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ドイツの過剰黒字 自由貿易脅かす

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2017/7/11 18:05
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 世界の主要貿易国が7~8日、独ハンブルクで一堂に会した20カ国・地域(G20)首脳会議は、保護主義を主張する米国と自由貿易を推進するドイツが相対する場となった。

 トランプ米大統領はすでに環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を決め、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を要求している。トランプ氏は輸入鉄鋼製品に関税をかけることも検討中だ。これはほぼ間違いなく報復措置を招く。

 一方、G20の議長国ドイツのメルケル首相は反保護主義を訴える。メルケル氏は6月29日、保護主義や孤立主義の信奉者を批判する演説をして事実上、トランプ氏を非難した。日本と欧州連合(EU)が大枠合意した経済連携協定(EPA)は、彼女の主張を具現化する一例だ。

ドイツのハンブルクで7~8日開かれたG20首脳会議では、保護主義の姿勢を強める米国と、自由貿易を推進するドイツなどとの溝が鮮明になった=AP
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ドイツのハンブルクで7~8日開かれたG20首脳会議では、保護主義の姿勢を強める米国と、自由貿易を推進するドイツなどとの溝が鮮明になった=AP

 この議論でどちらに分があるかは疑う余地がない。貿易が公正であるためには収支が均衡しなくてはいけないというトランプ氏の主張は、経済学的にはナンセンスだ。関税を課せば競争条件が公平になるという信念も、あまりに単純で危険だ。

 とはいえ、トランプ氏には少なくとも一つの真実が見えている。同氏はドイツの昨年の貿易黒字が世界最大の3000億ドル(約34兆円)弱に上ったと批判した(中国の貿易黒字は2000億ドル程度だった)。確かにドイツは貯蓄過剰で支出不足だ。しかも貯蓄額が巨大で簡単には減らないことを考えると、ドイツが自由貿易の旗を振るのは釈然としない。

 基本的に貿易黒字とは国全体の貯蓄が投資を上回っていることだ。ところがドイツの場合、黒字は輸出を促し輸入を抑える重商主義的政策の帰結ではない。高齢化社会では貯蓄を増やす必要があるという独政府高官の主張を反映したものでもない。家計の貯蓄率は高いものの、ここ何年も安定している。国の貯蓄の増加は企業と政府がもたらしたものだ。

■欧州の病人から筋肉隆々の勝者へ

 ドイツの黒字は、輸出産業の競争力を維持するため賃金抑制を容認した数十年来の労使協定に起因する。これが戦後復興以降、輸出主導型経済を支え、1990年代後半は「欧州の病人」だった同国を筋骨隆々の勝者へと変貌させた。

 ドイツモデルはうらやむべき点が多い。労使協調のおかげで企業は組合の意向を気にせず投資ができた。職業訓練制度は政府が支援した。米国では製造業の雇用が減少すると、大卒でない男性労働者は将来性がなくなり、経済ナショナリズムが強まった。ドイツもこうした事態と無縁ではないが、ブルーカラーの仕事が比較的多く守られてきた。極右の民族主義政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持がそれほど広がっていないのはそのためだ。

 ここにきて、ドイツモデルの負の側面が明らかになりつつある。ドイツ経済も国際貿易も極めてバランスを欠いたものになってきたのだ。賃金抑制は国内支出と輸入の減少につながる。実際、消費支出は国内総生産(GDP)比54%まで低下し、米国の69%や英国の65%を下回る。輸出業者は利益を国内投資に回さない。これはドイツに限った話ではなく、スウェーデンやスイス、デンマーク、オランダも貿易黒字を大幅に積み上げている。

 完全雇用状態にある経済大国がGDP比8%超の経常黒字を出せば、国際貿易体制に過剰な負担をかけることになる。巨額の黒字を相殺し、雇用維持に必要な総需要を支えるため、他国はどんどん借金をして使わなければならない。とりわけイタリア、ギリシャ、スペインでは貿易赤字がなかなか減らず、財政危機に陥った。その後、緊縮財政に転じたが、大きな代償を払った。

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