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第八話:回復術士はおかずを提供する
廃屋で、復讐の対象者になった豹の魔族で少し遊んでみた。
罪状は、背後から俺の急所目がけてナイフをついてきたことに加えてもう一つ。
俺を襲っただけなら、まだ許してやれた。ちょっとお茶目は過ぎるが、あの程度の腕では害にはならない。俺は心の広いので許してやってもよかった
だが、美味しい生クリームたっぷりのシフォンケーキを出してくれる店を潰す原因を作った。これは駄目だ。
いくら、温厚だといっても限度がある。
だから……、ちょっとだけ意地悪してみた。
「意外に、壊れるのが早かったな」
新しい媚薬は強すぎたようで、穴という穴から汁という汁を垂れ流して、豹の魔族は笑いながら痙攣している。
さすがの俺もあれには萎えてしまっていた。
最初のうちは、楽しく大人の女性を味見して、この世のものではないほどの快楽を楽しんでもらえていたのだが、調子に乗って投与しすぎたせいで完全に壊れてしまった。あのおもちゃはもう使えない。
おかげで一回しかできてない。これじゃ満足できない。
夜まで我慢して、フレイアとセツナで発散しようと決める。
たまには大人の女性もいいが、やっぱりあの二人が一番いい。もしかしたら、毎日フレイアとセツナを可愛がっていたら、そのうち興味をもってイブも一緒に参加したいと言ってくるかもしれない。そうなれば素敵だ。積極的にイヴに見せつけよう。
「媚薬の実験は失敗だ。魔族相手なら強めでもいけると思ったんだけどな」
この媚薬はこのままじゃ使えない。それがわかっただけでも十分な効果があるだろう。
もしくは媚薬ではなく別の用途で使うのもいいかもしれない。
殺さずに無力化するという点では優れている。もっと強めれば面白い薬になる。
問題は、壊れてしまった豹の魔族をどう始末するかだ。
当初の予定では俺の操り人形にして、彼女の組織に情報を流すつもりだったが……こんなものを送られても向こうも困るだろう。
「治してやるか」
【回復】を使って、彼女の体を元に戻す。
脳に受けた深刻なダメージが抜けていく。
ただ、問題はある。
強烈な快楽の記憶が残っているし、壊れた心までは戻らない。体が治っても人として生きていくことは難しいだろう。
薬は怖い。駄目、絶対。
「あう、あああ」
どうやら、まともに言葉もしゃべれないらしい。
「【真の名】……●●●において命じる。所属組織に対して、魔王候補、イヴ・リースの捜索を可能な限り妨害しろ。手段は問わない。また、俺のことを他者に漏らすことを禁じる」
しっかりと【真の名】を聞き出していたので、それを使い命令する。
【真の名】のやっかいなところは、【回復】で記憶を探って手に入れても、それだけでは意味がないこと。本人の口から聞き出さ出す必要がある。
媚薬の量が少な目だったときは口が利けたので、そのときに聞き出しておいてよかった。
……冷静に考えると媚薬の問題は強さではなくて量か。
「あう」
豹の魔族はこくんこくんと何度も頷く。
壊れた彼女に何ができるかはわからないが、とりあえず何かしらの動きはしてくれる。
あとは成り行きに任せよう。
【真の名】をもって俺の名前を出すことは禁じているので、どんなことをやらかしても飛び火はない。
我ながらいい考えだ。
豹の魔族は廃屋を去っていく。
これで一件落着だ。
彼女も運が良ければ、人並みの生活が送れるようになる。いいことをした後は気分がいい。
やっぱり、シフォンケーキのためにやりすぎるのはかわいそうだ。これぐらいがちょうどいいお仕置きだろう。
「さて、戻ろうか」
俺は女には甘いが、男には容赦をしない。
イヴを襲撃した狂牛族たちには地獄を見てもらおう。
◇
【改良】で、さらに顔を変えてから廃屋を出た。
なにせ、豹の魔族を抱えて逃げるところを狂牛族たちにばっちりみられている。
おかげで、無駄に魔力を使う羽目になった。心の中で、復讐ポイントを一つ加算しておく。
復讐ポイントが溜まるほど、復讐の対象者は楽に死ねなくなる。
ちなみに、復讐ポイントの歴代トップである王女フレアは、心の底から一生俺に尽くし、戦いにも使える便利な性奴隷となった。
俺が向かったのは商店が並んでいる地区だ。
狂牛族の操っていた魔物にしっかり、マーキングし夜襲をかけるつもりではあるが、それまで暇だ。今のうちに廃屋で暮らすために必要な毛布類と食料の買い出しを済ませておきたい。
「奴らにどんな地獄を見てもらおうか。ただ、痛みを与えるだけだとつまらないしな」
復讐の趣向には毎回頭を抱える。
相手は男なのできもちいいこともできない。
加えて、個人的な美学として、復讐の対象者の家族や友達に手を出すのはNGだ。それはただの外道であり美しくない。
あくまで俺か、俺の所有物を傷つける。あるいは何かを奪った相手でない限りは手を加えない。
「いいことを思いついた。食べ物の恨みは、食べ物の恨みで晴らそう」
そのために必要なポーションを調合しよう。
ちょうどいい魔物の毒素がある。
きっと、楽しい復讐劇になるだろう。
◇
買い物を済ませた俺はたっぷりと荷物を抱えて隠れ家にもどってきた。
結界に乱れはないので侵入者はいなかったみたいだ。
家に入る前に姿をケアルガのものに【改良】する。
この姿が一番しっくりくる。
俺が戻ると、フレイアとセツナが駆け寄ってきた。
「おかえりなさいませ。ケアルガ様の不在時に問題はありませんでした」
「ケアルガ様、荷物がいっぱいで大変。持つ」
二人とも、よく懐いた犬のように素直だ。
もう一人は部屋の隅でひざを抱えている。あの子はまだ懐くのに時間がかかる。
「あったかい毛布! ケアルガ様。買ってくれてありがとう」
「服もあります! これで洗濯できますね」
食料と毛布以外にもいろいろと生活に必要なものを用意していた。
なにせ、宿に大半の荷物を置いてきてしまっていた。
今日は借りていた部屋を見に行ったが、荷物はなくなっていた。
イヴを探すための手がかりになると奪われた。
旅の必需品や、ポーチに入りきらないポーション類や食材。
さまざまなものが失われいる。
これもひどい仕打ちだ。……絶対に許さない。復讐ポイントに二点を足しておく。
「セツナ、フレイア。昨日、襲撃してきた連中の仲間を見つけたんだ。セツナには話したことある、例の匂いつけ投げナイフ。それで奴らの使役する魔物を刺した。セツナなら匂いを追えるだろう」
「ん。さすがにここからなら無理だけど、街を一周しながら探せばたぶん見つかる」
「頼りになる。今日は夜襲をかけよう」
「了解。ケアルガ様に喧嘩を売った罪、その命で贖ってもらう」
セツナが鼻息を荒くする。
可愛い奴だ。セツナを使い捨てにするのは最後の最後だ。セツナにはかなり愛着がある。
フレイアのほうを見ると、魔術で水を生み出し桶にためていた。
これは、洗濯の準備だ。
「ケアルガ様、セツナちゃん、イヴちゃん。ケアルガ様が買ってくれた新しい服に着替えてください。今、来ている服はだいぶ汚れちゃっているので洗って干しておきます」
洗濯はフレイアの仕事だ。水を生み出す魔術が使えるので適任だった。
もと王女が選択をする光景はなかなかシュールで楽しい。
フレイアとセツナは、なんの中ともなく服を脱いで下着姿になる。そして買ったばかりの服の山を見て、どれがいいか選び始める。
いい光景だ。
「なっなっなっ、なんで、そう躊躇なく脱ぐんだよ。男の前だよ!?」
さきほどまで黙っていたイヴが声を張り上げた。
「セツナはケアルガ様の所有物」
「私は少し恥ずかしいですけど、ケアルガ様がその気になれば……嬉しいかなって」
セツナもフレイアも俺に肌を見せることをためらわない。
フレイアに至ってはチャンスとばかりに誘ってくる。
今日は、ちょうど溜まっている。たっぷり可愛がってやろう。
「セツナ、フレイア。ちょうど、その気になった。服を脱いだところだし。一発やろうか。毛布も買ってきたことだしね」
床の上は痛い。
毛布がある。これは大変すばらしいことだ。
「ん。今日の夜は夜襲でできない。今のうちにやるのは賛成。たっぷり可愛がって」
「私も、今朝は寝坊しちゃってできなかったので……ちょっとうずいています」
二人が潤んだ目でにじり寄ってくる。
そんな俺たちを見て、イヴが顔を真っ赤にしていた。
「そうだ、イヴ」
「ひゃっ、ひゃっい!」
イヴは真っ赤になって変な声を上げる。
すさまじく緊張している様子だ。
「俺たちは、今から重なり合うつもりだ。今のうちにとなりの部屋で着替えてくるといい。今、着ている服は洗いやすいようにひとまとめにしておいてくれ。着替えは多めに買っておいたから好きなのを選んでいいよ」
朝の件で、イヴはかなり怒ったので仕方なく無駄を覚悟で結界を張った部屋を二部屋に増やしている。そちらの部屋に侵入者が現れた場合でも対応できる環境だ。
気配りをしてあげたのに、一瞬呆けた顔をしたイヴは、首を傾げ、そして頬を膨らませた。
「なっ、なんで今、そんなこと」
「そのほうが効率がいいだろう。……それとも、まさか誘われることを期待したか?」
俺がそう言うと、赤い顔をさらに赤くした。
図星のようだ。そんな彼女を見て笑うと涙目になっていた。
「知らない!」
彼女は適当に服を一着手に取り、部屋を出ていく。
本当にからかい甲斐がある少女だ。
笑いながらイヴを見送る。
三人になったことだし、さっそく始めよう。
イヴも興味津々なようだし。
俺の【見切り】は、イヴがとなりの部屋で壁に耳を押し当てていることを見抜いている。
この様子だと、イヴが混ざりたいというのもそう遠くない。
きっかけが必要だな。イヴが俺に惚れる劇的なエピソード。それがあれば、エッチなことに興味が津々なイヴは俺に惚れたから抱いてくれという言い訳ができる。
そんな都合のいいイベントはなかなか起こらないだろうが、必要なら起こせばいい。
「ケアルガ様、まだ?」
「お預けはひどいです」
セツナとフレイアは待ちきれない様子だ。
しょうがない、たっぷり可愛がってやろう。
まあ、せいぜい頑張ろう。壁に耳を押し当て自分を慰めているイヴのおかずになるようにフレイアとセツナはいつもより鳴かせる。俺はなんて優しいんだろう。イヴもきっと喜んでくれる。
◇
なかなか、楽しい時間を過ごしたあとは夕食を食べてすっかり暗くなった街に出ていた。
ことが終わったあと、真っ赤な顔のイヴが戻ってきたがエッチな匂いがした。
本人がばれていないと思っているのが滑稽だ。今後も、イヴが一人でするための材料を提供してやろう。そのうち、本物の俺が欲しくなる。
今回はセツナを連れている。
フレイアとイヴは留守番だ。イヴを敵の前に連れ出すわけにも、一人にするわけにもいかない。
「ケアルガ様、匂いを見つけた。ここからたどれる」
「いい子だ。ご褒美に明日はお菓子を買ってやる」
「楽しみにしてる」
セツナの先導のもと、俺たちは狂牛族たちの隠れ家を探す。
奴らは街の外、森のなかにテントを用意していた。
テントの周辺で、アイアンヘッド・カウが眠っている。
「ついた」
「早速、始めるとするか」
見張りもいない。
襲撃は容易だ。
そうだ、一つ面白いことをしよう。
眠っているアイアンヘッド・カウに近づく。アイアンヘッド・カウと言えどその首筋までは硬くない。
そこに注射針を刺し、薬液を注入。
豹の魔族を壊した媚薬の原液だ。
さて、どんな反応をするかな。
「グアアアアアアアアアアアアアアア」
アイアンヘッド・カウが起き上がり咆哮する。
そして忙しく鼻を鳴らす。
あれは、何かを探している。
そして、テントを見つめた。
「……ネタだったのに、本当にこうなるとはな」
アイアンヘッド・カウはテントに突貫する。
テントが粉々になり、アイアンヘッド・カウがわずらわしげにテントの残骸を振り払うと、その口元には狂牛族の男がいた。
なんて、その男を地面に投げ捨て、前足で両手両足をへし折り、そのまま腰を落とした。
狂牛族の男の腰の骨が砕ける。
「ケアルガ様、あれはなに」
「媚薬を血管に投与して見た。アイアンヘッド・カウは雌しかいない魔物だからね。……その気になって自分と同じ牛の雄を探した結果があれだ」
なかなか、面白い見世物だ。
人間よりは魔族がお好みらしい、俺には目をくれずアイアンヘッド・カウは次々に狂牛族の男たちを襲っている。。
最高に笑える風景が眼前に広がっていた。
だが、そろそろ飽きて来たな。そろそろメインディッシュにいくとしよう。
この程度で、俺が奴らを許すことはありえない。
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