勤務時間の割り振りを適正に!

 〜教員の勤務時間は?法的には?〜

 私たち教員の勤務時間は、様々な場面で超過することがある。以下いくつかの種類に分別してみた。

A、教師が学級の児童との教科指導や生活指導上での行う勤務である。
 例としてテストや子どもの作文や日記・ノートの点検処理がある。また、テストやプリント作成もある。

B、広義の意味では、Aと同じとみえるが、個別に児童宅へ家庭訪問し、保護者と懇談する場合がある。ただし、管理職が命じた場合とそうでない場合とがある。

C、通知表の提出のためのテスト処理、所見作成の場合がある。

D、ある部活動の指導をしている場合がある。

E、日直あるいは週番になったときの早朝立ち番や戸締まりのため超過する場合がある。また、学校によっては、特別に早朝に交通立ち番を行っている場合もある。

F、職員会議や各種部会研究会等で勤務時間が延長される場合がある。

G、修学旅行や野外教育活動等学校行事として計画的に行われる場合がある。


 そもそも勤務時間というのは、労働者が賃金を受け取るために働かなければならない時間であり、したがって拘束される時間であり、その時間は労基法で定められている。

 しかし、教師の勤務形態の特殊性のために、教職調整額4%の手当が出されている。
この手当を受けとるのが上記のA・Bの自分で行った場合やDの場合があると考えられる。それ以外は、管理職が命じた超過勤務と考えられる。もちろんDの場合でも対外試合とか練習試合などは別に手当てが支給されるべきである。
 ここのところを間違えて理解している管理職がいる。4%の手当をもらっているのでなんでもかんでも超過勤務してもかまわないなどど言っている管理職がいた。

 Cについては、学期末には、管理職は、諸会議を持たないなどの配慮が必要である。もし諸会議を開き、そのためにCの仕事が超過勤務となった場合には、勤務の割り振りを行うべきであろう。

 Eについては、年度初めの職員会議で決定されたことであり、校長の承知の超過勤務であるため、勤務の割り振りを行わなければならない。
 しかし、もともとは、早朝立ち番などは命じられないのである。それは、限定4項目にはないのだから。ただ、子どもの交通安全のために学区によっては必要であろうということで行っているのであり、自主的な活動すなわちボランティアではない。命ぜられて行っているのである。

 Fについても、延長しそうな場合、その場で勤務の割り振りを行うべきである。「 明日にするとか、今日○時まで行うので、明日は○時で勤務終了」とか

ただ、学年部会など、学校の月予定表に載っていないときに、学年主任の「今日話し合う会をもちます」などと急に言う場合があり、そのうえ管理職が知らない場合もある。こうしたとき、会議が超過勤務となる場合もある。もとより学年主任には勤務時間を割り振る権限はない。しかし、教育活動上必要であり、学年集団で討議する時間が他日に設定しにくい場合、学年主任などの代表者がその旨を管理職に届け出るべきであろう。

 現在、知多地方の深谷裁判でこのあたりが係争中である。

 Gは、限定4項目に明記されていて、管理職の中には、修学旅行全体にわたって超過勤務を命じてよいかのように考えている者がいるが、次の文章をよく読むと、修学旅行すべてがあてはまるわけではないことが分かる。

国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の施行について(昭和46年7月9日 文初財第377号 各都道府県教育委員会あて 文部事務次官通達)

時間外勤務を命ずる場合
教職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合で臨時または緊急にやむを得ない必要があるときに限るものとすることとしたこと。
(1) 生徒の実習に関する業務
(2) 学校行事に関する業務
(3) 学生の教育実習の指導に関する業務
(4) 教職員会議に関する業務
(5) 非常災害等やむを得ない場合に必要な業務
なお、これらの業務の具体的内容は次のとおりであること。
(1)の実習とは、校外の工場、施設(養殖場を含む)、船舶を利用した実習および農林、畜産に関する臨時の実習を指すものであること。
(2)学校行事とは、学芸的行事、体育的行事および修学旅行的行事を指すものであること。この場合における学校種別ごとの学校行事とは、それぞれの学習指導要領に定める上記学校行事に相当するものに留意すること。
(3)学生の教育実習の指導とは、付属学校における学生の教育実習の指導を指すものであること。
(4)非常災害等やむを得ない場合に必要な業務とは、非常災害の場合に必要な業務のほか、児童・生徒の負傷疾病等人命に関わる必要な業務および非行防止に関する児童・生徒の指導に関し、緊急の措置を必要とする業務を指すものであること。

なお、勤務時間の割り振りを適正に行うためには、労働基準法第32条第2項の規定の活用について考慮すること。


 修学旅行についていえば、修学旅行の場合で、臨時または緊急にやむを得ない必要があるとき、となるので、例えば旅行中に子どもが行方不明になったとかで探す必要があったとか、
 修学旅行そのものが超過勤務をしてもよいことにはならない。しかし、現実には、朝の集合時刻から夕食後の入浴、就寝までかなりの超過勤務を行っている。
 これは事前に分かっていることなので当然、臨時や緊急やむを得ない場合には含まれない。

文部省地方課専門職員の文章でも明らかに勤務の割り振りを行うべきだと述べている。

(1)勤務時間の割り振り
教員に対しては正規の勤務時間を適正に割り振ることによって、時間外勤務を命じないようにすることが原則である。したがって、修学旅行のように、あらかじめ、実施することが明らかな場合は、勤務の割り振りの変更で対応することを考えなければならない。
 すなわち、例えば、日程上、勤務を要しない日である日曜日を含む場合は、勤務を要しない日の変更を行い修学旅行にあたらない別の日を勤務を要しない日とし、当該日曜日に勤務時間を割り振ることが適当である。(ただし、勤務を要しない日の変更には条例の根拠が必要。)
 次に、例えば本来の勤務時間終了後毎日5時半から7時半までさらに勤務を必要とする場合に、その時間について勤務時間を割り振り、別の日の勤務時間をその分短縮する方法が考えられる。
したがって、修学旅行中については、勤務時間の割り振りの変更を、まず行い、それができない部分及び当初変更して割り振った勤務時間以外に臨時に必要となった部分について時間外勤務を命ずることになる。
 一般に、学校の教職員の勤務時間の割り振りを行う権限は、教育委員会規則等の定めにより校長に委ねられている。

中略

 教員の時間外勤務命令は例外的なものであり、あらかじめ予想される場合は、できるだけ正規の勤務時間の適正な割り振り、変形労働時間制の活用により対応すべきであるが、「やむを得ず長時間の時間外勤務をさせた場合は適切な配慮をすること」特別措置法の施行について」昭和46年7月9日付文初財第377号文部事務次官通達)とされている。

労基法
第32条
 使用者は、労働者の、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
A 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働をさせてはならない。

第32条の2
使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、1ヶ月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間を超えない定めをした場合においては、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。