仮想通貨の歴史に残るであろう、マウントゴックス事件。
長い月日を経て、今日からマウントゴックスの元CEO マルク・カルプレス氏の裁判が始まりました。
初公判を生で傍聴してきたので記事にします。
尚、マウントゴックス事件関連の時系列を簡単に載せておきます。
参考:Wikipwdia 「マルク・カルプレス」
2011年 マウントゴックスを買収、経営権を獲得
2013年 マウントゴックスが世界最大の取引所に発展
2014年2月 ビットコイン消失事件、時価500億円相当のビットコインと現金が行方不明
2014年4月 民事再生法によりMtGOX社経営破綻
2015年8月 マルク・カルプレスを私電磁的記録不正作出・同供用容疑で逮捕
2016年7月 マルク・カルプレス保釈
初公判の要約
サクッと裁判の内容を知りたい方へ、まずは要約です。
罪状の概要
マウントゴックス社が顧客から預かっている85万BTCおよび現金を合わせて時価500億円近く消失したが、当時マルク・カルプレス氏の口座へ、ネットバンクを使用して何億円もの送金が15回に分けて成されていた。
顧客資産を不正に流用した疑いがある。
各人の主張
- 被告人マルク・カルプレス氏は無罪を主張。
ビットコインは外部のハッキングによって盗まれ、現在はハッカーから取り返そうと努力している。
マウントゴックスの顧客には謝罪の気持ちがある。 - 検察側は証拠として、マウントゴックス社の売上よりも支出が遥かに多く経費を払える状況ではない、顧客の資産を不正に利用したと主張。
また、事件当時にソフトウェア会社を買収しているが、利益を目的としておらず私的な興味が動機ではないか。 - 弁護側は無罪を主張。
送金した事は事実だが、罪に問われるものではない。
マウントゴックス社の全株式はマルク・カルプレス氏が所有しており、送金は業務の範囲内であった。
事件の争点
マルク・カルプレス氏がマウントゴックスの事務処理(送金)を故意に誤らせたかどうか。
わかった事
85万BTCが消失した後に、20万BTCが発見されていた。
(裁判では出てこなかったが、債権者にはここから配当が支払われる模様。)
初公判を傍聴してきました
ここからは日記です。
裁判の議事録も下に載せておきます。
東京地裁に到着
報道陣がたくさんいて、海外のメディアもチラホラ来てました。
「きっとマウントゴックスの取材だろうな〜」
と思いながらふと、人口密度が極端に多いエリアを発見。
案の定ポスターには「被告人 カルプレス・マルク・マリ・ロバート」
すごく人気(?)ですね、カルプレスさん。
倍率は軽く5倍はあったので半分諦めてましたが、なんと当選しました!
ハズレてしまった人達の志を背負い、いざ法定へ。
身体検査を済ませ、傍聴席で待機。
半分が報道用、半分が一般用だったんですが、明らかに一般用にも報道の人いましたね。
(おそらく報道側の抽選に外れたから一般側で潜入?)
裁判官、弁護士、検察官が入廷し、最後にマルク・カルプレス氏が登場。
服装は、濃い紺色スーツにネクタイをきっちり締めてました。
見た目は事件当時と比べ、見違えるほど痩せ、茶髪・短髪になり爽やかに。
不謹慎かもしれませんが、どうヒイキ目に見てもイケメンです。
(事件当時は地獄のミサワとか言われてたのに)
いよいよ開廷!(議事録)
マ = マルク・カルプレス被告
長 = 裁判長
検 = 検察官
弁 = 弁護士
※裁判長から被告への質疑は通訳を介してました。
通訳の言葉をマルク・カルプレス氏の言葉として記載します。
※マルク・カルプレス氏の発言だけノーカットでお送りします。(個人情報は省略)
その他は簡略化します。
・午前の部開始 10:05
長「名前は?」
マ「カルプレス・マルク・マリ・ロバートです。」
長「生年月日は?」
マ「1985年〜(略)」
長「国籍は?」
マ「フランスとイスラエル国籍です。」
長「日本での住所は?」
マ「東京都〜(略)」
長「マンションに住んでる?」
マ「アパートです。」
長「アパート名は?」
マ「(略)」
長「職業は?」
マ「ITエンジニアです。」
長「会社役員じゃなくて?自分の認識で話して。」
マ「会社は倒産したので。」
長「はい。では検察、起訴状を報告して」
検「(簡略化)
被告は2013年9~12月、顧客の資金を管理していた口座から外部の口座などに計約3億4千万円を送金し、着服したとされる。
取引システムのデータ改ざんによって現金残高を水増ししたとして、私電磁的記録不正作出・同供用罪に問う。
(送金履歴15件の日時・場所(IPアドレスから判別?)・金額を読み上げる)」
長「被告がこれから話すことは良い意味でも悪い意味でも証拠になります。
検察が述べた事に対してどうぞ」
マ「(本人が日本語で話す)
私は無罪であります。
顧客のお金を不正利用した事はありません。
ビットコイン建て負債、ドル建て負債を適切に管理するためにした事です。
私はビットコインやブロックチェーンに大変興味を持ってます。
マウントゴックスはこれらを研究するのに最適でした。
マウントゴックスを世界最大のビットコイン取引所にしたいと考えてました。
マウントゴックスからの送金は業務上必要な事であり、不正でない事は調べればすぐに分かります。
私(会社?)はビットコインを合わせると30億円以上の収入がありました。
これは顧客のお金ではありません。
顧客のお金に手をつける事なんてしません。
私は無実である事を主張します。
しかしながら、私はマウントゴックスの顧客に多大なる迷惑をかけた事を、心からお詫び申し上げます。
私は盗まれたビットコインを取り返さなければならない。
残念ながら世界中が注目しているこの裁判は、マウントゴックス破綻の原因を探るものではありません。
外部からビットコインを盗まれた時のトラッキングコードを見れば、不正した者を見抜く事ができる筈です。
私は被害にあった顧客のために、ビットコインを取り返すよう、既に捜査機関と協力している。」
長「弁護人からありますか?」
弁「(簡略化)送金した事は争いませんが、罪に問われる内容ではない。被告人は無罪です。」
長「それでは証拠調べに入ります。」
検「(簡略化)被告は平成21年にマウントゴックスを運営するTibane社CEOから、管理状態を知った上で権利を譲り受けている。
その後、架空のビットコインと米ドルで買い注文し、顧客の売り注文とマッチングさせていた事がわかっている。
平成25年、マウントゴックス社の売上は取引手数料2.5%とセキュリティ製品の販売であったが、これらの売上高より支出の方が、6億円以上も多かった時期がある。
また、買収しているソフトウェア会社は利益を求めておらず、私的な興味が動機であった疑いがある。」
・午前の部終了 11:55
・午後の部開始 13:30
検「(簡略化)顧客が所有権を持つ資産を流用したと主張」
長「弁護人おねがいします。」
弁「(簡略化)4点あります。
1つ目、マウントゴックス社は外部によりハッキングされたのであった、被告は不正をしていない。
2つ目、被告は幼い頃からパソコンを使っていた。
ある時、ビットコインコミュニティーで当時のマウントゴックスを運営していたジェド氏と知り合い、技術的な相談をよく持ちかけられた。
そして、マウントゴックスの運営をしてみないかと持ちかけられた。
マウントゴックスはジェドから譲り受けた時からハッキング被害にあっていた。」
3つ目、警視庁がマウントゴックスへのハッキングを調査したが、進捗がなかった。
そこで被告の送金履歴を発見し、拘束されてしまった。
これは捜査が不十分で強引と言わざるを得ない。
4つ目、マウントゴックス社の株式は被告が全て所有している。
業務に必要なオブリゲーション取引(※)をしたに過ぎない。」
※オブリゲーション=債務
弁「検察に釈明を求めます。」
長「検察は釈明の検討をしてください。」
検「はい。」
(ここからは細かい話だったので離席)
おわりに
次回、7/13にも裁判が開かれるそうです。
素人目ですが今年に判決までは至らないような感じでしたね。
可能な限り事件の行方を追っていきたいと思います!