世界で被害出したコンピューターウイルス 感染再拡大

世界で被害出したコンピューターウイルス 感染再拡大
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ことし5月、世界各地で大規模な被害を出した「ワナクライ」と呼ばれるコンピューターウイルスが何者かによって作り替えられ、再び感染を広げていることが、民間の専門機関などの調査でわかりました。工場が停止に追い込まれたり、飲食チェーンのシステムに障害が起きたりするなど、被害は国内でも広がっていると見られます。
ことし5月、世界各地で大規模な感染を起こした「ワナクライ」は、セキュリティーの欠陥を突いてパソコンに侵入し、内部のファイルを勝手に暗号化して身代金を要求するもので、イギリスの病院で患者の治療に支障が出たり、フランスの自動車メーカーが生産を一時停止したりするなど、大きな被害を出しました。

その後、感染は終息したと見られていましたが、インターネット上では「ワナクライ」特有の通信の量が増え続け、先月末の時点で、大規模な感染が起きた5月のピークを超えたことが、民間のセキュリティー専門機関、「JPCERTコーディネーションセンター」の調べでわかりました。

さらに、ウイルスを分析したところ、プログラムは「ワナクライ」とほとんど同じですが、暗号化や身代金の要求をしないように作り替えられていました。

このため、被害者が感染に気付かない間にウイルスが次の感染先を探して大量の通信を行い、システムの障害を起こす可能性があるということで、先月、大手自動車メーカー、ホンダの埼玉県内の工場が操業を一時停止したり、日本マクドナルドで全国的に電子マネーが使えなくなったりしたのは、いずれもこのウイルスの影響と見られています。

JPCERTコーディネーションセンターの佐々木勇人さんは、「ウイルス作成者の目的はわからないが、5月に被害が出なかったと安心せず、もう一度、コンピューターが最新の状態になっているか確かめてほしい」と話しています。

「ワナクライ」亜種 被害の実態

大都市圏を中心に展開するドラッグストアチェーンでは、先月16日、兵庫県内にある店舗で突然レジが動かなくなり、クレジットカードやポイントの処理ができなくなりました。

このため会社側が調べたところ、レジにつながった管理用のパソコンが、「ワナクライ」の亜種に感染していることがわかりました。このパソコンはセキュリティー上の欠陥を修正していなかったため、トラブルが起きた店を含む10台余りのパソコンで急きょ欠陥を修正するなどの対応をとったということです。

同じ先月16日には、日本マクドナルドでも全国のおよそ2900の店舗で「ワナクライ」の亜種によるシステム障害が発生し、電子マネーが使えなくなったほか、2日後の先月18日には、大手自動車メーカー、ホンダの埼玉県内の工場でコンピューターの一部が「ワナクライ」の亜種と見られるウイルスに感染したことがわかり、その後、操業を一時停止しています。

このウイルスは、被害者が感染に気付きにくい一方で、パソコンに「バックドア」と呼ばれる不正アクセスの侵入口がひそかに仕掛けられ、情報を盗まれるおそれもあるということで、JPCERTコーディネーションセンターは、実際の被害はさらに広がっている可能性があると見ています。