豊洲に予定の観光施設 運営会社が撤退の意向

豊洲に予定の観光施設 運営会社が撤退の意向
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東京都の市場の移転問題で、豊洲市場の敷地内に整備される予定の観光施設の運営会社が、小池知事が示した基本方針によって築地市場も観光拠点として再開発されれば採算が取れなくなるとして、このままでは豊洲から撤退せざるをえないとする意向を東京都に伝えていたことがわかりました。
東京都は、築地市場の豊洲への移転にあわせ、豊洲市場の敷地内に「千客万来施設」という食文化を発信する観光施設をオープンさせる計画で、神奈川県に本社のある温浴施設の運営会社が整備・運営することが決まっています。

しかし、小池知事が先月、豊洲に移転したあと築地を食のテーマパークとして再開発する基本方針を示したことを受け、この運営会社は事業の前提条件が変更され、このままでは豊洲から撤退せざるをえないとする意向を東京都に伝えていたことが、関係者への取材でわかりました。築地に同様の観光施設ができれば、互いに客を奪い合うことになり、事業の採算は取れなくなるなどとしています。

運営会社と東京都は、現在、協議を進めていますが、東京都によりますと、仮に会社の撤退が決まった場合は、前提条件を変更した都側に違約金の支払いが発生する可能性があるということです。

また、観光施設の整備は、地元の江東区が市場の移転を受け入れる際に地域の活性化策として都に求めてきたいきさつがあり、豊洲から撤退することになれば地元の反発は避けられず、移転問題の新たな課題となることも予想されます。

「千客万来施設」とは

「千客万来施設」は、築地特有のにぎわいを豊洲市場で継承・発展させるためとして東京都が民間企業の協力を得て、豊洲市場の敷地に整備する観光施設です。国内外から多くの観光客を呼び込むことで移転後の市場業者の経営をサポートする効果も期待されています。

公募の結果、江戸の町並みをイメージした商業施設と、温泉や宿泊が楽しめるレジャー施設を提案した神奈川県に本社のある温浴施設の運営会社が整備・運営を担当することが決まっています。

事業計画では、商業施設は豊洲市場に隣接する立地をいかして生鮮食料品などを販売し、開業は来年8月で、年間138万人の来場を見込んでいます。

また、レジャー施設は24時間楽しめる温泉や臨海部の眺望をいかしたホテルを整備し、開業は再来年8月、年間55万人の来場を見込んでいます。

建設工事はことし1月から始まる予定でしたが、豊洲への移転が延期されたことで着工できず、3年後の東京オリンピック・パラリンピックの開催前を目指した開業は、大会後にずれ込む可能性が強まっています。このため、運営会社はこれまで東京都に対し、豊洲に早期に移転するよう求めていました。

「これ以上待つことはできない」

神奈川県小田原市に本社があり、観光施設を整備・運営する予定の「万葉倶楽部」は、「移転延期が発表されてから1年近く、小池知事の対応を注視してきたが、前提条件が変更されては事業は成り立たない。すでにことし1月に予定していた建設工事の開始を見送るなど影響が出ていて、3年後のオリンピック・パラリンピックの開催前を目指した開業も困難になっている。小池知事の基本方針からは具体的な内容が見えず、これ以上、待つことはできない」としています。

撤退の場合は市場収支に影響も

「千客万来施設」は、市場移転を受け入れる江東区が地域の活性化策として求めているだけでなく、東京都の貴重な収入源としても期待されています。

千客万来施設は、東京都が所有する豊洲市場の土地を使って、民間企業が整備・運営するため、賃貸料が発生します。東京都の計画では、土地を貸し出す期間は50年とされ、この間、都に入る賃貸収入は合わせて43億円余りに上ります。

豊洲市場では年間92億円の赤字が発生するとされ、先月、小池知事が示した基本方針では事業の継続性を図るためとして、千客万来施設を含む豊洲市場での賃貸収入に加えて再開発した築地市場での収入などを見込むことで、中長期的には収支が安定するとしています。このため仮に千客万来施設からの企業の撤退が決まれば、貴重な財源を失うことになり、東京都の計画に影響を与える可能性もあります。