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第三話:回復術士は神鳥を崇める村を訪れる
俺は上機嫌でラプトルを走らせていた。
焦らずじっくり仕込んでいたイヴとの関係が、ついに一歩前進した。この両手でたっぷりとイヴの肢体を楽しんだのだ。
汗ばんだ肌。手に吸い付く感触、やけどしそうに熱くなった肉。思い出すだけで興奮してくる。
何度か、理性を捨て去って襲いそうになったがぐっとこらえた。
ここで手を出せば、今までの苦労がすべて水の泡。
ちゃんと手順を踏めば、いつか最後までやれる。
このじれったさ、もどかしさ、それすら楽しんで見せよう。
それが俺の純愛だ。
そんなことを考えながら口を開いた。
「イヴ、目的の村の方角はこっちでいいのか」
「うん、合ってるよ!」
ラプトル二頭が疾走している。
一頭目は、セツナが操り、フレイアが乗っている。
二頭目は、イヴとエレンを連れて俺が操っていた。
神鳥が封印されている場所はイヴしか知らないので道案内はイヴの仕事だ。
昨日よりも、ラプトルから振り下ろされないようにイヴが抱き着く力は強くなっていた。密着感があがっている。
これは昨日の一件が影響しているのだろう。
もどかしいのはイヴも一緒のようだ。
「イヴ、その村の住人は好戦的か? その神鳥を祭る村とやらの魔族たちが俺たちを侵入者としてみなして攻撃してくる可能性がある」
本来、人間と魔族は敵対している。
ブラニッカのように、人間と魔族が共存しているほうが異常だ。
村に近づいた瞬間、攻撃を受けてもおかしくない。
というよりも、そちらのほうが可能性が高いぐらいだ。
「私がいれば大丈夫だよ。なんたって、リース家の一人娘だからね!」
イヴの本名は、イヴ・リース。
そのリースとやらはかなりの名家らしい。
なら、安心だ。
イヴを見ていれば少なくとも、会話が通じる種族だということはわかっている。。
イヴを魔王の襲撃から守るため、そしてイヴを魔王にするために神鳥の儀式を受けると言えば、邪魔はしないだろう。
むしろ、黒翼族は俺を歓迎してもてなすべきだ。俺こそがイヴの救世主にして未来のご主人様なのだから。
「イヴ、一つ聞きたいんだが」
「ケアルガ、なに?」
「俺たちは、恋人と言っていい関係だよな?」
「ごふっ」
後ろでせき込む声が聞こえた。
変だな。そんな動揺することを聞いた覚えはないのに。
イヴだけでなく、ふわりと目の前の桃色の髪が膨らんだ。
ラプトルの首と俺の間に挟まっているノルン姫……いや、エレンが頬を膨らませて、振り向く。彼女も今の俺の発言が気になるようだ。
そして、もう一頭のラプトルを並走させているセツナの白い狼耳がぴくぴくと動いている。けっして聞き逃すまいとするときの仕草。
セツナは耳がいい。そちらの会話も聞こえているようだ。
「ケアルガ、いきなり、なんてこと聞くの!? おどろいちゃうよ!」
「そうです。ケアルガ兄様。イヴさんだけずるいです!」
「エレン、文句を言うところはそこ!? 違うよね!」
「イヴさん、抜け駆けは駄目です! ケアルガ兄様を独り占めは許さないです」
舌打ちしそうになった。
妙にエレンがなれなれしいな。ちょっと癇に障る。
妹扱いとはいえ、所有物の分際で。俺に対して独占欲など生意気だ。
深呼吸だ。落ち着こう。
……まだぎりぎり許容範囲内だ。
面白そうだから妹に仕立て見たが、失敗かもしれない。あまりにもうっとうしくなれば”教育”しよう。
ただ、甘えてくる妹というのにはそれはそれで可愛さがある。
あれだ、うざ可愛いと言う奴だ。これも味があるので捨てるのは惜しいと思えてきた。悩ましい。
まあ、もとがノルン姫なので壊しても大丈夫なのがせめてもの救いだ。
あまり強引に弄らずにちゃんとした”教育”で俺好みにしていこう。
「エレンは俺のものだよ。セツナもフレイアもだ。だから、口にしない。俺は、おまえたちの愛を信じているんだ。聞く必要なんてないんだよ……今日はお前の番だ。たっぷり可愛がってやる。そしたらわかるだろ」
「ケアルガ兄様ぁ」
うっとりした声でエレンがもたれかかって来る。
すでに、フレイア、セツナ、エレンは俺の所有物なのだ。
イヴに夢中になってないがしろにされる。そう感じさせたのは俺の不徳だ。彼女たちが不安にならないよう徹底的に可愛がってやろう。
肝心のイヴはというと、悩みすぎて頭がオーバーヒートしたようだ。
いや、ようやく答えが出たらしい。
「ちょっと、迷っちゃったけど、違うよ! ケアルガとはただの友達だよ!」
おっ、ちょっと前進した。
ただの傭兵とでも言うかと思った。友達と呼んでもらえるとは。
「おかしいな。昨晩、あんなに愛し合ったのに。イヴはただの友達にあんなことをさせるのか。黒翼族は進んでるな。貞操観念に問題がないか?」
冗談めかして言うと、イヴか顔を真っ赤にした。
「そんなわけないじゃん! ケアルガが相手だからぁ、あっ、違う、そういう意味じゃなくて、ああ、もう! ケアルガは、ケアルガはぁ」
おそらく、自分でも自分の感情が良く分かっていないのだろう。
からかいがある。
「だいたい、ケアルガは気が多すぎるよ。いったい何人の女の子を侍らせる気だよ!? 君がもっと誠実だったら私だって」
そう言って、また慌てだす。
本当に面白い。
「言いたいことはわかるけどね。俺はこれでいいんだ。こっちのほうがみんが幸せになれる」
「……意味が分かんないよ」
ふむ、ならしっかりと説明してあげよう。
イヴにもわかりやすいように言葉を選ぶ。
「いいか、一人しか幸せにできない程度の男なら、そいつは一人しか愛さないほうがいい。だけど、俺は違う。何人だろうと同時に幸せにするだけの器量がある。そして、俺は他の男より、みんなを幸せにしてやれる。そんな俺が一人だけ選ぶほうが、よっぽど不誠実だとは思わないか。選ばなかった女がみんな不幸になるんだぞ。それは犯罪的だ」
イヴがジト目で見ている。
何かおかしいことを言ってしまったのか?
よくわからない。たくさんの女性を幸せにできる男がたくさんの女を幸せにする。これ以上ないぐらいに単純な話のはずだ。
「はあ、もういいよ。なんで、こんな人……うううう」
そのうち、イヴもちゃんと理解してくれるだろう。
俺はちゃんと所有物は大事にする。
守ってやるし不自由もさせない。愛し続けてやる。
イヴが俺の所有物になる日が楽しみだ。
◇
それから、一日野営をして、再出発した。
日が暮れ始めたころ、イヴが大きな声を出す。
「ついたよ。ここが神鳥を祭る村、ヴィソーヴだよ! ……ケアルガ、約束してね。絶対、もめ事を起こさないでね。故郷を滅ぼされた黒翼族の最後のよりどころだから」
確か、黒翼族は魔王に疎まれて彼らの国は滅ぼされていた。
そして生き残りは各地に散り、魔王候補であるイヴが新たに魔王になるその日を信じて祈りを捧げ、ひっそりと隠れ暮らしているはず。
「なぜノウノウとある程度の数の黒翼族が一か所に集まっているのだろう? 魔王に狙ってくれっと言ってるようなものじゃないか?」
そこが気になった。
一つの集落に固まるなんて自殺行為だ。
「普通の黒翼族はいないよ。みんな巫女の家系。神鳥を支配できないけどお願いはできるんだ。絶対来てくれるわけじゃない。でも、神鳥が助けに来てくれることがある。魔王の軍も怖くて近寄れないんだ……逆に黒翼族たちもいつ神鳥の気まぐれで殺されてもおかしくないから、神鳥に声を届せやすい巫女の家系の人以外は近寄らないんだけどね」
危なっかしい諸刃の刃というところか。
そして、一ついい情報が手に入った。
黒翼族を極端に恐れる現魔王ですら神鳥は恐れる。
つまりは手に入れさえすれば強大な武器になるということだ。
それだけではない。俺の錬金術士としての知識が言っている。
神鳥の羽や血、肉。
それを原料にしたポーションは、最高の治療薬にも最悪の毒にもなる。
今まで以上に素晴らしいポーションを作れるのだ。
それさえあれば、もっと楽しいことができる!
最高じゃないか!
やはり、イヴを手に入れて良かった。イヴ自身が戦力としても女としても最高だ。その上、神鳥という最上のおまけまで得られるなんて。
無意識に、イヴの黒髪を撫でる。
「もう、なんだよ。ケアルガ」
嫌がってはいない。
照れて顔をそむける。
本当に可愛い奴だ。
なんとなく、神鳥を得られるタイミングで落とせる。そう、俺の勘が言っていた。
俺の勘はよく当たる。
はやく、俺の下でよがってるイヴを見たいものだ。
イヴを手に入れれば、神鳥に見守ってもらいながら愛し合おう。
それはとっても神秘的で素晴らしいことのように思えた。
矢が飛んできたので斬りはらう。
セツナのほうにも矢が飛んでおり、彼女も危なげなく斬りはらった。
ああ、うっとうしい。せっかくいい気分でイヴとの幸せな未来を想像していたのに。
気が付けば数人の弓と杖を携えた黒い翼の一団に囲まれていた。
ふむ、この距離まで俺が気付けないと言うことはかなり高度な術式で気配を消していたのだろう。ちょっと【模倣】したい。便利そうだ。
中心人物らしい初老の男が口を開く。
「貴様、イヴ姫様を離せ!」
ああ、勘違いされているのか。
「イヴ、こいつら皆殺しにしていい?」
「だめに決まってるよ!?」
「なら、全力で説得しろ。……俺は殺さないように最善を尽くすが、約束はできない」
イヴが生唾を飲む。
そして、毅然として顔で前を見た。
さて、イヴのお手並みを拝見だ。
たぶん、なんとかなるだろう。
なんとかならなくても、俺がどうにかするが。面白そうな見世物だ。ゆっくりと見学させてもらおう。
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