「お友達を大切にする安倍首相に対して、睨まれたくない首長や役人が忖度し過ぎた結果のスキャンダルでしょう」
ついに国会での証人喚問に発展した森友学園の国有地の安値払い下げ問題。その背景について、ある与党議員はこう解説する。森友スキャンダルは学園オーナーの籠池泰典氏やその一家の特異なキャラクターも手伝い、マスコミ報道は過熱するばかりだ。
スキャンダルの核心部分は、何故、国や自治体が一学校法人にすぎない森友学園に、破格の値段で国有地が払い下げられ、学校開設がスピード認可されたかにある。そこにいまや独裁的な権力を手にした安倍首相の影がちらつくことに国民は胡散臭いものを感じ取っている。
先の与党議員が示唆するように、安倍首相本人の預かり知らないところで、周囲が首相の想いを忖度する形でスキャンダルの芽は生まれ、広がっていったのかもしれない。だが、そうであれば同じ構図の第二、第三の森友学園が隠れている可能性は捨てきれない。
岡山市の学校法人「加計学園」を巡る疑惑もそのひとつだ。同学園は保育園、幼稚園から大学、特区別養護老人ホームまで幅広くグループ校を展開している。
その加計学園グループが愛媛県今治市に開設予定の岡山理科大学獣医学部の用地(評価額約37億円相当の市有地)がほぼ無償で譲渡されることが3月3日の今治市議会で決まった。
獣医学部の新設は実に52年ぶり。今治市は「国家戦略特区」に指定されており、最低2年はかかると言われる学部新設は規制緩和でスピード認可され、来年4月にも開学する予定となっている。
また、グループ校の学校法人順正学園が経営する「吉備国際大学」(兵庫県南あわじ市)の用地等の取得に関しても、評価額30億円近い土地・建物がほぼ無償で譲渡されている。
同大学の本キャンパスは岡山県高梁市にあるが、南あわじ市の兵庫県立志和高校の跡地に「南あわじ志知キャンパス」として2012年に開設されたもので、廃校となった志和高校の校舎が居抜きで活用されている。
驚かされることに、この「南あわじ志和キャンパス」の開設では、南あわじ市から建物と設備が無償譲渡され、市が共同で校舎を整備した。かつ、学生が南あわじ市に住民票を移せば、1人あたり30万円まで補助金を出す、至れり尽くせりの公有地の譲渡であった。
「人口が減少する地方自治体では補助金を出して大学等を誘致することはよくあるが、これほど手厚い誘致条件は極めて珍しい」(メガバンク幹部)という。12年10月には、物件の返還を求める監査請求が市民から兵庫県に出されたが、棄却された。
加計学園だけが、何故こうした破格の公有地の無償譲渡を受けられるのか、その背景にあると囁かれているのが、加計学園グループのオーナーである加計孝太郎氏と安倍首相との関係だ。安倍首相と加計氏は、安倍氏が神戸製鋼に入社する前に南カリフォルニア大学に留学しているが、その留学に備えカリフォルニア州の英語学校で学んでいる。
「その語学学校時代の学友が加計氏で、同じく学友であったのが現三井住友銀行副頭取の高橋精一郎氏」(関係者)と言われる。
海外の留学時代の学友は安倍氏にとって「同じ釜の飯を食った友人以上の存在」(同)ということだろう。3氏の交流は現在もなお濃密に続けられている。首相の日々動静によると、定期的に会っていることが確認される。例えば、昨年8月11日には、山梨県の山中湖畔の富士ゴルフコースで3氏はゴルフに興じている。また、昨年12月24日のクリスマスイブには、東京八重洲の鉄鋼ビルディング南館内のエグゼクティブラウンジで明恵夫人を交えて夕食を共にしている。さらにこの3月2日には東京・宇田川の焼き肉店「ゆうじ」で、同じく明恵夫人を交えて会食している。
こうした安倍首相との交流と、加計学園の公有地の破格の譲渡とが直接結びついている証拠はない。だが、安倍首相の交友関係を周囲が忖度したことで本来では考えられない条件が実現した可能性はあろう。
一方、もうひとりの旧友である三井住友銀行の高橋副頭取は、市場営業統括責任役ながら、メガバンク幹部の間では、「影の政治担当者」として知られる。「安倍首相との関係が直接、銀行業務に寄与するわけではないが、銀行としては欠くことのできない存在だろう」(メガバンク幹部)とされる。
三井住友銀行は、4月に國部毅頭取が持株会社の社長・CEOとなり、後任に国際畑の高島誠専務が昇格し、高橋氏は転出することになるが、はたしてどういったポストに就くのか、処遇が注目されている。ここでも三井住友銀行が安倍首相の想いを忖度することになるかもしれない。