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第十一話:回復術士は神鳥の試練を越える
7/1 スニーカー文庫様から無事回復術士のやり直しが発売されました! 感謝
神鳥が潜む巨大な白いまゆを貫くと、急にどこかに転移された。
そこは黒い壁に囲まれた広い部屋だ。
俺はその空間で、かつて復讐を果たし殺したはずの連中に取り囲まれていた。
扉どころか窓もなく逃げることは不可能。
そんな状況で亡者どもは、どうやら俺のことを逆恨みしているらしく、呪詛を吐いて襲い掛かってくる。
だから、俺はそいつらを侵して、犯して、冒し尽くす。
ただ、殺すだけだとつまらないので肉体も心も魂を凌辱してすりつぶす。
こいつらは俺のことが憎いのだろう。しかし憎いのは俺も同じだ。ちょうど復讐したりないと思っていたんだ。
「あはははははは、どうした!? 俺が憎いんじゃないのか!? 俺を殺すんじゃないのか!?」
気が付けば笑っていた。
なにせ、復讐を二回もできるなんてラッキーと考えていたが、それはまったくの勘違いだった。
二回どころか……。
「殺し放題じゃないか!? あと何回、俺を楽しませてくれるんだ!? おまえたちは、最高だよ!」
十回から先は数えていない。
何度、殺そうがよみがえってくる。
しかも、どうやら向こうは殺されたことを律儀に毎回覚えているようだ。
殺害回数によって反応が変わって面白い。
三回までは、殺されるたび、より恨みを増してより激しく襲い掛かってきた。
五回を超えたぐらいで、動きに精細をなくし始め、ためらいを覚え始める。
十回を超えたあたりで、恨みより恐怖が勝っているようだ。憎くて仕方ない俺が目の前にいるのに……俺を殺したかったはずなのに、襲いかかって来るどころか、俺から逃げ始めた。
こちらから近づくと、許してくれと泣いて懇願する。
おかしいな、許してくれというのは俺のセリフだろう? 亡者なら、亡者らしくしろよ。
今も一人、許してと泣き叫んでいた。そいつの頭を叩き潰す。あえて七割殺しの致命傷にしておいた。死ぬまでの恐怖を味わってもらうためだ。
「次は、どんな殺し方をしようかなっと」
飽きないように、いろいろと斬新な殺し方を考えるのはなかなか楽しい。
ちょうど【剣】の勇者の細胞を異常増殖させて、風船のように膨らませて破裂させてみた。
最高に無様で、醜くい。
くそレズ女が化け物に変わっていく己の姿に絶望しながら死んでいく姿はなかなかにそそる。
ちょっと興奮して勃起したので、適当に別の亡者をレイプしてすっきり。飽きたので首を落として、次に行く。
「ほら、俺が憎いんだろ!? 殺したいんだろう!? さっきまでの勢いはどうしたんだ!? あんなに元気に殺すと言ってたじゃないか! 許さないと言ってたじゃないか!? えっ!? それなのに、何が許してだ、何が来ないでだ。お前たちが憎んでる俺はここにいるぞ! おまえたちの復讐心というのはその程度か! あははははは!」
ああ、楽しい。
かつて、憎くて殺した連中がここまでみじめに俺から逃げ惑うのは。
もはや、俺に挑んでくる連中は一人もいなくなった。
泣いて許しを請い、震えながら逃げ惑う獲物しかいない。それを追いかけて踏みつぶす。
なんて、ぬるい! 復讐心が本物なら、たかが数十回殺され、凌辱の限りを尽くされた程度であきらめるものか!
俺が本当の復讐を教えてやる。
こいつらのぬるい復讐心と違い、俺はどれだけ殺して凌辱しても満足なんてしない。
ああ、回復術士で良かった。
【回復】で、傷と体力を癒し、【略奪】で魔力を奪える。つまりは永久機関だ。永久に、この最高に楽しいゲームが楽しめる。
いろいろと試したいことがあったので、非常に助かる。
最後の勇者。【砲】の勇者ブレット。あのサイコパスのショタホモには最上級の苦しみを味合わせないといけない。
そのために、どの殺し方をすれば、もっとも効果的に恐怖と苦痛と屈辱を味合わせることかを、比較検討する必要があったのだ。
インスピレーションがわいてきた。やはり、実践が一番勉強になる。さっそく試してみよう。
「くっ、来るな」
「いやだ、もう蘇りたくない。殺してえええええ、生き返らせないでえええ」
「出して、ここから出して」
「ひいいいいい、もう死ねなんていいません。もう恨んでいません、だから、もう俺のことは忘れてください、なんでもしますから」
亡者たちの命ごい。
なかなかレアだ。
でも、許さない。なぜなら、俺はこいつらのことが大嫌いだからだ。むしろ嫌がることを進んでやる。
さて、次はどんな趣向で遊ぼう。
そんなことを考えていたときだった。
急に、亡者たちが消え始めた。亡者たちは、その消滅を幸せそうに受け入れる。みんな、安堵の笑みを浮かべている。
やっと解放される、助かった。
そんなことを口にする。
やめてくれ、胸糞悪い。そんな幸せそうに消えられたら、俺の努力が無駄になるじゃないか。
そうだ、いいことを考えた。
「おまえたち、期待しておけ。俺が地獄に落ちたらまた遊んでやるからな! 地獄での再会を心待ちにしておく!」
最後に精いっぱい叫んだ。
面白いものだ。亡者たちの安堵に満ちた顔が歪み、絶望に染まる。うん、これでいい。安らかな終わりなど許すものか。
「さて、次は何かな。これは試練の前のボーナスステージだろう。本当の試練は気を引き締めないとな」
はじめは試練かと疑ったが、こんな楽しいレクリエーションが試練のはずがない。
不思議な浮遊感が体を包んだ。
また、どこかに連れていかれるのだろう。
俺は、その感覚に身を任せた。
◇
目を開く。
そこは白い部屋だった。
となりに気配を感じた。そちらを見るとイヴがいる。
彼女は涙を流して、ごめんねとつぶやいていた。
「イヴ、無事だったか」
「……ケアルガ」
イヴは俺をみると泣き顔のまま笑って、胸に飛び込んできた。
そして、嗚咽する。
そんな彼女の頭を撫でてやる。
「どうかしたのか」
「ユエルと、メロ、それに、ナアラが、現れて、それで、それで……」
それが誰かは知らないが、さっきまで俺が経験していたことを考えると、イヴがかつて殺した、あるいは自分のせいで死んだ、そういったイヴに恨みを持っている人物が現れたのだろう。
「それでね、ケアルガ。みんなが私のこと責めて、でも、話せばわかってくれて、最後は私を応援して、それから消えちゃった。みんな私のせいで死んだのに、がんばれって、ケアルガぁ」
イヴの嗚咽が大きくなる。
……話せばわかってくれる? 最後は応援して消えていく?
なんだそれは。
よくわからない。あれは、そういう試練だったのか?
とりあえず、イヴが落ち着くまでこうしていよう。
甘えてくるイヴはなかなか新鮮だ。
◇
しばらくそうしていると、風が吹いた。
空を見上げる。体調五メートルは超えるだろう、真っ白い巨大な鷹が下りてきた。
頭には金色の特徴的な羽があり、まるで王冠のようだ。
その鳥と目が合う。
その目には深い知性がある。
こいつが、神鳥カラドリウスか。
『小さき者たちよ。よくぞ、我が試練を突破した。試練では、体、知、心を試させてもらった。病に打ち勝つ体の強さ。病に侵されながらも冷静に糸を手繰り寄せ、我の元にたどり着く知性、そして自らの罪と向き合い乗り越える心の強さ。おまえたちは、そのすべてを乗り越えた』
自らの罪と向き合い乗り越える心の強さ、そんなものを試す試練はあったか? 心当たりがない。
きっと、イヴだけに課せられた試練だろう。
『ほとんどのものは病に耐えられず朽ち果てる。病に耐えられたものも、病から逃れることだけを考え用意した白い家に引きこもり、我のもとにたどり着こうとはせぬ。そして、ほんのわずか、たどり着いたものすらも己の罪に食い殺される。二人ともよくぞ試練を乗り越えたものだ』
二人とも? 俺もそんな心の罪を試す試練とやらをクリアした?
……おかしい、一応聞いておこう。
「心の試練とはなんだったのでしょうか?」
『何を言っている? お主も受けて乗り越えただろう。己の罪により死んだ魂、中でも強い感情をもつ魂を我は呼び出す。そしてその魂たちに向き合い、その魂に許されなければならない。罪の多いものほど、呼び出される魂は多い。そして、恨みを持つものに許されるというのは難しいのだ。だが、それができてこと真に強い心の持ち主となる』
……向き合って、説得して許される。
ああ、あいつらとそんなことをしないといけなかったのか。
なんて、難易度の高い試練なんだ。
「たとえばその呼び出された魂とやらを殺したらどうなる」
『呪いと恨みを深めるだけよ。殺されようが亡者たちは力を増し、やがては食い殺されるであろう。これは心の強さと気高さを試す試練。この期に及んで、罪を重ねるような者に乗り越えることは叶わぬ。試練の様子は見てはいないが、お主はすさまじいな。あれだけの強い恨みをもった魂をすべて昇華させるとは。よほど強い心を持ち、亡者たちに許されるだけの得を積んだのだろう。お主はすごい男だ』
ああ、あれが本当に試練だったのか。気が付かなかった。
とりあえず、何があったかは黙っていよう。
神鳥は試練の様子を見ていなかったぐらいだし。
ふむ、何度でもよみがえる不死身の亡者の攻略法は、自分から消滅したいと思わせるほど、痛めつけて凌辱の限りを尽くすことだったのは意外だっただな。
いろいろと勉強になった。
「イヴ、がんばったな」
「……辛い試練だったよ。だけど、受けれてよかった。私を守ろうとして、私のせいで死んだ人たちとまた会えた。それにね、ケアルガのことを話したらみんな喜んでくれたんだ。やっとイヴにも大事な人ができたんだねって。……それからね、託されたの。ちゃんと魔王になって、黒翼族のみんなを守るって約束したんだ。だから、私、これからもっとがんばるね」
泣き止んでいたイヴがまた泣き出す。
……なるほど、これが正統派の試練の攻略法。
俺には、ぜったいに無理だ。
「ねえ、ケアルガはどんな感じだったの?」
「うん、普通だよ。普通。ああ、なんだ、俺のせいで死んだ連中に、誠心誠意、真心を込めて、言葉だけじゃなく、行動で誠意を示した。最後には、みんな満足をして帰っていったよ」
「すごいね、ケアルガは」
嘘は言っていない。最後はみんな自分の意志で消えていったし。
神鳥の魔力が高まる。
イヴと二人でそちらを向く。
『小さきものたちよ。我が試練を超えた褒美を与えよう。まずは黒翼族の少女。旧き盟約に従い、試練を超えたその証を与えん』
神鳥がイヴのおでこを、こつんっと嘴でつついた。
すると、イヴの髪が銀色に変わった。瞳の色が血の色に。
……その姿は、俺がかつて見た魔王の姿だ。
勘違いしていた。一度目の世界でもイヴは神鳥カラドリウスを従えていたのだ。
なら、なぜ勇者との戦いで使わなかった?
今、こうして対峙しているだけでわかる。
神鳥は強い。真っ向勝負すれば一度目の世界の勇者パーティを神鳥だけで撃破できただろう。魔王と神鳥を同時に相手どれば、一度目の俺は勝ち目がなかった。
気になることが一つ増えた。
『我が祝福を与えた。これでお主は力を得た。そして、我をいつでも呼べる。だが、わかっておるな』
「うん、本当に必要なときだけ呼ぶよ。……呼べば私もただじゃ済まない」
意外にはやく答えがでた。
リスクがあるのだ。あるいは回数制限かもしれない。
ただ、間違いなく切り札は得た。あとでイヴに詳細に話を聞こう。
『そして、そちらの男よ。黒翼族以外に我は使えぬ。さらに我が力は人間にとっての毒だ。お主は随分人間をやめているとはいえ、耐えきれはせん。とはいえ、何も与えずに帰らしたのでは我の沽券にかかわる。そこでだ』
神鳥はまず神鳥は俺の背にある、卵入りのリュックにこつんっと嘴を当てた。
つぎに、俺の左眼をつついた。
……あまりの速さに反応ができなかった。
『その眼は精霊の眼。故に眼だけであれば、我が力を与えることができる。そして、お主の魔力を食らって育つ子に我の力を注いだ。凄まじい力の子が生まれるだろう……にしても、お主はいったいなんなのだ。お主の魔物と心を食らって育った子が、そんなに歪んだ……しつれい、醜悪……ごほんっ、破滅、違った。独創的に育つなど。おかしい。そんな人物があの試練を超えられるはずがない』
ちょっと、この子が生まれることが心配になってきた。
いや、きっと神鳥は価値観が人とは違うのだろう。
俺の魔力と心をたっぷり受けて育ったこの子が、悪い子なはずがない。
「ありがとうございます。この子も、この眼も大事に使わせていただきます」
右は【翡翠眼】だが、左は新たな眼へと進化した。これは使えそうだ。
そして、俺の分身とも言える神格の魔物。そいつがさらに強くなる。これは期待できる。
『これで試練は終わりだ。元の世界に送り届けよう。また会おう、小さきものたちよ。ひさびさの来客、なかなか楽しめたぞ』
再び、なぞの浮遊感。
きっと、この白い霧の外に飛ばされるのだろう。
ここにきて良かった。おかげでたっぷりと力を得たのだから。
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