マイナンバーカード普及進まず 利便性低く、京都府内で8%
全国民に番号を割り振り行政事務の効率化を図るマイナンバー制度で、顔写真入り個人番号カードの交付が進まない。制度開始から1年半で、京都府内での交付率は8%にとどまる。制度の周知不足や、情報流出への不安が背景にある。向日市がコンビニでの証明書発行サービス実施を延期するなど、個人番号カードの活用に二の足を踏む自治体も出ている。
マイナンバー制度は2015年10月に始まった。住民登録をしている全国民に12桁の番号を割り振り、国や自治体が、社会保障や税に関する個人情報を効率的に管理する。市町村が16年1月から、希望する住民に個人番号カードを交付している。
京都新聞のまとめでは、府内の26市町村で今年3月末現在の個人番号カード交付枚数は22万244枚で、府内人口の8・4%だった。市町村別では城陽市(10・07%)以外は全て1割未満で、和束町(4・9%)や伊根町(5・2%)、与謝野町(5・4%)が特に低かった。
国は将来的に、個人番号カードに健康保険証や印鑑登録証など複数の機能を持たせる計画だが、現状では身分証明書として以外の使い道がほとんどない。全国民宛てに配られている通知カードがあればマイナンバーの番号は分かるため、個人番号カードを取得するメリットが小さく、普及が進まないとみられる。
綾部市の担当者は「身分証明は運転免許証ででき、若い人が特に敬遠しているようだ」と話す。京田辺市は「カードの交付には本人の来庁が必要で、手続きが煩雑なことも要因では」と推測する。
中にはマイナンバー制度自体に反対し交付を希望しない人もいるという。
コンビニで住民票の写しなど証明書を発行するサービスの導入も個人番号カードを使って可能だが、府内でサービスを導入しているのは、城陽、長岡京、八幡、木津川、精華の5市町にとどまる。向日市も本年度に開始予定だったが、延期した。市市民課の担当者は「コストが大きく、もっと交付枚数を増やさないと採算がとれない」としており、交付率の低さがサービス導入の足かせになっている。
■不信感解消、利便性の向上を
同志社大の佐伯彰洋教授(行政法)の話 個人番号カードの普及率が低いのは京都府だけでなく全国でも同じ傾向だろう。2003年に交付が始まった住民基本台帳カードも、ほとんど普及しないままで、国は同じことを繰り返している。制度開始当初にシステム障害が頻発し、カードの配達が大幅に遅れたことも、マイナンバー制度に対する国民の不信感を高めた。システム構築には多額の税金が費やされており、国は個人情報保護に留意しつつ、カードの利便性を高めて普及率を上げる責任がある。
【 2017年07月09日 09時10分 】