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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第三章:回復術士は黒の世界で宝石を見つける

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第十三話:回復術士は可憐な一輪の花になる

【剣】の勇者に復讐するために、俺はセツナとイブを餌にして襲われるのではなく、ケアルガを捨てケアルラとなることで俺自身を餌にし、襲ってきたところを仕留めることにした。
 ケアルラになる……つまりは俺自身が女性になるということだ。
 葛藤も恐怖もある。

【剣】の勇者は俺にとってのトラウマだ。
 そんな奴を誘うことにひどい抵抗がある。
 怖いのだ。だが、それでもやらないといけない。
 やつを乗り越えないと、ここから先へは進めない。

 ◇

 宿に戻り、いつものようにセツナとフレイアをたっぷり愛しつつ、むっつりなイヴをからかった。
 イヴは布団をかぶって、音を聞かないようにしているように見えて、その実、耳を澄ませてこっそり自分を慰めている。
 ばれていないと思い込んでいるのが可愛らしい。

 ことが終わって、ベッドに体を横たえながらうっすらと目をあけて考え事をしていた。
 左手には裸のセツナが抱き付いていた。
 彼女の寝顔は本当に可愛らしい、ほっぺたをつつくとぷにぷにとした柔らかい感触が返ってくる。

「変身は朝の日課が終わってからだ。それまでに覚悟を決めよう」

【剣】の勇者は味にうるさいタイプだ。
 いい女でなければ引っかかってくれない。

 俺の【改良ヒール】で姿を変えられても、性別までは変えられない。
 男であるというハンデを乗り越えて、あの女に手を出させるのは並み大抵の演技では不可能だろう。
 ありとあらゆる努力を尽くして、女を越えた女になる必要がある。
 幸いなことに、俺は最高の美少女に囲まれて旅をしている。その経験を生かそう。

 ◇

 朝の訓練からセツナたちが帰って来た。
 最近ではイヴも一緒に訓練に参加している。

 イヴいわく、守られているだけじゃダメ、自分自身が強くならないと意味がないそうだ。
 才能だけで、努力をしてこなかった彼女が才能を磨き始めたことに驚きと喜びを感じる。
 最近、セツナとイヴが妙に仲がいいと思ったら、こうやって訓練を一緒にしているからだろう。

「朝ごはんが届いているよ」

 ここの宿は一つ目の宿ほどでもないがご飯が美味しい。
 なので、朝食もおまかせしている。

 セツナたちがお腹を空かせて帰って来るのを見越して、四人なのに八人前頼んでいるが、いままで余ったことは一度もない。

「ケアルガ様、今日のごはんも美味しそう。イヴ、フレイア、たっぷり食べて。食べないと強くならない」
「もちろんだよ。運動してからのご飯は最高だね」

 セツナとイヴの欠食児童組が飛びついてくる。
 早速パンをもぐもぐと食べ始め、スープで流し込む。
 もう一人のほうはグロッキーな顔をしてうらめしそうな顔をしている。

「なんで、セツナちゃんもイヴちゃんも、あれだけ無茶な訓練して胃が受け付けるんですか……理不尽です」

 フレイアのほうは相当ぼろぼろなようで、パンをスープに浸して苦労しながら必死に飲み込んでいる。
 セツナの訓練を受ければ、初心者はこうなる。
 平然としているイヴのほうが異常だ。適応能力が異様に高い。

 しばらく、三人の食事を見守る。
 こっそり、フレイアには初歩的なほうの【回復ヒール】を使った。
 自己治癒能力の強化で筋肉痛を癒すのだ。筋肉痛が治らないまま、毎日無理な特訓をしてもむしろ逆効果。こうして、毎日万全な状態にすることでサポートしていた。

 フレイアが目に見えて元気になり、食事のスピードもあがる。
 食べ終わるのを見計らって声をかける。

「フレイア、頼みがある」
「なんですか? ケアルガ様」
「俺に化粧をしてほしいんだ」

 その分野の技術を【模倣ヒール】していたが、すでに忘却の彼方だ。
模倣ヒール】した知識や技能は、定着させない場合、一か月もすれば忘れてしまう。

 重要な知識や技能は定期的に割り当て忘れないように気を付けているが、どうでもいいものは気がついたらなくなっている。

 さすがに、化粧を必要とするなんて思っていなかった。
 加えて、化粧にはセンスが必要な美的感覚は俺は持ち合わせていない。幼いころから美しいものに囲まれて育った王女フレアであるフレイアなら期待できるだろう。

「いいですよ。でも、まさかケアルガ様が女装趣味だったなんて……」

 微妙に引き気味でフレイアが失礼なことを言った。
 失礼なやつだ。

「違う。この街を焼野原にしようとしている一団がいてな。その一団に潜入するために女性のほうが都合がいい。俺にそっちの気があるわけじゃない」
「安心しました。アレまで切り落としてケアルガ様に可愛がってもらえなくなると寂しくなるなって不安だったんです」
「……それは心配し過ぎだろう」

 フレイアは、自分のポーチの中から化粧道具を取り出す。
 一度、本気でねだられて買ってやったものだ。
 化粧なんて旅には必要ないと言ったが、フレイア曰く女性にとっては鎧より大事なものらしい。

 フレイアの場合、化粧なんてしないでも十分すぎるほど美人だし、本人も自覚があるのか、うっすらとしか化粧しない。
 フレイアいわく、そのうっすらが非常に重要らしい。

 フレイアはたまにセツナにも化粧をしようとするが、そのたびに本気で逃げられている。セツナは化粧品の匂いが苦手らしい。さすがは狼。

「では、こちらの椅子に座ってください」
「ちょっと待ってくれ、その前にやることがある。【回復ヒール】」

 顔つき、骨格、体形を変えて女性に見える姿になる。
 性別は変えられないのでちゃんとついているが、見た目だけはしっかりとした女性だ。

 控えめだが、ちゃんと胸があるし、腰はくびれ、尻は膨らんでいる。
 ……重心が狂って、慣れるまで時間がかかりそうだ。
 筋力が落ちているから身体能力も低下している。そもそも全体的にふにゃふにゃ柔らかくて心もとない。やはり、男がいい。

「うわああ、ケアルガ様、可愛いです。セツナちゃん、イヴちゃん、来てください」
「可愛い。ケアルガ様、ぎゅっとさせて」

 セツナが胸に飛び込んでくる。比喩ではなく俺の胸に顔を埋めてすりすりしてくる。セツナの顔で俺の胸が形を変えている。
 うっ、セツナの仕草は可愛いけど複雑な気持ちだ。

「……中身の極悪さが完全に消えてるね。女の私が見ほれるほど綺麗だよ」

 イヴもオッケーをだしてくれた。
 とりあえず、容姿は合格点。

「でも、今のケアルガ様の顔、どこかで見たことが。あっ、わかりました。ケアルガ様の本当のお顔に似てるんです」
「セツナも同感。ケアルガ様の本当の顔は可愛い。それがもっと女の子っぽくなってる」
「えっ、腹黒ケアルガの顔って、こんなのなの!? 意外過ぎるんだけど」
「……言わないでくれ。本来の顔は好きじゃない。甘さと幼さがにじみ出ていて俺らしくない。理由がなければ、こんな顔を選ばなかった」

 フレイアが気付いた通り、今の俺の顔は本来の”ケアル”の顔を女性らしくしたものだ。

 その顔を選んだ理由は二つ。
 一つ目はあまりに本来の顔から離れ過ぎると表情筋をうまく操れない。男女の壁を超える以上、そのデメリットは顕著になる。だから、もともとの顔をベースにせざるを得なかった。

 二つ目は【剣】の勇者の好みの顔だからだ。
 一度目の世界で【剣】の勇者が俺を激しく虐待したのはフレアに構われていることへの嫉妬もあったが、もう一つは男に欲情したことを認めないためでもある。あの女は少女のような俺の顔を気に入っていた。屈辱を与えるためと何度も無理やり女性ものの服を着させられたが、そのときの【剣】の勇者の顔は発情していた。

 ……もし、ケアルの顔で女なら、間違いなく、あの女は釣れる。そして、拒めば無理やり襲おうとするだろう。それで復讐条件成立だ。

 念には念を入れておこう。
 ポーチから注射を取り出す。

 薬液をたっぷり注ぎ、首元に刺して体に投与する。
 やっぱり、血管に直接流し込むのは効く。

 その薬液の正体は、フレイアを材料に精製した特製ポーション。
 人が人を愛するのには、見た目や性格だけじゃなく、匂いやフェロモンなどといったものがある。それらを手に入れるためのものだ。
 フレイアを原材料にした香水もあるので併用しておく。

【剣】の勇者がかつて愛した王女フレアの匂いとフェロモン、一周目で気に入っていたケアルの容姿を女性向けにした改造して勝負する。

 とはいえ、フレイアを材料にしたポーションを体内に投与するのは抵抗があるので、すべてが終わったら、しっかり【回復ヒール】で消しておこう。

「ケアルガ様、ほんとうに女の子みたいです」
「でないと、潜入作戦なんて成功しないからな」

 この女装が完璧かは【剣】の勇者以外を対象にして、復讐ゲームに必要なアイテム入手を兼ねて実験してみるつもりだ。

「では、さっそくお化粧しますね。元がすごくいいので、あくまで控えめに、魅力を引き出すほうこうでがんばってみます」

 フレイアが鼻息を鳴らして近づいてくる。
 妙にやる気まんまんだ。
 ちょっと嫌な予感はするが、好きにさせてみよう。
 いつも、フレイアで遊んでいるんだ。たまにはフレイアに遊ばせてやろう。

 ◇

 女っていいな。
 なんてことを考えながら路地裏を歩いていた。
 女装に目覚めたわけではない。
 ジオラル王国の精鋭部隊聖槍騎士団はノルン姫と数名が領主と交渉中で、暇そうにしていた。

 その中から、口が緩そうな連中から情報を引き出していたのだが、ぺらぺらしゃべってくれる。
 やはり、美人は得だ。女装した俺、ケアルラは文句なしの美少女。男は単純で、疑いすらせずに必要な情報をくれた。
 その情報の中には、【剣】の勇者が今晩、女をあさりにいく酒場も突き止められた。

 さて、情報は手に入れた。次はアイテムの入手だ。
 人気のない路地裏に入っていく。
 丸腰の薄着で、いい女が一人でそんなところに入れば、レイプしてくださいお願いしますと言っているようなものだ。
 ほら、来た。

「ひひっ、いい女じゃねえか。こいつは運がいいぜ」

 左手で抱き留められ、右手で口元を押えられる。

「あっ、兄貴ずりいぜ。独り占めする気か」
「そうだ、そうだ、俺たちはチームだろ、三人で分け合おうぜ」
「ああ、わかったよ。だがな、最初は俺だ」

 俺は今ガラの悪い大男三人組に拉致られていた。
 力自慢だというのが見て取れる立派なガタイ。だが、おつむのほうが足りなさそうだ。

 暴れれば殺すと脅されて、どこかに連れていかれようとしている。
 釣りに来たのだがここまで入れ食いなのはさすがに想定外だ。
 人気のない建物に連れ込まれ、投げ捨てられる。

「さて、たっぷり可愛がってやるぜ」
「兄貴、外で出してくだせえよ。あとで俺らも使うんで」
「オラはどっちでも構わない、後ろのが好きなんだな」

 好き勝手言ってくれる。
 さて、復讐ポイントを確認しよう。
 一定値貯まっていれば、めでたく復讐開始だ。

 だめだ、微妙にポイントが足りない。
 拉致られた、後ろから抱きしめられた、罵声を浴びせられた。
 もうひと押し欲しいな。

 でも、せっかく買った服を破られたらもったいないし。
 よし、チャンスをやろう。ボーナスゲームだ。
 ぎらついた目で男たちがにらみつけてくる。
 その男たちをにらみつけて、口を開いた。

「私はあなたたちより強いよ。もし、手を出したら、人間やめることになる。逃げるなら今のうちだよ?」

 警告はした。
 どうでるか。

「ぎゃはははははは、お嬢ちゃん、面白い冗談だ」
「けけけ、もっと頭のいい脅し考えろよ」
「怖い怖い、オラ、怖いからがんばって襲うぞ」

 男たちは大爆笑。
 善意を踏みにじられた。復讐ポイントに加算が入ってしまった。
 男たちに合わせて俺も大笑いすると、男たちがぎょっとした顔で笑いを止める。
 さあ、死刑宣告だ。

「ざーんねん。規定値に入ったので、今から復讐ゲームを始めよう。大丈夫、安心してくれ。人間はやめてもらうけど……おまえらの大好きな交尾は好きなだけやらせてやるから」

 せっかく、最後のチャンスをあげたのに。
 これだからバカは困る。相手の力量すらわからないのか。

「てめえ、まずは黙らせてやる」

 兄貴と呼ばれる男が殴りかかって来る。
 大振りだ。止まって見える。
 その手をとり、やつの勢いを利用して投げて、背中から落とす。

「ごふっごふっ、てっ、めてえ」
「黙れ」

 倒れたことの顎をつま先で蹴りぬく。
 脳が揺らされた男は意識が飛んだ。
 殺すわけにはいかない。ちゃんと、最高のお薬で便利な俺のアイテムとして役にたってもらわないと困るのだ。

「さて、残り二人か。抵抗してもいいけど、抵抗しないほうが楽に壊れることができるよ」

 さっさと刈りとるとしよう。
 この三人組には感謝してほしいぐらいだ。

【剣】の勇者は美人であることには変わらない。
 その【剣】の勇者とあとでたっぷりしっぽり楽しめるのだから。

 ◇

 残り二人を数秒で鎮圧した。
 男たちを蹴り飛ばし、三人重ねて椅子にして、その上に座る。
 男椅子に座りあんにゅいな気分に浸る。

「こんなに男って簡単に釣れるのかよ。同じ男として悲しい。いや、俺が可愛すぎるのか。こいつらには悪いことをしたかな。見た目も性格も可愛すぎる俺が通ったら我慢なんてできないもんな。さて、お薬たーいむ」

 ポーチの中から、新作の特製ポーションを取り出す。
 ちょっぴりやり過ぎて夜犬族を壊してしまったポーションの改良版、あの女の死は無駄ではなかった。こうして改良ポーションを完成させることができたのだから、あの女もきっとあの世で喜んでくれるだろう。

 これを投与すれば、この男たちは幸せになる。
 なにせ、これを投与されたら、一生、痛みも不安も苦しみも感じることができなくなるのだから。
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