投資家がバフェットを目指すのはわかるけど、就活生がBtoCメーカーを目指すのは・・・
長期投資に関する本「投資される経営、売買される経営」を読んだ
界隈では有名な「みさき投資」の中神さんの著書。文章の書き方に少し気に入らない部分もあったが内容は面白く勉強になる。実はお会いしたこともある。
とても素晴らしい投資家で、際立ったビジョンのある投資家としてはレオスの藤野さんに並ぶほどではないかと思う。
書籍を読んだ第一印象は「あー、バフェットを目指しているんだ」というものだった。
投資家はバフェットを目指し、起業家はジョブズを目指す
投資家はすぐにバフェットを目指す。なぜかはわかっている。かっこいいから、一番成功している投資家だから。
起業家はすぐジョブズを目指す。かっこいいからね。人間はそんなに論理的ではないから、世界一だからというのは目標にするのに十分な理由である。
そして、ITベンチャーはすぐGoogleを目指す。何かにつけて「Googleのようにテクノロジーで世界を変える」などという。達成できないことはわかっていてもだ。
誤解しないでいただきたいが、こういった人たちを批判しているわけではない。
このサイトのヘッダーには、読書について “That’s how knowledge works. It builds up, like compound interest.” と書いているのだが、これはバフェット氏の言葉だ。
ついでに言えば、x3thinkっていうのは「読んだ時間の3倍考える」を意味しているんだけど、これは大前研一さんの言葉だ。
私もまた、バフェットを目指す投資家やGoogleを目指すスタートアップと似たようなものである。
「バフェット!」「ジョブズ!」はいいけど「サッカー選手!」「有名メーカー!」はどうかな・・・
バフェットやジョブズは要するに最高の投資家であり最高の発明家だ。投資家や起業家が目指すのは違和感がない。
彼らが投資家・起業家の中で一線を画す存在なのは間違いないから、目標にしても問題にはならない。
ただ、「将来の夢は?」と聞かれた小学生が「バスの運転手!」「サッカー選手!」などと答えるのはわけが違う。彼らはバスの運転手やサッカー選手の何かを尊敬しているわけではなく、その仕事に面白みを感じているわけでもない。たんに、身近にいる大人がそれくらいしかいないというだけだ。選択肢がない状態で選ぶからそうなってしまう。
何も小学生にそんなこと言わなくても・・・と考えている読み手の皆さん、これは大学生も同じです。
いろんな企業を調べもせずに進路を決めようとするから「トヨタ自動車!」「サントリー!」みたいになっちゃう。何も考えずに有名なBtoCメーカーを第一志望にする人がほとんどなのだ。
もちろん、合コン受けがいいらしいから商社に行きたい、芸能人と知り合いになりたいから広告代理店に行きたい、といった人もいる。
しかし、いずれにせよ、比較検討したうえでの結論でもなければ、最高の職業だと考えているわけでもない。例外がないとは言わないが、ほとんどの学生は単にそれしか聞いたことがないから選んでいるのだ。
目標にすらすべきでないものを、あろうことか「将来の自分」だと思ってしまっている。
小学生の皆さん、もっと世の中を見よう。小学校教員の皆さん、安易に「将来の夢は?」と聞く前に、どんな選択肢があるのかくらい教えてあげてください。
就活生の皆さん、100社くらいは調べよう。一生を決めることなんだから、自分のキャリアをもっと大切にしてください。
まあ、かくいう私も、就職活動をはじめたばかりのころは「マッキンゼーにいって起業して、30代のうちに時価総額10兆円の会社にしたい。」などと言っていた。
バフェットやGoogleの例にもれず、他人のことをとやかく言える立場ではないのだが。