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【熊本地震】太陽光パネルに災害時の課題 感電や土壌汚染の危険

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太陽光パネルに災害時の課題 感電や土壌汚染の危険

熊本地震更新

 熊本地震の被災地で、損壊した家屋に取り付けられた太陽光発電設備の扱いが課題になっている。破損した太陽光パネルは感電の危険性が高まる上に、雨で含有物質が流出して土壌汚染につながる恐れもある。太陽光は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の導入で普及が進んだが、災害時の問題が改めて浮き彫りになった。(九州総局 高瀬真由子)

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 「地震で被害を受けた太陽光発電システムに注意!」

 熊本県消費生活センターは5月下旬、ホームページにこんな啓発を掲載した。

 太陽光発電設備は震災で破損しても、光が当たれば発電する。同センターは、素手で絶対に触らないことや、設備や配線が損傷した場合には漏電の危険性があることを呼びかける。

 過去の台風でパネルが強風にあおられ、飛散被害が出たことも啓発のきっかけになった。

 家庭用を中心とした10キロワット未満の太陽光発電設備は、熊本県で約4万9千件、大分県で約3万1千件が導入された。一連の地震で設備のある家屋が倒壊した事例は複数確認された。

 同様の啓発は、経済産業省や業界団体の「太陽光発電協会」(東京都)も行う。経産省の担当者は「住民やボランティアが倒壊家屋の片付け作業中に、不用意に触ってしまう可能性もある」と懸念する。

 一方、環境省も、被災した太陽光パネルの保管では、発電や雨水による含有物質流出を防止しようと、表面をブルーシートで覆うことや、ガラスのパネルでけがをしないよう注意することを求めている。

 太陽光パネルが関係した被害は、過去の災害でも問題になった。経産省九州産業保安監督部によると昨年8月、台風15号が九州を縦断した際、九州では発電設備の被害が81件発生した。福岡県内では20枚のパネルが敷地外に飛散し、周辺8棟の民家を直撃した。太陽光パネルが「凶器」となることを見せつけた。

 翌月の茨城県・鬼怒川での大規模水害では、川沿いの発電設備が水没し、感電の危険性が指摘された。

 寿命を迎えたり、災害に遭い、使用不可になった太陽光パネルは、廃棄物として処分される。そのため、被災地ではごみの排出量の増加も懸念される。

 使用済みパネルは、大半が埋め立て処分される。太陽光パネルは、FITが導入された平成24年以後、大規模太陽光発電所(メガソーラー)や一般家庭で普及が進んだ。パネルのごみ問題は今後、全国的にも深刻化すると予想される。

 環境省によると、パネルの寿命は約25年。平成32年度の排出見込み量は2800トン、その10年後には2万8千トンにも急増する。

 太陽光発電の導入がこの先も拡大すれば、かえって新たな環境問題を誘発することにもなりかねない。