記録的豪雨1週間 被災者7割が生活再建に不安 大分

記録的豪雨1週間 被災者7割が生活再建に不安 大分
記録的豪雨から1週間たち、大きな被害が出た大分県日田市の避難所でNHKが被災者70人に聞き取り調査を行ったところ、住宅の被害が大きいことなどを理由に7割の被災者が「生活の再建に不安を感じている」と回答したほか、4割以上が「自宅に戻りたいが戻れない」などと回答しました。
記録的豪雨から1週間の12日、大分県日田市では、午後3時半の時点で、9か所の避難所に合わせて270人の被災者が避難しています。
NHKは、これらの避難所で11日と12日の2日間、合わせて70人の被災者から聞き取り調査を行いました。
その結果、7割にあたる51人の被災者が生活の再建が「とても不安だと感じている」または、「不安だと感じている」と回答しました。
具体的に不安に感じている点については、自宅が壊れたり浸水したりして再建のめどが立っていないことや、自宅の近くで土砂崩れが起きていて二次災害のおそれがあること、それに、農地が被害を受けるなどして仕事ができないことを挙げる人が多く見られました。

また、今後、避難所を出て自宅に戻りたいかどうかについて聞いたところ、「戻りたい」と答えた人が5割にあたる36人で最も多くなった一方で、4割以上にあたる32人の被災者が住宅の被害が大きいことなどを理由に「戻りたいが戻れない」とか「戻りたくない」と回答しました。
なかには、住み慣れた地域に今後も住み続けたいという思いを持ちながら、再び土砂崩れに襲われることへの恐怖心から「戻れない」と答える人も多くいました。

避難所では

今回の豪雨で大きな被害が出た大分県日田市大鶴地区の避難所では、生活再建への不安の声が聞かれました。
このうち、川からあふれた水で自宅が全壊した藤井清成さん(57)は「大事なものはすべて流されてしまい、家を建て直すのは難しい状況です。二度と川の近くには住みたくありません」と話していました。
また、農業を営む黒木征夫さん(72)も、「育てていた野菜がすべて流されてしまい、仕事ができないので先行きが不安です」と話していました。

自宅に戻れない人は

日田市大肥本町の坂本英治さんも聞き取り調査で、自宅に「戻りたいが戻れない」と回答した1人です。いまは避難所で寝泊まりしていますが、12日から家族と一緒に自宅の後片づけを始めました。
自宅は、近くの川からあふれた水で床上およそ70センチまで水につかる被害を受けました。室内には大量の泥も流れ込んで、水が引いた今も住めない状態になっています。

雨が降り始めた今月5日の夜、自宅に1人でいた坂本さんは避難する準備をしていましたが、午後8時ごろに窓ガラスが割れ、室内に一気に水が流れ込んできたということです。とっさに台所の流し台の上にのぼって偶然、流れてきた空の灯油缶を浮き輪代わりに抱きしめながらおよそ6時間を過ごし、ようやく室内の水位が下がった翌日の午前2時ごろ無事に避難しました。

坂本さんは当時を振り返り、「恐怖を感じてとにかく生きるんだと思い続けて救助を待ちました。自宅は目を背けたくなる状態ですが、家族が元気なので前向きな気持ちで頑張りたいです」と話していました。

また、先に避難していた妻の美香さんは、「とにかく助かって本当によかったです。多くの人が励ましてくれるので新しい生活に向けてなんとか頑張っていきたい」と話していました。坂本さん一家は今月末には避難所を出て市営住宅に移る見通しが立ったということで、今後は、自宅の後片づけを続けながら生活の再建を目指すことにしています。