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【大相撲】

稀勢の里、2敗で崖っぷち 力ない左…遠い復活

2017年7月12日 紙面から

栃ノ心に敗れて2敗目を喫し、観客が投げた座布団が頭に当たった稀勢の里(小沢徹撮影)

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◇大相撲名古屋場所<3日目>

(11日・愛知県体育館)

 左上腕部などの故障から復活を期す休場明けの横綱稀勢の里(31)=田子ノ浦=は、平幕栃ノ心に寄り切られて2敗目を喫し、自身3つ目の金星を献上した。3日目で早くも2敗目となり、2場所ぶりのV奪回は風前のともしび。4日目の正代戦への出場意欲は見せたが、2場所連続となる途中休場に待ったなしの状況だ。

 懸命に差し込もうとする稀勢の里の左が、何度も空を切った。栃ノ心に右で前まわしをガッチリ取られ、左下手も許した。さらに頭を付けられて万事休す。力なく寄り切られ、うなだれる横綱の大銀杏(おおいちょう)に座布団が直撃した。横綱もファンも、ため息が止まらないショッキングな金星配給だ。

 休場明けの険しすぎる復活ロードで、もがき続けている。この日の朝稽古では、珍しく左からの踏み込みをテスト。名古屋で横綱として初めての結びの一番で、即座に取り入れた。

 「体の状態を試している。バランスがあるから。いろいろな展開がある」。稀勢の里は試行錯誤を続けていることを、否定しなかった。ただ、伝家の宝刀・左おっつけが出せない状態では勝負にすらならなかった。

 立ち合いの感触や左からの攻めの手応えなどを問われ、生返事を繰り返した取組後の支度部屋。不本意な3日間を振り返って「うーん」とうなり、目を伏せて首を横に振るだけだった。

 3日目までに2敗を喫し、優勝した例は平成以降では12年夏場所の旭天鵬のみ。八角理事長(元横綱北勝海)は「やっぱり押し込んでいない。その場で差しにいった気がする。苦しい場所になった」と横綱の苦境を認める。技術的な課題は、左からの攻めの一点。それだけに「苦しいところを勝っていかないといけない。強気でいくしかない」と精神論に期待するしかなかった。

 休場危機に直面する中、正代の挑戦を受ける4日目。2日連続で金星を許せば、横綱昇進後で初めて“借金2”となる。五分に戻して息を吹き返すきっかけとなるのかどうか。もう負けられない一番なのは間違いない。

 連日、大入り満員の名古屋のファンの何よりの願いは、どっしりとした横綱相撲。帰り際に「明日から、しっかりやるだけですね」と、気力を振り絞るようにつぶやいた稀勢の里。崖っぷちで横綱の真価が問われる。(志村拓)

 

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