人工知能(AI)を使って顧客の質問に自動返答するプログラムの開発が盛んになっている。サイバーエージェントは機能を刷新して回答精度を高め、質問サイト運営のオウケイウェイヴは自社の質問・回答データを活用して最短3週間で導入できるようにした。導入企業は販売する商品・サービスなどへの問い合わせをAIに任せ、業務効率を改善できる。
サイバーエージェントグループのAIメッセンジャー(東京・渋谷)は、AIを使った自動会話プログラム「AI Messenger」の質問応答機能を刷新した。同プログラムを採用した企業は、顧客からのインターネット経由の問い合わせに自動で返答する「チャットボット」の回答精度を高められる。
AIや機械学習を専門とする東京大学の佐藤一誠講師と組み、AIに投げかけられた質問の語句の重要度を判断する仕組みを導入した。AIが質問の意味を認識するときに「重要な語」「重要でない語」を判別する。
例えば、金融機関の質問受け付けサイトに顧客が「ウェブで口座残高を見るには?」と入力したとすると、「口座残高」はほかの質問にも多く使われているため、重要度は低く設定される。「ウェブ」がほかの質問と区別するうえでより重要な単語と判断する。
最終的にAIは残高確認できるサイトのアドレスを顧客に提示する。口座残高の照会可能時間帯など、顧客の求めていない返答を回避する。語句の重みづけをできるようにすることで、試験導入したチャットボットの回答精度は従来よりも約10%向上したという。
オウケイウェイヴも6月、企業向け自動返答サービス「OKWAVE AI Knowledge」を始めた。運営しているQ&Aサイト「OKWAVE」で蓄積した3500万件以上の質問・回答データをAIに学習させた。
導入企業は自ら言語データベースをつくり、AIに学習させなくても、最短3週間でチャットボットを始められる。導入企業はオウケイウェイヴに自社へ寄せられた質問や回答を提供する。オウケイウェイヴは提供データをAIに学習させ、回答精度を高めていく。
多くの企業がホームページやアプリで、顧客から商品・サービスなどに対する質問を受け付けている。多数の質問が寄せられ、電話やメールの応対に人手や時間がかかるケースもある。AIの活用は人手不足対策や業務効率化につながる。チャットボットの性能向上で導入企業は増えそうだ。
(企業報道部 毛芝雄己)
[日経産業新聞 2017年7月10日付]