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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第三章:回復術士は黒の世界で宝石を見つける

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第十四話:回復術士は【剣】の勇者に復讐をする

 女装しケアルラとなった俺を襲った馬鹿三人組をとある場所に潜ませて、薬で眠らせておいた。
 放っておけば、罪のない人を襲い始める獣たち相手なので容赦はしない。
 そもそも下手をすれば、俺はこいつらに輪姦されるところだった。

 ふと、廃屋にあった鏡を見る。【剣】の勇者に復讐するため、女性を装ってみたが、なかなか女装した俺も悪くないようだ。
 男が入れ食いだったの納得だ。
 これなら、【剣】の勇者も釣ることができるだろう。
 そろそろいい時間だ。移動するとしようか。

 ◇

「無駄に洒落た店を選びやがって」

 文句を言いながらドレス姿で街中を歩いていた。
【剣】の勇者が狩場にしている店はこの街でも上流階級が集まる店だ。

 さすがに、旅用の服では入れないのでドレスを購入し着替えている。
 余計な出費で懐が痛い。

 目的の店にたどり着いた。鮮やかに装飾された入り口と、醸し出される雰囲気だけで、一般人お断りの店だとわかる。
 店に入るまえに深呼吸する。

 今の俺は、貴族の令嬢。そのつもりで立ち振る舞わないといけない。
 自己暗示をなんとかかけ終えた。
 夜に咲く可憐な一輪の花ケアルラ。
 その魅力を見せつけるとしよう。

 ◇

 店の中に入った。
 入り口にはガードマンがいて、怪しい客は追い出しているようだ。
 俺の姿は貴族の令嬢に映ったらしく、何も言わずに通してくれる。

 なかは洒落たバーで少々居心地が悪い。
 上流階級の方々が楽しく談笑している。
 ピアノの音色が聞こえる。素人のもの好きでやっているわけではない。プロの生演奏だ。
 その音色に耳を傾けながら、カウンターに座る。
 老紳士が別の客のカクテルを作っていた。手が空いたのを見計らって注文をする。

「マスター、なるべく軽くて甘いお酒を」
「かしこまりました。お嬢様」

 マスターが目の前でカクテルを作ってくれた。
 果実酒を水で割り、見たことがない赤い果実を絞ってグラスに入れて完成。
 飲んでみると、注文通り度数は低く果実の甘味がする酒だ。
 さわやかで、後を引く。
 酒がうまくて安心した。
 しばらくの間は、この店に通うつもりだ。高い金をまずい酒に払いたくはない。

【剣】の勇者がここに来るつもりなのは、すでに聞き出しているが、一日で会えるとは限らない。
 騎士たちから情報を聞き出すとき、一工夫しておいた。
 行きつけの店を聞くときに【剣】の勇者の見た目に惚れて、もう一度会いたいのと言っている。
 騎士団の連中は、可愛い女の子があいたがっていると、【剣】の勇者に伝えるだろう。

 そうなれば、【剣】の勇者は喜んでやってくる確率がぐんとあがる。
 俺が昼間やっていたのは、聞き込みを兼ねた撒き餌だ。
 俺はマスターと談笑しながら、ときおり声をかけてくる男どもを追い払った。俺は美しいので、男が放っておいてくれない。
 雑魚にようはない。俺が狙う獲物は一人だけだ。

 ◇

 カラコロンっと音がなる。扉に取り付けられたベルの音。
 誰かがやってきたようだ。
 俺はにやりと笑う。
 おっといけない、笑い顔は淑女らしく微笑でないと。

 あの女だ。身にまとう魔力だけでわかる【剣】の勇者が来た。
 まさか、初日でやってくるとはな。

【剣】の勇者は、軽やかな足取りで俺の隣までやってきて座る。
 周りの視線が集まるのを感じていた。
 なにせ、見た目だけなら【剣】の勇者ブレイドは、美しい貴公子なのだから。

 身長が女性にしては高く、美しい金髪に引き締まった細身の体。
 身にまとうのは、細身のスラックスと仕立てのいいシャツ。
 不思議と色気があり、店内の女の子たちはうっとりした顔で【剣】の勇者を見つめていた。

「お嬢さん、ここの店は初めて」

 きざったらしい笑みを浮かべて、【剣】の勇者ブレイドが問いかけてくる。

「ええ、初めてよ。あなたは常連さんかしら?」
「実は僕も初めてなんだ。君におすすめを教えてもらおうと思ったんだけど、当てがはずれちゃったな」

 軽やかに笑う。
 そして、ブレイドはマスターに話しかけて、おすすめのメニューを二つ頼み、一つを差し出してくる。

「これが美味しいらしい。君も飲んでみるといい。僕のおごりだ」

 こういった何気ない仕草をよどみなくできるのが、この女の特徴だ。

「見知らぬ人におごってもらうなんて悪いわ」
「そう思うなら、乾杯に付き合ってくれないか? 一人で飲むと寂しいんだ」
「それぐらいなら、構いません……では、乾杯」

 二人でグラスをぶつける。
 その後、ブレイドは軽妙なトークを展開する。
 自分ばかり話すのではなく、自然な流れで、俺に話させ聞き手に徹っする、相槌のタイミングが素晴らしく、会話がつまりそうになればさりげないフォローをする。

 会話が盛り上がると、どさくさに紛れて酒をどんどん飲まそうとする。

 さすがは、日ごろから女を食いまくってるだけはある。女を落とすテクニックには舌を巻く。
 さすが、女を食うためには手段を選ばない女だ。

 もし、俺が本当の女なら、こいつに好意をもっていたかもしれない。
 だが、胸のうちには復讐の炎が燃えている。その綺麗な顔をぐしゃぐしゃにしてやりたくてしょうがない。
 どんどん、時間が過ぎていく。

「そろそろ、いかないと」
「お嬢さん、今日はもう遅い。女性の一人歩きは危ないよ。悪いことは言わない。今日は僕の部屋に泊まっていきなよ」

 あくまで、こちらを気を使っているように見せているが、その胸のうちには欲望が渦巻いている。
 ついていけば最後、やつは野獣となりこの身を蹂躙するだろう。

「ごめんなさい。やっぱり、今日会ったばかりの男の人とは……、少しお手洗いに行かせていただきます」
「急に変なことを言ってごめんね」
「いえ、気にしてません」

 にこにこと、ブレイドは微笑んだままだが、俺じゃないと気が付かないほどの一瞬だけ、表情が歪んだ。
 あの女は、一人の女に時間をかけることを拒む。毎日とっかえひっかえ、いろんな女を楽しみたいので、こうやって焦らす女は嫌いなのだ。

 あいつが時間をかけてでも欲しがった唯一の例外はフレア王女ぐらいだ。他の女なら、とっととレイプしていた。

 さて、ここから先はきっと俺の予想通りの行動をとってくれるだろう。
 席を外し、錬金魔術の一種、鏡を使った鏡面魔法を使う。

 店の奥に消えつつも、しっかり残された奴の様子を見ることができる。
 俺がいなくなったのをいいことに、めんどくさそうな表情を浮かべて、懐から白い粉が入った袋を取り出す。
 それを、俺のグラスに混ぜ込んだ。それも二種類だ。

 一つは睡眠薬、一つは媚薬。あいつが常に持ち歩いている、レイプのお供だ。
 毒を盛られたことで、復讐ポイントに大幅な加点が入った。
 様子を見計らって戻る。

「今日は飲み過ぎたわ。そろそろ私は帰りますね」
「話せて楽しかったよ。また、この店で会えないかな?」
「機会があれば是非、では」

 俺が立ち上がろうとすると、その手をブレイドは掴んだ。
 勝手に乙女の肌に触れた。復讐ポイントにさらなる加算。

「きゃっ、急になんなの」
「いや、せっかくマスターが作ってくれたカクテルを残すのはもったいないじゃないか。飲んであげなよ」
「今日は飲みすぎて、もう辛いの。よろしければ、あなたが飲んでくださいな」

 さて、獲物が罠から逃げていく俺を見て、【剣】の勇者はどんな反応をするか。
 内心で笑いながら、様子を見ていると、やつはカクテルを口に含んだ。
 まさか、自爆? そうしないと不自然だから睡眠薬と媚薬を飲んだのか?
 だが、それは甘い考えだった。

 口にカクテルを含んだまま。口づけして流し込んでくる。
 あまりにも想定外の動きだったせいで、反応が遅れた。
 気持ち悪い、吐き気がする。
 我慢だ。我慢。

 復讐ポイントに超加算しておこう。
 乙女の唇を奪った罪は重い。

「いきなり、なにを」
「このカクテルは君に飲んでもらうために作ったものだからね。やっぱり君に飲んでもらわないと思って……ちょっと強引な手を使っちゃった」

 にやりと、ブレイドが笑う。
 体がふらついてくる。
 体内で抗体を生成、すぐにこの程度の薬、抜くことはできるが、あえて五分程度で薬を抜くように調整する。
 崩れ落ちた体を、ブレイドが支える。

「お嬢さん、本当に飲み過ぎたようだ。仕方ない、僕の部屋で介抱するよ」

【剣】の勇者は周りに聞かせるようにそういった。これで大手を振ってお持ち帰りできるわけだ。
 そして、お姫様抱っこされる。
 そこで俺の意識は落ちた。

 ◇

 目を覚ますと、白いベッドに寝かされていた。
 それなりに豪華な部屋だ。
 手を動かそうとするとベッドから延びる手錠につながれていて身動きが取れない。

「あれ、思ったより早く起きたね」

【剣】の勇者が紅茶を飲みながら、微笑みかけてくる。

「ここはどこ? 鎖、いや! 放して、ここから出して、人を呼ぶわよ」
「どうぞどうぞ、誰も助けに来ないけどね。まったく、困った子猫ちゃんだ。素直なら、ちゃんと可愛がってあげたんだけどね」

【剣】の勇者が笑って、にじり寄って来る。

「やだ、来るな、けだもの! 最低の糞男!」
「それは誤解だよ。僕は女だ」

 さっと、服を脱ぐ。
 下着姿になった【剣】の勇者の鍛え上げられた肢体があらわになる。

「あなた、女なのに、女を襲うなんて、気持ち悪いわ!」
「ひどいことを言うね。最初はみんなそう。でも、僕が新しい世界を教えてあげたあとはね、女同士のほうがいいって言うんだ」

 薬に頼ってむりやり快楽を与えて置いてよく言う。

「たっぷり、可愛がってあげるね。困った子猫ちゃん」

 俺に覆いかぶさってきて、体をいやらしく撫ぜて、スカートの中に手を入れ、そして下着の中まで……。

「さあ、新しい扉を開こう。……うそだ、なんで、なんで、男のものが!? おうええええええ、おうえええええ、汚い、気持ち悪い、おえええええええ、僕が、男の、おうえええええ」

 俺に覆いかぶさりながら、【剣】の勇者はなんども嘔吐する。
 失礼なやつだ。ケアルラとなった俺は、そこも可憐だ。

 このゲロ女がうっとうしいので足で腹を蹴りとばす。
 ごろごろとブレイドが転がる。

 ちなみに、今日はいている靴には隠しナイフが仕込んでいて先端で蹴ると、ケアルガ印の素敵な毒をたっぷり塗ったナイフが飛び出る。
 ゲロ女の腹部から血が流れ、毒が回り始めた。
 俺の毒は、この女が使ったチンケな毒とは格が違う。
【剣】の勇者は強い。まともに戦ったら勝てない。こうして隙を晒すのをずっと待っていた。

「残念だったわね。私は男よ。あなたは、男を口説いて、男とキスをして、男のアレを触ったの」
「嘘だ、おえええええええええ、僕が、僕が男と、おうえええええええええええ」

 見てて気持ちいい吐きっぷり。
 しょうがないので、男の子の証を見せてやると、さらにゲロの勢いが倍化。

「うああああああ、男のくせに、女の恰好をするなんて、変態! 変態! 変態!」
「いや、お前にだけは言われたくない」

 この男装女が。
 さて、復讐を始めるとしようか。
 もうすでに復讐ポイントはしっかり溜まった。むしろ、大幅に上限を超えている。
 この女には地獄を見せてやろう。とびっきりの奴をな。

 
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