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もうすぐ申請してから30分だ。あと4人来るか、来ないか。
タンクが2人、ヒーラー、DPSがあと1人ずつ必要だ。
眠くなるまでにあと何回チャレンジできるだろうか。
練習を始めて2週間経つ。 こうしてレイドファインダーに申請を出すようになって2日経つ。昨日は8時間やった。きょうも8時間やる。ストレスとは縁の薄い性格、生活を保ち続けてきた自信があるが、さすがにお腹が痛い。
なぜこんなことになっているのか。エンジョイ勢として楽をしたくてフロンティアにサブキャラを作ったはずなのに、なぜ私はこんなに必死になって今、機工城アレキサンダー天動編零式 第3層をクリアしようとしているのか。朝の5時に、たった一人で。
* * *
(10年後にでも詳細について語ることにしよう。
「よろしくにゃああああん!」事件のように。)
天動編はエンドコンテンツの中でも特に簡単だという話だった。それを真に受けたフレンドが「やってみよう」と言い出した。こうして6人の半固定ができた。ここから2名を補充するのは簡単だったし、2層まではまあまあうまく行っていた。
ところが、3層で我々の”絆”は崩壊する。DPS1名が、「特定の者のミスのせいで思うように練習できない」と言い出したのだ。私をのぞけば、一番ミスが多いのはそいつだった。今までのコンテンツで、精いっぱいの尻拭いをしてきたつもりだった。仲間だからこそ、上達するまでのミスを認め許してきた。だがあちらはそんなつもりはないらしい。
間違っても、自分の腕前が最悪だとは認めるまい。奴がいちばんの問題児だと思っているのが誰かはわかった。私でなければ、ミスが全滅に直結するMT、このどちらかだ。私はMTを引き抜いて半固定から抜けた。こうしてこの半固定は2と4に分かれ、別々に募集をすることになった。6人で練習できたのは、1週間足らずだった。
私は言い争いや言い訳、謝罪、関係を修復する努力を放棄した。友だち甲斐のない連中に腹を立て、こいつらより先にクリアしてやろうと思った。 私たち2名が抜ければ、おのずと次の(ひょっとしたら、真の)ナンバーワン問題児が誰かははっきりするだろう。この予想はおおむね当たっていた。あちら側の4が3に、3が2に減っていくのを横目で見ながら(この辺は”心優しい”共通のフレンドが頼まなくても教えてくれた)、MTと私は練習を続けた。とうとう彼らはばらばらになり、ソロで募集に入るようになったと聞いたのは次の週の話だった。
分裂から2日目に、MTが「いい募集に入ってクリアできた」と朗報をもたらしてくれた。爽快だった。うれしかった。私は心の中で思う存分連中に「ねぇどんな気持ち?」をした。やる気はないが、もし、実際にやるとしたら、私自身もクリアしてからだ。
彼のいる時は共に練習に付き合ってもらい、一人の時は募集とレイドファインダーを活用して動きを改善していくことにした。動画を撮影し、すでにクリア済みのレガシーサーバの友人に細かくチェックをしてもらった。我が友は方向感覚と距離感の大きく劣る私に対するアドバイスが大層うまかった。私は下手なりに少しずつ、確実に前進できたと思う。
自分の問題を一つずつつぶし、DPSは出せていないものの、回復については問題がないと評価してもらえるところまで詰めることができた。が、クリアできない。時間切れならいい方で、序盤のフェーズでDPSが死ぬ。もう一人のヒーラーが私をはるかに上回る無能のことも多かった。
私の腕前はエンドコンテンツに挑戦が許される下限に近い。リアルの知人に囲まれた固定パーティにいたからこそ許されるようなものだった。その私以下の存在が野良パーティに乱入してくるというのは非常に恐ろしいことなのだが、問題児の誰一人、そんな自覚はないようだった。「だいたいできてる」という根拠のない、身の程を知らぬ自信をもって参加する。そんな者たちが恐ろしかった。
ギブアップで戦場から放り出されるたび、録画を見直した。私はミスしていない。しかしクリアはできていない。私はミスしていない。たとえしたとしても、すぐに立て直している。しかしクリアには程遠い。
これが「お祈りポジション」というものだったのか!
私はMTの手伝いの申し出を断り、片っ端から目についた募集に入った。そしてどんどん、おかしい奴をブラックリストに放り込んで行った。
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