着工から100年以上がたった現在でも未完成の教会、バルセロナのサグラダ・ファミリア。その設計者として有名なのが、カタルーニャ地方出身の建築家、アントニ・ガウディである。
サグラダ・ファミリアがガウディの代表作であることは間違いないが、それが「唯一の」作品ではない。バルセロナにはガウディの設計による建築が複数残されており、「アントニ・ガウディの作品群」として、ユネスコの世界文化遺産にも登録されている。
そして、登録されている中で唯一の未公開作品だった「カサ・ビセンス」が、この秋から公開されることになったのだ。
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imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
個人宅から美術館へ
1883〜1885年に建てられた「カサ・ビセンス」(ビセンス邸)は、ガウディが31歳の時点で最初にデザインした家である。
元々はタイル製作工場の社長であったビセンス氏の夏の別荘として依頼を受け、設計されたものだ。ビセンス氏の死後は買い取られて個人の住居として使用され、一般には公開されていなかった。
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
しかし、2014年にモラ・バンクという銀行がこの家を購入した。
2年間の大掛かりな修復を経て、来たる10月に美術館としてオープンすることになったのである。修復作業は2015年4月から、マルティネス・ラペーニャ氏、トレス氏、ガラチア氏の3人の建築家を中心に行われた。
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
新しい美術館では、ガウディのデザインが常設展と期間展とで展示される予定だ。
建築様式と歴史的意義
建物それ自体も、初期の「ネオ・ムデハル様式」を体現している。「ムデハル様式」とは、レコンキスタ後にもイベリア半島に残ったイスラム教の様式と、キリスト教の様式が融合した建築スタイルだ。
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
カサ・ビセンスは、オリエンタルな風味をもつだけではなく、革新的かつ独創的な作品であり、それまでカタルーニャ地方で建てられたどんな建物とも異なっていた。そのため、19世紀末にヨーロッパ全土で広まっていたアール・ヌーヴォー(モダニズム)の、建築分野における初期の代表作と目される。
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
建物の構造
ガウディはカサ・ビセンスを4層の建物として設計した。地階は倉庫、1階は居間、食堂と台所、2階には寝室、最上階は使用人のスペースだ。
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
カサ・ビセンスには、最初は3つの外面しかなかった。北東は隣の建物とつながっていたためだ。南東の外面が正面となり、建物を取り囲む広大な庭に向けて開いていた。そのため日当たりがよく、快適な気候が一年を通して保証されていたのである。
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
ガウディを象徴する作品
ガウディは当時お洒落とみなされていた華やかな世界を、非常に個人的な方法で再現した。
カサ・ビセンスの建物自体はカタルーニャの伝統的な様式で建てられているが、その様式はガウディが独特の方法で解釈したものだ。そして、装飾的で象徴的な要素が、これまた独特な方法で組み入れられている。
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
カサ・ビセンスを全体として眺めれば、後にガウディの作品の特徴となる「創造的な自由」を、予告していることがわかるだろう。
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
imege credit: Pol Viladoms / Casa Vicens, Barcelona 2017.
via: Colossal, Twisted Sifter など / translated by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ぶっちゃけ、サグラダみたいな荘厳さが全くねぇな
2. 匿名処理班
こりゃすげな
これを独り占めして見せない奴は人類の敵だな