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急増する「ブラックバイト問題」〜学生の未来を奪うほどの驚くべき実態

長時間労働、賃金未払い、セクハラ…
大内 裕和

社会全体にとっても巨大なマイナス

最後に、給付型奨学金制度の導入をはじめとする奨学金制度の改善と、大学・短大・専門学校の授業料引き下げである。

ブラックバイトの広がる背景には、親の貧困化による学生の経済状況の悪化がある。貸与型で有利子中心となっている現在の日本学生支援機構の奨学金は、学生のアルバイトを抑制する機能を果たしていない。

大学・短大・専門学校の授業料の高さは、親の所得が低下するなか、学生が多くのアルバイトをしなくてはならない要因の一つとなっている。

給付型奨学金制度の導入など奨学金制度全体を改善し、教育への公的予算増額による大学・短大・専門学校の授業料引き下げを行うことが、ブラックバイトを無くすことに役立つだろう。

学生の貧困化と非正規雇用労働の基幹労働化によって、ブラックバイトは生み出された。

ブラックバイトは、アルバイトと学生生活との両立を困難にする。高校生や大学生が十分に学べないことは、学生本人の学ぶ権利を奪っていると同時に、将来の労働力の質を低下させている点で、社会全体にとっても巨大なマイナスである。

現在、ブラックバイトで困っている学生の皆さんは、泣き寝入りするのではなく、すでに紹介した「ブラックバイト対策弁護団あいち」、または「ブラックバイトユニオン」などの、相談機関や労働組合にぜひ相談をしてほしい。自分一人では思いつかなかった解決策が見えてくるだろう。

ブラックバイトは、今後の日本を左右する重大な社会問題である。 

大内裕和(おおうち・ひろかず)
1967年、神奈川県生まれ。中京大学国際教養学部教授、奨学金問題対策全国会議共同代表。専門は教育学、教育社会学。著書に『ブラックバイトに騙されるな!』(集英社クリエイティブ)、共著に『「全身〇活」時代』(青土社)、『ブラックバイト』(堀之内出版)、『日本の奨学金はこれでいいのか!―奨学金という名の貧困ビジネス』(あけび書房)など。