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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第四章:回復術士は魔王を超える

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第二話:回復術士は純愛を楽しむ

 ブラニッカを出た俺たちは、イヴたち黒翼族たちが崇める神鳥を手に入れるために、神鳥を祭る集落に向かっていた。

 今は日が暮れてきたので、森の中で野営の準備をしていた。
 セツナやフレイアたちが、イヴとノルン姫が生まれ変わったエレンの二人にいろいろと教えながらテントを設置している。

 その間に俺は夕食を作っていた。
 ブラニッカでは大量のスパイスや調味料を買い込んでいる。
 こういったものは旅の食事にいろどりを与えてくれる。

 今日は赤く旨味たっぷりで辛いスープを作る。
 森で採取した山菜やキノコが入ったスープにたくさんのスパイスと干し肉をぶち込む。

 干し肉は今まで旅をしながら狩ってきた魔物たちの肉だ。それもすべて適応因子が含まれているもの。

 適応因子が含まれている魔物の肉は、ジャーキーに加工して多めに持ち歩いている。
 仲間が増えたときに、すぐに食べさせて素質値を上昇させるための工夫だ。今日はイヴとエレンに食べさせるために使う。

「さてと、干し肉はいい出汁がでるからな。これはうまくなるぞ」

 ぐつぐつと赤いスープが煮立ってきている。
 そこにバターを投入する。
 バターを入れると、脂肪の膜が舌を包んで辛くしても舌が痛くならず、美味しく食べられる。

「ケアルガ様、テントの設置が終わった」
「お疲れ、セツナ。こっちももうすぐ終わるよ」
「すごく、美味しそうな匂い」
「きっとうまくできているはずさ」

 味が濃くて辛い料理の利点は何をどれだけぶちこんでもそれなりに味がまとまることだ。
 健康のために灰汁が強い山菜もいれているが、無理なく食べられるだろう。
 セツナの後ろにはエレンがいた。かなりげっそりしている。

「……やっぱりエレンには旅がきついか」
「いえ、大丈夫ですケアルガ兄様。ちょっと休憩すれば」

 エレンがふらふらになりながら強がる。
 ノルン姫だったころから頭脳労働専門で、旅も最上級の馬車の中で優雅にしてきた彼女にとって、ラプトルに乗って走るだけでも疲労になる。

「無理はしなくていい。少しずつ慣れていこう。旅を続ければ自然に体力がついてくるから」
「はい、がんばります! ケアルガ兄様に迷惑はかけられません!」

 健気なことだ。
 フレイアのときも感じたが、ノルンですら記憶をリセットして、ちょっぴり洗脳するだけで随分と可愛くなる。

 根はそこまで腐っていなかったのだろう。
 どうすれば、フレア王女とノルン姫のような絶望的な性格に育てられるのだろうか……。

 一度親の顔を見てみたい。いや見たことがあったか。
 まあ、いつかもう一度、見に行くけどな。ジオラル王国の王。
 彼も俺の復讐の対象者だ。
 あいつがすべての元凶だから生かしておけない。
 そうだ、あいつは国民たちに投石させて殺させよう。王としての尊厳を打ち砕いてさらし者にしてやる。
 うん、いい趣向だ。

「さて、ごはんができた。みんなを呼んできてくれ」
「ん。わかった。エレン、ついてきて」
「はい、セツナ」

 セツナは微妙にお姉さん風を吹かせながらエレンの面倒を見ていた。
 元来面倒見がいい性格だし、たぶん妹分が欲しかったのだろう。それにもう本当の姉妹になったしな。とは言っても竿姉妹だが。俺の所有物おもちゃたちが仲がいいのは大歓迎だ。

 さて、今日はセツナには若干肉を多めに配膳しよう。
 しばらくすると、みんなが集まってきた。
 ……ふと、気配を感じる。

「みんな、すまない。夕食を少し遅らせる。ちょっと一品増やせそうだ」

 技能としてセットしていた、【気配感知】が魔物の気配を掴んだ。
 視界の悪い森の中では、超一流のレンジャーから【模倣ヒール】したこの技能を割り当てることにしていたが、それが役にたった。

 初めて感じる魔物の気配。
 素質値を上昇させるチャンスを逃しはしない。
 それに……。

「イヴ、ついてきてくれ。魔物を狩りにいく。おまえの力を見たい」

 一度イヴの能力を確認しておこう。
【翡翠眼】で能力は見抜いているが、それを使いこなせるかは別問題だ。
 イヴがどこまで戦えるかを知っておきたい。

「うん、いいよ。ただのお荷物じゃないってこと、ケアルガに見せてあげる」

 どや顔をして、ローブに収めていた黒い翼を広げる。
 さて、その自信がはったりでないかを見せてもらおうか。

 ◇

 俺は森の中を疾走し、イヴはその翼で羽ばたく。
 便利そうだ。俺も空を飛びたいが、それは技能によるものではないので真似しきれない。【改良ヒール】で姿を変えるとしても限度があるのだ。

「イヴ、そこから見えるか?」
「大丈夫、見えてるよ。オオトカゲの魔物だね」

 イヴは目がいいらしい。
 百メートルほど先の魔物をきっちりと目で捉えている。
 イヴの技能を思い出す。
 イヴの技能は四つ。

・暗黒魔術Lv2
・神聖魔術Lv2
・黒翼武闘Lv2
・眷属召喚Lv1

 光と闇という超レアな二つの属性を使いこなし、飛行を取り入れた独特の武術を持つ。さらには切り札にして死しんだ黒翼族の魂を翼に宿し、顕現する召喚魔術をもっている。
 恵まれた過ぎている技能だ。しかも合計素質値は六百を超えている。これはすべての勇者を凌駕していた。

 光は直接的な攻撃力に優れる。今からイヴが使うのは光の魔術だろう。
 さて、イヴはその力をどう使うか。

「わたしの力をよく見ててね。不意打ちじゃなければ、誰にも後れを取らないんだから!」

 上空で静止して、まっすぐに手をトカゲがいる方角に向ける。
 白い光の弾が出来た。

「いっけえええ、【光の矢】」

 イヴが叫ぶと、白い球から白い閃光が放たれた。
 光の速さで一直線に伸びる。木々を貫き、地面に激突し轟音が響く。
 恐ろしい魔術だ。

 なにせ、光の速さで弾道は直進。威力も十分。
 敵に回したくない、回避が極めて難しい、最強クラスの攻撃魔術と言えるだろう。

【神聖魔術】はしっかりと、【模倣ヒール】させてもらっている。これは、便利に使わせてもらおう。

「すごいな、イヴ」
「でしょ?」
「まあ、使い手がへぼすぎて魔法が泣いているが。どうやったら、どまっすぐ進む魔術を外せるんだ? 照準の時点でおかしいぞ」
「うっ、言わないでよ! 次こそ当てるから!」

 反則じみたほど強力な魔術も、使い手がへぼだとあまり意味がない。

 オオトカゲから五メートルほどずれた地点に着弾していた。
 オオトカゲは静止していた。つまりは初めから狙いがずれてる。
 イヴの魔力量や攻撃力は規格外だが、制御がお粗末すぎる。
 イヴは顔を真っ赤にして、連射する。
 しかし、焦れば焦るほど照準はぶれる。
 しまいには、魔力を使い果たした。

「ひきゅー」

 可愛い声をあげて、墜落したので受け止める。
 かなり深刻な魔力欠乏症だ。

 俺は苦笑し、魔力回復ポーションを口に含んで、イヴに口づけして流し込む。
 普通に口にいれただけでは飲み込んでくれない。かなりまずい状況なので緊急措置だ。
 イヴの虚ろな目で光が戻って来る。

「なっ、なにするんだよ!」

 突き飛ばされた。

「どこかの誰かが、魔力欠乏症なんて駆け出しのへぼしかかからない醜態をさらしたから、魔力回復ポーションを飲ましてやったんだ。あのままだと、脳に障害が残りかねなかったぞ?」
「うっ、その、突き飛ばしてごめん」

 イヴが顔を赤くして顔を背けて、指で唇をなぞる。
 ふむ、意外に好感度が稼げている。

 これは憎からず思っている相手に対してやる仕草だ。嫌っていればもっと拒否反応が大きい。……そろそろ次のステップに進んでもいいかもしれない。
 イヴも俺の性交を覗いて自分を慰めるのも飽きてきただろう。

「まあ、なにはともあれオオトカゲは仕留めたな」
「えっ、そうなの!? ごほんっ、ねっ、狙い通りだよ!」

 一瞬、目を輝やかせてから必死に取り繕い始めた。
 実に可哀そうなやつだ。
 でも、楽しい。ああそうか、俺はイヴとのやり取りを楽しんでいるんだ。

 イヴをものにするだけなら、もっと簡単にできるのに回りくどく親交を深めたり、性に興味を持たせて、自然な流れで自分から俺を求めるように仕組んでいるのは一種の遊びだ。

 なんというか、【改良ヒール】や薬で頭をぱっぱらぱーにして、洗脳するのもあれはあれで楽しいのだけど味気ないし、そうしてしまうと反応が一辺倒になる。

 フレイアやエレンは、実に可愛い従順なペットであり俺を楽しませてくれている。だが、それだけでは飽きてしまう。
 だからセツナやイヴには一切、【改良ヒール】や薬で記憶操作や洗脳は行わない。多少手間をかけてでも自分の意志で俺に惚れてもらうように仕向けている。
 この感情をなんと言えばいいのだろうか……ちょうどいい言葉があった。

 そうだ、これは純愛というんだ。
 俺はいま純愛を楽しんでいる。

「そうか、これで狙い通りなのか。オオトカゲは余波で吹き飛んだ土砂に生き埋めにされただけで命中していないよ。イヴ、フレイアに弟子入りしろ。あれは魔術に関しては天才だ。今のイヴは盛大に才能の無駄遣いをしている。少しは制御を覚えろ」
「ううう、ケアルガの意地悪」

 微妙にすねている。
 そんなイヴが可愛くて頭を撫でてやる。
 すると、一瞬嬉しそうにしたが、次の瞬間には恥ずかしさが勝ったのか手をはねのけられらた。

 これはいわゆるツンデレというやつだろう。
 窒息死したオオトカゲを回収してみんなのもとに戻る。

 オオトカゲの適応因子は速度の素質値を上昇させる効果がある。
 オオトカゲの尻尾は柔らかくて旨味が強い。輪切りにして串焼きにしてみんなに振る舞おう。ごちそうだ。みんな喜んでくれるだろう。

 ◇

 干し肉と山菜とキノコの旨辛スープも、オオトカゲの尻尾の串焼きも非常に美味しくできた。

 みんな、いつも以上においしそうに食べていた。
 食事が始まる前は疲れて何も食べられなさそうなエレンも、スパイスの香りに胃を刺激されてお代わりまでしてくれた。

 旅に置いて、美味しい料理を作れるというのは案外重要だ。まずいものしか食べないと、心が荒み、どんどん険悪になっていく。
 そして今は……。

「ケアルガ様ぁ、ケアルガ様ぁ」

 たっぷり、フレイアを可愛がっていた。
 今までのように毎日全員を可愛がってやるのはさすがに体力が持たないので、交代制にしている。

 今日はフレイアの出番だ。
 犬フレアにしたときに変な癖を覚えたのか四つん這いになって激しくされるのが気にいっている。
 さらにマゾになりつつあった。
 まあ、この女を叩くのはわりと好きなので、その趣味に付き合ってやる。
 これはこれで楽しい。
 お望み通り、いじめ抜いてやろう。

「やっぱり今日も来たか」

 人数が多くなって増やしたのはラプトルだけじゃない。
 テントも二つにした。
 分け方は単純、今日俺が可愛がる女と俺が過ごすテントと、その他のメンバーが過ごすテント。

 今、俺がいるテントは一言で言えば、やりテントだ。
 そのテントと入口が少し開かれて、イヴが覗いていた。
 いつものように俺をおかずにして自分を慰めているのだろう。
 ……いつもなら、好きにさせるが昼の一件でだいぶ俺に好意をもってくれていると感じた。

 だから、今日は一歩踏み込もう。
 フレイアを十分に満足させてやると。
 素早く入り口に向かい、覗き魔の首根っこを掴んで、テントに引っ張り込む。

「えっ、けっ、けあるが、その、これ、ちがって、ぜんぜん、そんな、ちがって」

 イヴがしどろもどろになって弁明するが、まあ手が濡れているし、下着はずれているし、もう何を言っても説得力がない。

「外にいたら虫に刺されるだろ。見るならここで見ておけ」
「いや、その、こんなの絶対変だよ」
「なにを今更、いつもイヴは覗いて、自分を慰めていたじゃないか。今日もいつものようにすればいいさ」

 イヴの顔が真っ赤になり、黒い翼がぱふっと広がる。
 ……この子はあそこまで派手にやって今まで本当にばれていないと思っていたのか。
 口には出さないが、セツナもフレイアもとっくに気付いていた。

「なっ、なんのこと」
「俺が気付かないわけないだろ。この、むっつりすけべ」
「うううう、ううううう、うわあああああんん」

 あっ、ついには泣き出した。
 泣きたくもなるよな。
 でも、少し可愛い。

「こういうことに興味があるのは仕方ない。責めるつもりはないよ。そうだ、一緒に参加するか?」
「けっ、結構だよ!」

 まだ、それは早かったか。

「なら、俺が手伝ってやるよ」
「えっ」

 イヴの体をまさぐる。
 抵抗はしなかった。

「性交はしない。自分で触るのはいつもやってるだろ? それが俺の手になるだけだ。これもいつもと一緒で、ただの自慰だな」
「いつも、と、一緒?」
「そう一緒。ただ気持ちよくするのが俺ってだけだ。それならいいだろ」
「……そっ、それならいいかも。絶対、エッチなことやっちゃだめだからね」
「うん、約束するよ」

 まあ、別にアレを使わなくてもエッチなことには変わらないんだけど、いろいろと混乱してくれている。

 今日は本当に最後までやらない。手だけで満足しよう。
 ほう、イヴは着やせするタイプなのか、それに肌のなめらかさもすばらしい。

 大事なのは既成事実を作ることだ。
 次からは、正々堂々、俺たちの行為を同じテントで眺めて、そのあと俺がイヴを慰めてやるのが日課になるだろう。特等席でいろいろと見せてやるのもいい。

 そして少しずつエスカレートさせていこう。次は舌でも使おうか。
 そうなれば、いずれ手だけではもどかしくなって自分から求めてくる。
 きっと、イヴのことだ。我慢できなくなったからなんて恥ずかしくて言えないから、俺のことが好きなったから抱いてだとか、もっともらしいことを言って、自分でもその言葉を信じてしまうだろう。そうすれば恋人の出来上がり。

 楽しみだな。本当にイヴはからかいがいがある。
 さっさと食べてしまいたいが我慢、我慢。
 我慢するほど美味しくなるのだ。

「それに、これは純愛だからな」

 ああ、純愛。
 なんと美しい響きなのだろうか。
 まっとうな愛というのもなかなかいいものだと、イヴを可愛がりながらそんなことを考えていた。 
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