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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第三章:回復術士は黒の世界で宝石を見つける

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第十七話:回復術士は【神装宝具】と契約する

「セツナ、フレイア、イヴ。俺は奥の部屋で精神集中をするから、絶対に入ってくるな」
「ん。わかった。ちゃんと待ってる」

 ベッドに裸で横たわり、息を荒くしたセツナが上気した顔で返事をした。
 ついさきほどまで、セツナとフレイアをたっぷり可愛がっていた。
 すっきりしたおかげで、名案が浮かんだ。悩んだときにはやってみる。これが一番だ。

 俺は意気揚々と奥の部屋に入る。
 そして、精神を高めていた。
 これから【神造宝具】と契約をする。
【剣】の勇者が死亡したことで【神作宝具】は本来の姿である赤く丸い宝石に戻っている。
 このままでは武器として使えない。勇者が【契約】することで【神造宝具】は持ち主の心を読み取り、望むかたちとなる。
【契約】するには素手で宝石を握るだけでいい。

 例えば、【剣】の勇者は豪奢な装飾剣、神剣ラグナロクを手にした。
 あいつの派手好きな性格を反映されて、豪華な目立つ装飾があしらわれ、さらにただの切れ味がするどい剣ではなく折れず曲がらず刃こぼれをせずに、概念的な斬撃を可能とする理想の剣として顕現した。

 例えば、【砲】の勇者は武骨だが機能美に満ちた銀の大砲、神砲タスラムを手にした。
 べテランらしい機能重視の考え方が見事に反映されている。その最大の特徴は無限の弾丸の供給。

 例えば、【術】の勇者は世界樹の魔杖、神杖ヴァルナガンド。
 彼女が好む雅で品がある杖。
 本来、杖には、材質によって向いている属性とそうでない属性が存在している。しかしヴァナルガンドは四大属性使いのフレアの力を活かすためにすべての属性との相性が最高。なおかつ魔力収集力、演算効率も非常に優れている。

【神装宝具】は担い手が望む武器となるのだ。
 逆に言ってしまえば、間違った望みを持ってしまえばせっかくの【神造宝具】が無駄になってしまうし、死なない限り契約は解除できない。
 だから、素手で触らないようにして持ち歩き、俺にとっての最高の武器のイメージが固まるまで待った。

「本当はもう少し、じっくり考えたかったんだがな」

 そうも言っていられない事情ができた。
【鷹眼】。あの男は危険だ。
 三日後の襲撃までに【神装宝具】は必ず手にしなければならない。
 俺の望む武器はだいぶイメージは固まった。

「俺の望み……それは、かつて俺を蔑んだ奴らへの復讐。そのために必要なものは強さだ。俺の【回復ヒール】の力を強化することで俺だけの強さを得る。さらに、けっして死なないこと。死ねば、復讐できない。復讐を終えずに死んでたまるか」

 まだまだ、俺の復讐は終わっていない。
 強さがいる。そして、生き延びる力もほしい。

 攻撃力は【改悪ヒール】のおかげで十分あるが、この身の強度はさして高くない。

 どんな怪我も病も【回復ヒール】できる俺とはいえ、不意打ちを食らえば、最悪【回復ヒール】することすらできないほど肉体を破壊される恐れがある。その欠点を解消したい。

 蹂躙したい、死にたくない。
 強く強く祈る。
 その思いを叶えるための、具体的な形状をイメージする。
 回復術士らしからぬ回復術士である俺にふさわしい武器を。

 脳裏にちゃんと浮かんだ。
 俺の新たな武器のイメージが。

「さあ、契約だ」

 思いを込めて、手袋を外して血の色をした宝石を握りしめる。
 熱と魔力が痛いほど伝わってくる。
 それだけじゃない。
 魂に何かがささやいてくる。
 ……さすがは【神装宝具】。意思を持つ武器か。面白い。

『我を求めるか、【癒】の勇者よ』
「ああ、お前のすべてをもらう。俺のために尽くせ」

 魂に力を入れる。
 意思の力に意思で答える。
 なんて存在の強さだ。びりびり震える。

『勇者である、お主に問う。世界を救う覚悟があるか』

 実にらしい質問だ。
 俺は獰猛な笑みを浮かべる。
 世界を救う覚悟か……そんなものあるに決まっているだろう。

「もちろんだ」

 でまかせではない。
 俺はこの世界を愛している。
 俺の望むがまま、面白おかしな人生を送るこの世界が大好きだ。
 可愛いセツナやイヴとすごす世界が大好きだ。
 だから、この世界に危機が迫っているなら助けてやってもいい。
 俺の世界を俺が守らないでどうする。

『ならば我は我の役目を果たすために力を貸そう』

 どくんっ。
 鼓動が高鳴る。
 その音がどんどん大きくなっていく。
 力が流れこんでくる。俺の中にある【勇者】の力と共鳴する。

「これが、【神装宝具】」

 ずっるいな。【剣】の勇者どもは、奴らだけこんな力を授かっていたのか。
 高ぶる熱が心地いい。アレに触れなくてもこの快楽だけで達してしまいそうだ。

『何時は我《武器》に何を求める』
「俺が望むのは蹂躙と不死。さあ、俺が望む姿に変われ」

 赤い宝石を握る手に力をこめる。
 魂が重なっていく。

 赤い宝石はさらに激しく光り、熱くなり、宝石が砕けた。
 砕けた宝石が粒子に変わり、一か所に集まり、形を変えていく。
 つながった魂から、俺の意思を読み取り、望む姿に変わっていくのだ。

 激しい光が止み、俺のために生まれ変わった【神造宝具】が顔を出す。
 それは手甲だった。
 宝石があしらわれ、細緻な紋章が刻まれた銀の手甲。
 特徴的なのは前面にスリットがあること。これが重要な役割を果たす。

『我はこれより、【癒】の勇者の武器となる。名を、神甲ゲオルギウス。ゆめゆめ忘れるな』
「ああ、忘れるものか。神甲ゲオルギウス。おまえは俺のものだ」

 神甲ゲオルギウス。
 俺のためだけの武器。
 笑いが止まらない。
 ああ、ずっと【神装宝具】が欲しかったんだ。
 これで真の勇者になった。
 ゲオルギウスの声が聞こえなくなった。用事は済んだと眠ってしまったらしい。

「よろしく頼むよ。おまえの力存分に使わせてもらう。俺の世界のためにな」

 ゲオルギウスを腕にはめた。
 その瞬間チクリと痛みが走った。ゲオルギウスの内側には見えないほど細い針が伸びており、それが突き刺さったのだ。

 神経が接続される。
 ゲオルギウスのすべてが理解できる。俺が望んだ機能がきっちりと盛り込まれている。

 まずは基本機能として、自然界に存在する魔力……マナを取り込み自動で体を覆う防御を可能にする。

 そして重要なのはここからだ。自動防御を切ってから、ナイフを取り出し右手首を切り裂き血が吹き上がる。
 それが一瞬で治療された。

「さすがだ。これで俺は死なない」

 目玉として【自動回復オートヒール】が搭載されている。
 これは俺の神経と接続し、命の危険が迫ったときに強制的に【回復ヒール】する機能だ。

 これにより、たとえ致命傷を負おうが、意識を奪われていようが、毒に体を冒されて指一本動かせなかろうが、生きてさえいれば俺は俺を癒せる。
 即死以外なら、魔力が尽きない限りどうにでもできる。

「さすがに攻めの能力はここでは使えないか。今までの【改悪ヒール】は触れなければ使えなかったが、これからは違う」

 そして、もう一つの機能が隠されている。
 それがこの前方のスリットだ。
 これは残り二つの機能とは違い、攻撃のための能力だ。
 使うのが楽しみで仕方がない。

「ふははは、思った以上だよ。【神装宝具】」

 ここまでとは思っていなかった。
 これがあれば、あの【鷹眼】の相手もさほど苦労しないだろう。
 さて、用事は済んだ。

 部屋に戻ろう。
 三日後に起こる惨劇のための仕込みをしないといけない。
 それに、夕食はカルマンの案内してくれた店にいかないと。

 あれだけのいい店だ。ちゃんと楽しめるうちに楽しまないのを損だ。
 セツナたちと一緒に精一杯楽しもう。

「はやく、こいつの性能をたっぷり楽しめる機会が来るといいなぁ」

 俺はそう言って、ゲオルギウスをそっと撫でる。
 こいつの初陣はそう遠くない。
 そのときにはたっぷりと血を吸わせてやろう。こいつもそれを望んでいる。
 俺は高笑いし、部屋に戻る。
 こいつのせいで高ぶってしまった。鎮めるために女を抱きたい。さきほど、たっぷり可愛がったばかりで悪いが、もう少しセツナたちにがんばってもらおう。興奮のせいで、たぎってたぎって仕方ないのだ。
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