本稿が出る10日(月)には、国会閉会中審査で加計学園問題が取り上げられ、前川喜平・前文科事務次官が参考人として出席する。本コラムでは、加計学園問題について何回も取り上げてきたが、前川氏の記者会見でのおかしな発言などが取り上げられることになるだろう。
本コラムで取り上げた前川発言の問題点は以下の3点である。
1.天下り斡旋の違法性を知らなかった
2.石破4条件の立証責任は内閣府
3.部下の言うことは正しい
これらについては質疑が行われるので、その中でこの発言の問題点が指摘されるだろう。もっとも、マスコミは、前川氏を勇気ある告発者として位置づけているので、この点に関する報道はあまりないだろう。マスコミ報道より、後で議事録を見たほうがいい。
国会質疑を聞く上で、加計学園問題の構造を改めて簡単に見ておこう。実は本当に簡単な話なのだ。
問題のはじまりは、2003年3月の文科省告示である(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k20030331006/k20030331006.html)。大学等の申請に関する告示だが、ここで、なんと獣医学部の新設認可は申請を出せない、となっている。つまり獣医学部は門前払いを喰らっている形だ。
これは本コラムで指摘したとおり、「不合理、違法」ともいえる。認可をするかどうかは役所の裁量ではあるが、申請さえも受け付けないとは普通はあり得ないものだ。
普通の役所であれば、この告示を改正して、認可基準についてよりはっきりと書くだろう。文科省に対しても、当然すったもんだしたのだが、埒があかない。そこで、2015年6月の石破4条件がでてきた。このポイントは、2016年3月までに文科省が需要予測について検討する必要があるという期限が切られていることだ。
ところが、延々と9月まで交渉が行われた挙句、そこで時間切れとなった。獣医師会の意向もあり、2017年1月に文科省告示の特例が作られた(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/170104_kokka-monka.pdf)。その内容は、獣医学部に関して、18年度には一校の申請は受け付けるというものだ。
要するに、新設認可の申請を受け付けるかどうかを延々2~3年も議論していたわけだ。そもそも受け付けないという文科省告示にかなりの不合理があるわけで、この特例の結論に誰が異論を挟めるのだろうか。
なお、この特例は、あくまで「申請できる」ということであって、これで獣医学部新設が認可を得ることにはならない。これは文科省内で別に検討されるべきことだ。
安倍首相が「もっと新設できるようにする」といえば、それをマスコミは叩くが、文科省告示の特例は19年度以降白紙であり、そもそも文科省告示そのものを改正するということを示しているのであれば、何も問題のない発言だ。文科省告示もその特例も読まずに批判ばかりするマスコミの悪しき体質がここでも見られたのである。
前述の通り、文科省告示の特例では、申請できるのは1校だけと限定されている。この限定を問題視する向きもあり、10日の閉会中審査ではこれも質疑の対象になるだろう。その中で、18年度に限った今の特例では、さしたる実害がないことも明らかになるはずだ。が、はたしてこれらのことをマスコミは正しく報道できるかどうかのほうが、筆者には問題のように思える。
ともあれ、安倍政権の支持率が落ちているのは事実だ。かといって、民進党の支持は増していない。都民ファーストの国政進出にも疑問符がついている。支持なしが大きくなっているので、国民の不満のマグマが大きくなっているようだ。
そこで本コラムでは、平成以降、つまりバブル崩壊後の政権と経済パフォーマンスの関係を調べて、ポスト安倍政権になり得るものがあるのかないのか、を検討してみよう。