◇関西大学教育後援会創立70周年アイスショー◇7月2日◇関西大学たかつきアイスアリーナ◇
アイスショー終演後、囲みインタビューが行なわれた。以下は宮原知子(文2)と濱田美栄コーチのインタビュー文字起こし全文。
【宮原知子インタビュー】
――今日はけがから復帰されて初めてのアイスショー、人前で滑る日だったと思いますが、改めて感想を聞かせてください。
宮原 気持ち的にはあまり緊張しなかったんですけど、思った以上に足が震えちゃって。ジャンプはまあ練習通りっちゃ練習通りなんですけど。もっといい演技がお客さんに見せられたらよかったなって思ったんですけど、生演奏で、すごく楽しんで滑ることができました。
――3回転ジャンプも跳ぼうとされていましたけど、今、ジャンプの練習の状況ってどういうところまできているか教えてください。
宮原 トリプルトーループの練習は数を限定して練習しています。他のジャンプに関してはシーズン中の時ほど沢山はしていないんですけど、一応全種類練習していて、先週くらいからやっと、ちょっと感覚が戻ってきたかなっていう感じです。
――今日、人前で滑ってみて心機一転、気持ちの変化はありましたか?
宮原 緊張とか、しっかり滑らないとっていう気持ちより、今までで一番楽しいっていう気持ちが強かったかなと思います。
――それはやっぱりリハビリで離れた期間のこととか思い出したりしましたか?
宮原 演技中はもう演技に集中していたんですけど、今日やっと楽しく、足のことを何も考えずに思い切り滑ることができたのは、リハビリをしてきて頑張ってここまで来られたんだなっていう気持ち。あと、助けてくださった先生たちとか、家族のみんなに感謝したいなって気持ちで、色んな気持ちで複雑な感じです。
――今日は周りの、本田選手とか白岩選手とかから声をかけられたりしましたか?
宮原 終わったあとはみんなに「お疲れ!」って言われて、あとはフィナーレとかオープニングとか、楽しくみんなで滑りました。
――今シーズンは、宮原さんにとっても勝負のシーズンになると思うんですけど、そこに向けて今、どういう状況というか、練習はどうなんでしょうか?あとは目標も聞かせていただいていいですか?
宮原 今は、まだショートプログラム(SP)はできていなくて、フリープログラムしか練習はしていないんですけど、徐々に体力も戻ってきつつはあるので。まだまだなんですけど、無理をせずに、それでもしっかり練習できるように、これからトレーニングとかも頑張っていきたいと思っていて、今シーズン、オリンピックには行きたいなと思っているので、全日本までにしっかり調整できたらいいなと思います。
――フリーのプログラムを教えてください。
宮原 フリーは『蝶々夫人』です。
――選ばれた経緯は?
宮原 フリーの振り付けがトム・ディクソン先生なんですけど、もうずっと『蝶々夫人』を編集して、ずっと考えていてくださっていたみたいで、すぐに連絡がきて、最初からこの曲、『蝶々夫人』に決まっていました。
――自分の中ではどういう曲にしたいとか、イメージはありますか?
宮原 すごく有名な曲で、全員が物語を知っていて、沢山の選手が演技しているプログラム、曲なので、自分らしい「宮原知子の蝶々夫」って言われるような演技ができたらいいなと思っています。
――氷に乗って、お客さんから拍手をもらうのは本当に久しぶりなことだと思うんですけど、ここまでの道のりっていうのは長かったのか、短かったのか、どんな風に考えたのか、何かありましたら教えてください。
宮原 まだまだ感覚の面でも戻ってきているわけではないので、まだ道のりの途中というか、そういう気持ちではあるんですけど、世界選手権があった時期からリハビリで1カ月休んでいた間は、今考えると長かったのかなという感じはあります。
――氷に乗り始めてからというのはむしろ、長かったというのとは気持ちの面では違いましたか?
宮原 リハビリで1カ月休んでから、初めて氷に乗った時は、なんかどんな感じなのかなっていう不安もあったんですけど、滑り始めてから今日まではあっという間な感じで、こうして試合もあっという間に来ちゃうのかなとかちょっと思ったりもして、でも、徐々に調子も上がってくると思うので、あまり焦らず頑張りたいと思います。
――むしろオリンピックシーズンだからこそ気持ちの面でも違うように構えているとか、オリンピックシーズンだからこその気持ちの変化とかはありましたか?
宮原 オリンピックシーズンっていうよりは、けがで1カ月だけですけど初めて全く氷に乗らない期間があって、初めての経験をした上での新しいシーズンなので、そういう意味で自分の中でちょっと特別な感じはあるんですけど、試合に臨む気持ちは毎回、今までのシーズンと変わらず、1回1回大切にしたいなと思っています。
――先ほど、全日本まで調整していきたいっていう話があったんですけど、そうしますとグランプリシリーズだったり、グランプリファイナル、チャレンジャーシリーズなどは調整の一環というか、勝ちにいくというよりは調整の一環のように捉えていますか?
宮原 やっぱり毎回いい演技がしたくて、毎回結果が出せればとは思っているんですけど、自分のスケートの調子がどこまで上げられるかっていうのも、まだ全然分からないので、気持ちとしてはいい演技がしたいって思っているんですけど、あんまり力まずに、自分ができることをしっかりやりきることだけ集中したいと思います。
――1月のアイスショーからのことを細かく教えてください。
宮原 1月のアイスショーが終わってから、2週間くらい、一度リハビリだけの期間を作って、四大陸(選手権大会)までにどこまで痛みがなくなるか分からなかったんですけど、一応頑張ってみようということで。徐々に強度を上げながらやっていったんですけど、世界選手権の2週間前くらいにまたやっぱり痛くなって。もっと本当は練習量を上げたかったんですけど、痛いから躊躇(ちゅうちょ)してしまうところとかもあって、それでたとえ世界選手権まで頑張ったとしても、もういい演技はできないなっていうことで、先生たちとも相談して、3月の終わりくらいからリハビリに。東京のJISS(国立スポーツ科学センター)のほうに行って、1カ月くらい、4月いっぱいリハビリして、5月から滑り始めたっていう感じです。
――1カ月間東京に?
宮原 はい。泊りがけで週末だけは帰ってきていたんですけど、平日はずっと毎日リハビリでした。
――その時は氷には乗っていない?
宮原 はい。その時は1カ月くらい全く乗っていないです。
――実際乗った時は、ジャンプとか感覚っていうのはどういう感じでしたか?
宮原 もっと足がふわふわとかフラフラするのかなと思ったんですけど、思ったよりスケーティングはうまくスムーズに滑ることができて、ジャンプはそこから、氷に乗ってから2~3週間後くらいから始めたんですけど、徐々に、徐々に、という感じでまだ感覚が完全には戻りきっていないので、もっといい感じで跳べるようになったらいいなと思っています。
――SPは今後、どんな感じで作っていく予定ですか?
宮原 SPは明日(7月3日)からカナダに行くんですけど、そこで作ります。
【濱田コーチインタビュー】
――今日は関西大学のアイスショーでしたけど、先生から見た生徒さんたちのご感想を。
濱田コーチ 私はもう小っちゃい子たちのことが気になって、グループが。上の子たちにはゆっくりあれして(見て)あげられなかったんですけど、新しいプログラムをした子もいて、非常にショーとしては立派に終わったと思っています。
――今日は宮原選手がけがをしてから初めて人前で滑る日だったんですけど、どんな思いでご覧になられましたか?
濱田コーチ もう今痛くなくて、やっとジャンプをし始めたところで、1本1本はもうかなり降りているんですけど、続けるとまだ慣れていないので、久しぶりですごい緊張したって言っていました。もう何カ月ぶり…5カ月ぶりに人前に出たので、いつになく緊張したと言っていましたが、本当に最後かなり(けがの)原因が分からなくて、苦しんでいたので、今はもう痛みがなく滑れるから、すごく楽しかったと言っていました。
――今日の出来というか、トリプル(ジャンプ)もやろうとされていましたけど。
濱田コーチ 今日は練習ほどうまくはいかなかったんだけど、いい経験というか、ちょっと勘を直すのにあと1カ月くらいはかかると思うんですけど、いいきっかけにはなったんじゃないかなと思います。
――先生はこの5カ月間、ずっと宮原さんをご覧になられていて、どういう思いで?
濱田コーチ 悪い時も別にすねることなく、諦めることもなく、治療に専念していました。初めは原因が分からなかったので、ちょっと足踏みをしてしまったんですけど、分かってからはお医者さんの言う通りにリハビリもきっちりやってきたので、あと1か所不安な部分があるのでそれをこの2カ月間気をつけながら、10月くらいから追い込んでいければいいと思っています。
――今シーズン、先生にとっても生徒さんたちにとってもオリンピックっていう大きなものが待っていると思うんですけど、そこに向けて先生としては?
濱田コーチ プログラムもみんなそれぞれ出来上がってきて、知子だけが遅れていて、明日からトロントに行くんですけど、それぞれ特徴のあるいいプログラムができるので、これでコンディショニングをうまく持っていけるようにしていけばいいかなと思っています。
――先生は現役の時オリンピックに出られていなくて、コーチとしてオリンピック選手を輩出したら先生にとっても初めてのオリンピックということになりますが。
濱田コーチ よくオリンピックオリンピック言われるんだけど、私はオリンピックのために教えているわけではないので、やっぱり好きでここまでやってきたので、それだけがスケートだとは思っていなくて、もちろん子どもたちが行きたいならその願いを叶えてやりたいとはすごく思っているけど、私自身は伝えたいこともあってここまでやってきたので、オリンピックだから特別こうしようということはありません。
――宮原さんの一か所不安があるというのは?
濱田コーチ 疲労骨折の場所はほとんど完治なんですけど、一か所まだ少し炎症が残っている場所があるので、もうあと1カ月、2カ月は慎重に、滑ってもいいけれどもやりすぎないように慎重にリハビリもしながら滑っていくということになっています。
――炎症箇所っていうのは?
濱田コーチ 大腿四頭筋の付け根のところに、そんなに大事にはならないと言われていますけど、完全にMRIでマークが消えたわけではないので、そこを慎重にしていこうと。でもいいように向かっているので、少しずつ練習量を上げていってもいいということを言われています。
――宮原選手は、けがを経て逆に成長したというか、その間トレーニングもしていたと思うんですけど。
濱田コーチ 自分でだいぶ意見も言うようになったし、時間があったので次のシーズンの曲とか、コスチュームとかは自分でデザインして。またJISSで色んな他のスポーツの人に刺激を受けて、励まされたり励ましたりで、すごく人としても成長しました。多分、インタビューも、声が大きかったんじゃないかなと思うんですけど。
――(笑)。ちょっとふっくらしたというか、力強さというか。
濱田コーチ 栄養はすごく取らせるということが回復に大事なことだったので、栄養士さんにもお願いをして、しっかりした体をカルシウム、ビタミンとかそういうものをふんだんに使っていて、元々どうしてもそんなに太るタイプではないので、練習を始めるとやっぱり痩せてくるので、それに注意しています。あまり痩せすぎないようにこの2カ月間注意したほうがいいということだったので。
――栄養士はいつからつけられたんですか?
濱田コーチ 今月。JISSにずっといたので、JISSのほうは栄養がちゃんと管理できているので、こっちに帰ってきてから栄養士さんに。
――宮原さんはすごく練習量が豊富なタイプだと思うんですけど、今はその練習豊富な頃と比べてどのくらい?
濱田コーチ 3分の1以下ですかね。少しずつ、徐々に強度を上げていかないといけないので、焦らないで少しずつ足してはいっています。
――10月からの追い込みということで。
濱田コーチ そうです。そのためにも今こじらせたくないので慎重にしています。
――そこをしっかりできれば、というところですか?
濱田コーチ そこがクリアできたらあとは見えてくると思いますけど、このあとの2カ月っていうのはうまく栄養もトレーニングもバランスよくするのが一番大事なんで、(練習を)やる子なのでやらないようにゆっくりスタートさせるようにしています。
――昨シーズン前は吉田都さん(のレッスン)とか(ありましたが)、そういうことは?
濱田コーチ 都さんにも励ましていただいて。
――リンク外の練習は?
濱田コーチ もちろんバレエもしていますし、ボイストレーニングに行ったとか行かないとか言ってましたけど(笑)。JISSの間、東京で。前に声が出ないので。
――それは本人が?
濱田コーチ 本人が。
――その効果は?
濱田コーチ 私あんまりレッスン中しゃべらないんで(分かりません)。
――コスチュームのデザインって初めてですか?
濱田コーチ そうです。自分からこういうのっていうのもそうだし、今まで私が割と間に入って色んなことをしてきたんだけど、今回はSPもローリーと自分で時間があって、JISSにいた時からやり取りをしていたようです。
――本田真凜さんですが、フリーのトゥーランドットは先生が?
濱田コーチ 私とデイヴィッド(・ウイルソン)と話をして。
――その狙いとしては?狙いというか意図としては?
濱田コーチ やっぱりそれこそオリンピックシーズンというのもあって、本当はもっとクラシックを滑りたいというのを本人は言っていた時もあったんですけど、ロシア勢っていうのはしっかりクラシックバレエをやって、基本がしっかりクラシックからくるので、その人たちと対抗するにはやはり東洋人的なものを出したほうがいいということでトゥーランドットにしました。
――デイヴィッド・ウイルソン先生を選ばれたっていうのは?
濱田コーチ ジェフリー・バトルがよくここに来てくれるんだけど、ジェフが誰がいいかなって言ったら自分も振り付け師だけどすごくいいんじゃないかなということで。あんまり難しすぎると、細かすぎると彼女のよさが出ないので、デイヴィッドが一番いいかなと私も思ったので。
――先生からご覧になって、デイヴィッドさんと一緒にやっている中で、真凜選手に変化は?
濱田コーチ 本当にすごい頑張りました。
――本田選手なんですけど、振り付けも終わって技術的にですね、スピンやステップ、ジャンプといったところをどう伸ばしていきたいというのはありますか?
濱田コーチ あの子細かい取りこぼしが多いので。それをちゃんと時間内で、曲に合わせてレベルの取りこぼしがないように今、もう1回、間の取り方とかをチェックしているところです。
――全体的な技のというイメージで?
濱田コーチ いえ、レベルというのはスピンが8回回らないと(いけないのに)7回だったとか、割と雑にするのでそういうところを曲に合わせてレベルを取れるような練習に今入っています。