【7月11日 時事通信社】英国で先天性の難病のため自力での生存が不可能と診断された乳児(生後11カ月)の尊厳死の是非が争われ、英最高裁と欧州人権裁判所でいったんは尊厳死が認められた裁判で、英高等法院は10日、新たな証拠を検討するため審理を再開した。

 この乳児はロンドンの病院で生まれたチャーリー・ガードちゃん。生まれつき細胞内の小器官ミトコンドリアに異常がある「ミトコンドリアDNA枯渇症候群」というまれな疾患にかかっており、自力で呼吸もできない。医師団は「脳に回復不能の損傷がある」と診断し、生命維持装置を外す尊厳死を勧めた。両親は拒否し、米国での治療を求めていた。

 チャーリーちゃんの尊厳死の是非が問われた裁判で高等法院は今年4月、医師団の判断を支持。両親は上告したが、最高裁と欧州人権裁も6月にこれを棄却した。しかし今回、治療法についての「新たな証拠」が提出されたとして審理が再開された。

 両親の弁護士は最新の遺伝子科学による実験的な治療法が「劇的な臨床的改善」をもたらす可能性があり、「試してみる価値がある」と主張しているが、病院側は疑問視している。

 チャーリーちゃんについて、米国での治療を認めるよう求める35万人の署名が集まっている。トランプ米大統領が今月3日、ツイッターで「少しでも助けることができるなら喜んでする」と述べたほか、フランシスコ・ローマ法王も「子供に付き添い世話したいという願いが無視されるべきではない」と、両親を支持する声明を出した。(c)時事通信社