今月9日、イラク軍はISの支配下にあった都市、モスルを制圧し「勝利」した。
2014年6月に過激派組織、IS(イスラム国)がイラク北部モスルを占領して以降、現地では激しい争いが展開されていた。そしてまた、それを記録する報道写真家たちも自分の撮った写真を報道機関に売りつけるべく争いが行われていたのだ。
ところが残念なことに、報道写真家、ケイノア・リトル氏は写真の買い手を見つけることができなかった。
命がけで撮影したのにどうしよう。よっしゃ〜じゃあ、無料公開してしまえ。リトル氏はオンライン上で自身が撮影した写真を無料でシェアすることに。
その写真は、闘争と生存の苦しみを語っている。
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リトル氏は、ワシントン州のショアラインに拠点を置く、報道写真家であり、紛争地での活動を専門としている。
今年の4月にはモスルに入り、イラク連邦警察(一般警察と軍の中間の組織)がISの戦闘員からモスルを奪還すべく奮闘する様子を記録してきた。その道程では、激しい衝突が何度もあり、大勢の市民が避難した。
リトル氏の写真は、感情の連なりを鮮やかに写し出している。故郷を離れざるを得なくなった難民の苦悶、彼らを守る兵士の決意、そして、巻き込まれた全ての人々を苦しめた混沌の極み。ここに挙げたものはほんの一部だ。
1. 旧市街の道路で、IS陣地に向けて発砲する連邦警察。
imege credit: Kainoa Little
2. 旧市街で戦闘に備える連邦警察。マシンガンの弾薬を整理している。
imege credit: Kainoa Little
3. 旧市街の一街区の制圧にあたり、連邦警察が爆発物の存在が疑われるシアターに入っていく。
imege credit: Kainoa Little
4. 連邦警察が旧市街のシアターに入った次の瞬間、ISの戦闘員が上部のたるきから射撃を開始した。
imege credit: Kainoa Little
5. 連邦警察、シアター内で。
imege credit: Kainoa Little
6. モスルの旧市街で、兵士が建物の安全確保をしている。
imege credit: Kainoa Little
7. シアターの反対側から攻撃を受けた連邦警察官。覗いていた窓の近く、壁の反対側に数発の銃弾が当たった。
imege credit: Kainoa Little
8. シアターの屋上で、むき出しの場所を走って横切る連邦警察官。
imege credit: Kainoa Little
9. シアターを挟んでISと銃撃を交わす連邦警察。
imege credit: Kainoa Little
10. 連邦警察。旧市街のシアター内で。
imege credit: Kainoa Little
11. 連邦警察の司令官たち。
imege credit: Kainoa Little
12. 西モスルの前線で、民家でひげを剃り、休息する連邦警察。
imege credit: Kainoa Little
13. ムシャリファ地区(モスルの西)から逃れてきた市民の脇を軍用車両が通っていく。
imege credit: Kainoa Little
14. ドローンを操縦するイラク軍。
imege credit: Kainoa Little
15. ムシャリファ地区から逃れてきた市民。
imege credit: Kainoa Little
16. 戦闘を逃れてきた避難民。
imege credit: Kainoa Little
17. ムシャリファ地区の戦闘から避難する市民。
imege credit: Kainoa Little
18. アメリカ軍とビルマ軍の医者に、彼女の息子は脚を撃たれた傷から生き延びると教えられる女性。
imege credit: Kainoa Little
19. 戦闘用ヘリがIS陣地を攻撃する。
imege credit: Kainoa Little
モスルは奪還されたとはいえ、人々の苦しみは終わったわけではない。旧市街では戦闘が続いている。また、イラク国内で、地球上のどこかで、まだ戦争は続いているのである。
戦争と平和は表裏一体にあり切り離すことができない。平和を願うはずの人の心がなぜか戦争へと導いていく。そして皮肉にも、人類の争いが文明の向上に役立ってきたという経緯もある。
人が人である以上、争いは本能的に避けられないものなのだろうか?自然界の淘汰という流れの中に巻き込まれているのだろうか?いろんな考えが頭をよぎるが、争いたくないと願う人間が争いに巻き込まれないように祈るばかりだ。
Musharrifah (Northwest Mosul) on May 5-9, 2017
リトル氏のウェブサイトでは、この他にもたくさんの写真を閲覧できる。
via: Bored Panda / imgur / Kainoa Little など / translated by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
写真から現地の状況を理解出来るけど見ていて特に感じるものがないから 売れないんだろうな。
2. 匿名処理班
人だから争いは避けられないのではなく、人だから争いごとが大きくなりすぎる。
そしてそれは「自他」の区別がある限り決して無くなることはない。
もし「争いごとを起こす事が罪」なのだとしたら、それはほぼあらゆる生き物が罪を背負うことになる。
争うことそのものは生き物として当然の行動の一つだけれど、問題なのは人間の争いは余りに色々な物を巻き込んで諸共にしてしまうと言うこと。
ここで一番厄介なのは「正義」という実に自他で馴染まない価値観で相手を抹殺するまで止まらない勢いの「暴走」だ。
3. 匿名処理班
買い手は真実よりも作品を求めてるってワケか。皮肉だな。
4. 匿名処理班
見る前はそんなことはないだろと思ったけど
過去の報道写真と比べて掴むものがない
技術もないし題材的にも
5.
6. 匿名処理班
そりゃまあそうだ。
1,6,9 などが如実だが、
新聞屋さんが知りたいのは
その銃口の先に何があるのか?であって、
鉄砲構えた兵隊さんじゃないもの。
この人は、自分が見たものを見たまんま撮ったんだ。
売り込み先が違う。
7. 匿名処理班
避難民の写真見てると辛いけどなー
買えって言われても困るけど
8. 匿名処理班
何百人という白人カメラマンが居て売り込みに来るからお涙頂戴じゃなきゃ売れないだろ
9. 匿名処理班
悲惨であればあるほど売れるんでしょうね
10. 匿名処理班
戦争の悲惨さを訴えられるような
死にかけの子供を放置して撮った写真の方が売れるという現実
11. 匿名処理班
18の母ちゃんの顔好き
息子さん無事でよかったね
12. 匿名処理班
消すより、公開してくれて良かった。
13.
14. 匿名処理班
あんまり写真の撮り方うまくない人だな
15. 匿名処理班
有名な戦場写真ていうのはカメラマンが人でなしなことが多い気がする
買う側はセンセーションを引き起こし政治的に炎上する絵を欲しがるもんだ
16. 匿名処理班
真実は時に非常に退屈だから、人は刺激を選ぶ傾向にあるのかも
17. 匿名処理班
Free Burma Rangerっていうのが気になった
ビルマ[ミャンマー)の政府軍と少数民族の戦闘がまだあってクリスチャン系の人道支援の団体だそうだ モスルに来てるっていうのはどういう経緯だろうか?
18. 匿名処理班
人物の表情が撮れてないのが売れない原因なのかなあ。9の右側の兵士、17の女の子、18の女性、顔がもっと見えていたら何かが伝わりそうなのに…。
19. ・・・
このモスルの1軒のシアターを巡る戦いは、恐らく何人も負傷者や戦死者を出しつつ、多分半日から数日くらい続いて終結したのかもしれない
でもイラクの連邦警察のみなさんにとっては、これと似たような戦いが明日も明後日も続くんだろうなぁ…
20. 匿名処理班
カメラ始めてから分かるようになったけど、この写真は綺麗にしてるよね
戦闘中にシャッター切って砂も埃も舞ってるはずの空気とか、絶対に火薬くさいだろ?っていう感覚が無い
この言い方は失礼なのは承知の上で、エンタメとしても売れない写真だと感じる
21. 匿名処理班
記録写真(画像)であって芸術的な報道写真じゃないのが売れない理由かもね
22. 匿名処理班
ボツ写真はどんどん公開した方が良いな
23. 匿名処理班
モスルのISIS掃討では米軍の無人機部隊が参加していて、ロケット弾で散々敵陣を蹂躙した後にイラク軍地上部隊が片付ける手筈になっている
「イラクがモスルを開放しましたよ」という明文の為にこういう写真が必要な訳だ
まさにつまらん真実というやつですね(笑