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すでに米国の学校はグーグルに支配されてしまった!|裏事情と懸念の声を紹介

From The New York Times (USA) ニューヨーク・タイムズ(米国)

PHOTO: WHITTEN SABBATINI / THE NEW YORK TIMES

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米国の公立校にはいま「グーグル化」の波が押し寄せている。3000万人以上もの小中学生(これは全米の半数以上にあたる)がすでにGメールやグーグル・ドキュメントを使い、学校が購入するモバイル端末に関してもクロームブックが過半数を占めているのだ。

たとえば、シカゴの公立小学校の6年生はグーグルのノートPC「クロームブック」を1人1台持って着席する。PCを立ち上げると「グーグル・クラスルーム」というアプリを開き、先生が出した課題を確認。グーグル・ドキュメント上で作文を書きはじめる、といった具合だ。 

グーグルがここまで支持されているのは、クロームブックが安価なことに加え、無料のアプリが充実しているためだ。いまや教育の現場では、アップルやマイクロソフトに大差をつけている。

グーグルが学校に目をつけたワケ


そもそものきっかけは、企業向けに売られていたGメールとドキュメントのパッケージをアリゾナ州立大学が2006年に導入したことだった。それによって同大学が大幅な経費削減を実現したという話が広がり、他の大学も後に続いた。この経験をもとに、グーグルは公立の小中学校にも営業をかけるようになったのだ。

グーグルは教師たちを味方につけることも忘れなかった。教師たちがアプリの活用法について情報交換するためのオンラインコミュニティを立ち上げ、さらに2014年5月には「クラスルーム」のベータテストに参加するボランティアをオンライン上で募集した。すると、全世界から10万人以上の応募が殺到。その3ヵ月後には「クラスルーム」がリリースされた。

一方、実は「クロームブック」はビジネスパーソン向けに開発された商品だった。だが、ネットがない環境では使える機能が限定されることもあり、人気がなかった。そのときグーグルが目をつけたのが「学校」だった。生徒たちがネット環境のある学校で使うぶんには、安くて使い勝手がよかったのだ。

メリットは数字にも現れており、米国で3番目に生徒数が多い学区であるシカゴ・パブリック・スクールズの広報担当によると、グーグルのアプリを使いはじめたことで年間のコストを160万ドル(約1億8000万円)も節約できたという。

その反面、“教室のグーグル化”を不安視する声も少なくない。グーグルアプリを使う授業ではチームワークや問題解決のスキルが重視され、学術的な知識を教えることが軽視される傾向がある。また、生徒の情報がどのように使われるのかも未知数だ。さらには、「未来の顧客」を育てているといった声もある。

グーグルはこうした不安の声を払拭して、“教育の未来”を切り開けるのだろうか。

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