(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年7月5日付)
国際決済銀行(BIS)は、動かなくなった置き時計のような国際経済機関だ。理にかなっていてもいなくても、金融・財政の引き締めをずっと主張しているからだ。
幸いなことに各国の政策立案者は――少なくともBISに加盟している中央銀行は――世界はさらに深刻かつ長期の景気後退を必要としているというBISの確信らしきものを無視してきた。しかし今、中央銀行が賢明にもBISのアドバイスを無視したからこそ、世界ではようやく景気の同時回復が始まっている。
では、動かない時計のBISは最新の年次報告書で、世界金融危機が始まる前の数年間と同じように、時を正しく告げているのだろうか。
過去にBISがどの程度間違っていたか、振り返ってみる価値はある。今にして思えば金融危機のダメージがまだしっかり残っていた2010年6月に、BISは早くも、「これらの強力な政策手段をいつから、どのように段階的に取りやめていくかを問うときがやって来た」と断言していた。
もちろん、まだそんな時期ではなかった。当時は、景気回復を加速させて危機の長期的なダメージを抑制すべく、もっと積極的に行動するべきだった。必要なのは金融・財政の景気刺激策の段階的解除ではなく、刺激策の強化だった。景気回復が弱々しいのは、この失敗による面が大きい。
だが、今は確かに状況が違うように見える。フランスのパリに本部を構える経済協力開発機構(OECD)のチーフエコノミスト、キャサリン・マン氏が述べているように、状況は「良くなってはいるが、十分ではない」。先進国のクラブであるOECDは、大半の景気予測担当者と同様に、今年と来年は世界経済の成長率が緩やかに上昇すると見込んでいる。