ドナルド・トランプ政権は海洋掘削の復活を提案している。もし実現すれば、食物連鎖の底辺にいる小さな生き物たちが大きな脅威にさらされるかもしれない。(参考記事:「温暖化対策の主導権が中国へ?トランプ大統領令で」)
海底下に眠る石油を探査するとき、地中深くまで伝わる強力な音波の反響を利用する方法がある。音の源は、表層付近に沈めたエアガンが圧縮空気を発射するときの爆発音だ。音波で海底を振動させるため、この方法は地震探査と呼ばれる。
大きな爆発音は海に暮らす動物たちの聴覚に影響を及ぼし、すでに海洋哺乳類での被害が報告されている。海洋哺乳類の多くは反響定位によってコミュニケーションや狩りを行っているからだ。(参考記事:「油田資源調査、セミクジラへの影響懸念」)
6月22日付けの「Nature Ecology and Evolution」誌で発表された最新の論文によれば、エアガンによる爆発音が、動物プランクトンにさまざまな影響を及ぼす可能性があるという。動物プランクトンは食物連鎖の底層に位置し、最も重要な海洋生物のグループのひとつだ。海を漂いながら植物プランクトンを食べ、一般的には、海の表層近くで暮らしている。小さなクラゲや甲殻類、幼生期の魚も動物プランクトンに含まれる。
オーストラリア、タスマニア大学および海洋科学技術センターの科学者たちは、研究のために、タスマニア島の南の海でエアガンを使用し、その前後に動物プランクトンを採取した。(参考記事:「海を支える 小さな生命」)
「特殊な染色法を用い、網で捕まえた動物プランクトンの数と生死を確認しました。その結果、エアガンの発射後は発射前に比べ、死んでいる個体の数が2~3倍に増えました」と研究に参加したジェイソン・セメンズ氏はプレスリリースで述べている。
研究チームがエアガンを発射した海域の動物プランクトンを網を引いて調べたところ、比較対照群と比べ、直後の1時間に捕獲した数は6割以上減っていた。さらに、ソナーによる測定で、動物プランクトンの減少は約1200メートル離れた場所でも確認された。これまで影響は10メートル弱とされており、100倍以上の差があったことになる。(参考記事:「【動画】微生物が放つ渾身の一撃、ガトリング砲も」)