクラブなんでしょうね。
吉川 : 結構いいかげんですよ(笑)。
-- 「宿題が終わらない」ビデオに映っているところが部室とかなんですよね。いい雰囲気じゃないですか。
吉川 : そうです。あのとき、みんなが協力してくれて盛り上げてくれて、撮影したんです。
-- そもそも、みなさんが軽音部に入ろうと思ったのはなぜですか。
吉川 : わたしは小学生のときにドラムを始めたんです。学校の先生が希望者にドラムを教えるってことがあって、そこで初めてドラムを叩いたんです。そのときに中学高校には軽音部が存在するということを知ったんですが、わたしが通う中学校には軽音部がなくて、だったら高校に入ったら軽音部に入ってドラムをしようって決めていたんです。
宮崎 : わたしは音楽には興味があったんですけど、軽音部に入っても好きな楽器できないといやだなと思っていて。でも歌は歌いたかったので、最初は極音部でアカペラをしようと思っていました。
松本 : わたしはただ誘われて……(笑)。
-- SHISHAMOは宮崎さんと松本さんがいたところに 吉川さんが参加して今の形になったわけですよね。吉川さんはどういう経緯でバンドに加入したんですか。
吉川 : わたしはバンドに関しては、ドラムが出来る環境さえあればいいと思っていて、特に誰かと組みたいっていうのはなかったんです。最初は違う人に誘われていて、じゃあ、バンドを組もうかなっていうくらいでした。
宮崎 : 最初はわたしと松本は男の先輩2人と一緒に4人でバンドを組んでいたんです。それでドラムの先輩が抜け、じゃあ俺もという感じでギターの先輩も抜けてしまい……。
吉川 : 元々、先輩たちが卒業したら3人でやろうねって言っていたので、時期が早まったという感じでした。
-- もともとライブ活動はしていたんですか。
吉川 : 校内でのライブしかやったことがなかったです。高校2年生の2月からライブハウスでもやるようになったので、まだ1年も経ってないです。だからまだそんなにライブハウス経験がないんです。
-- そうだったですか。それなのに、去年春に「TEENSROCK IN HITACHINAKA 2012」で、優秀賞&ベストボーカル賞を受賞して、夏にはイベントへの出演、オリコンインディーズ7位と、とんとん拍子にステップアップしていますが。どんな感想を持っていますか。
宮崎 : いやーびっくりだよね。
吉川 : 趣味の延長で楽しくやっていたところから、意識が変わりました。
宮崎 : ホント、短期間で意識が変わりました。
吉川 : まわりの人が「結構いいね」とは言ってくれてはいたんですけど、ライブハウスでやったときも自分たちのことをヘタクソと思っていて、「TEENS~」に参加したときも、なんで自分たちが賞を獲れたんだろう? って思ったくらい。
-- そのきっかけになったのは「宿題が終わらない」ですよね。最初の話に戻りますが、この曲はどういう経緯で作られたものですか。
吉川 : 最初に朝子から「曲ができた」って教えてくれたメールがすごく長文で、しかも絵文字も全くなかったので、わたしが何度も「曲を書け」と言ったから、「怒っているのかな?」って思ったんです(笑)。でもそのメールで、彼女の本気を見たと思いました。
宮崎 : ずっと、曲を作らないとバンドをやる気がないみたいに責められていたんですよ。そんなに「作れ、作れ!」って言うなら、自分で作れよって感じで思っていて……。これはちょっと黒歴史なんですけど(笑)。
吉川 : たしかにその通りなんですけど……。でも、そんなふうにやる気がないっていう意味で言っていたわけじゃなくて……。この話はこじれるからまた2人で話そう。(笑)。
-- 宮崎さんが初めて作ったオリジナル曲「宿題が終わらない」を聞いたときの感想はいかがでしたか。
吉川 : 最初、朝子が弾き語りで聴かせてくれたんです。今までも、誰かのコピーをしているときに「すごいな」って思うことがあったんですが、オリジナル曲を聴いて「わ、この子、ホントすごいな」と思って。
-- 松本さんはいかがでしたか。
松本 : 少し時間が経ってから聴いたんですけど、2人でにやにやしながら歌ってくれて。曲を作れるんだなと思って。逆に今まで何をやっていたんだろうって(笑)。