そのため、病院や診療所で健康保険証を見せれば医療を受けられる「療養の給付」とともに、病気やケガをして働けない間の所得を保障する「傷病手当金」が創設された。
その後、給付期間の見直しなどが行われたが、現在でも存続している給付で、傷病手当金は医療費の自己負担を抑えられる高額療養費とともに、健康保険の重要な保障となっている。
ふだん元気に過ごしていると、健康保険の保障内容を詳しく調べることはまずないだろう。だが、傷病手当金があることを知らなかったために、「病気で働けなくなったら会社にいられない」と早合点して退職してしまい、それがきっかけで貧困に陥ってしまうケースもある。
自分や家族の暮らしを守るために、今回は傷病手当金の保障内容を確認しておこう。
不正受給対策で計算方法が
2016年4月から見直された
前述したように、傷病手当金は休業中の所得補償で、次の3つの要件を満たしたときに給付を受けられる。
【もらえる条件】
1.業務外の病気やケガの療養のための休業である
「療養」は、仕事の業務外の病気やケガの治療であることが条件。必ずしも病院や診療所に入院・通院していなくても、医師の指示があれば、自宅療養や病後の静養も療養として認められている。
仕事中や通勤途中の病気やケガは、労災保険(労働者災害補償保険)で治療費の支払いや休業補償が行われるので、傷病手当金の対象外。
2.労務不能の状態である
「労務不能」は、それまで行ってきた仕事ができるかどうかで判断される。入院中はもちろん、「通院している病院が遠くて仕事ができない」「自宅療養中で仕事ができない」なども認められる。最終的な判断は医師の見解を参考にして健保組合が行うが、自宅で簡単な作業をしていても本来の仕事ができない状態なら労務不能と認められることもある。