今回は名作です。
この作品を語るのは怖いです。
なんせ、あらゆる角度から既に散々語り尽くされていますもんね。
あ、ニイタカヤマです。
ゴッドファーザー
フランシス・フォード・コッポラ 監督 / 1972年 作品(米)
マフィアの映画です。
ビト・コルレオーネをボスとするコルレオーネファミリー、そのコルレオーネ家の三男マイケルを主人公とした物語です。
ジャンル的には日本の任侠ものに近いです。
が、任侠もののように単純な娯楽映画には収まりません。
暴力描写はもちろんありますがそれだけでなく、家族や血の繋がり、各人の内面的な葛藤まで掘り下げて表現していきます。
基本的なプロットはいかにも日本の任侠映画的ではありますが、仕上がりは全く違います。
舞台は第二次大戦後のニューヨークです。
コルレオーネファミリーを筆頭にいくつかのファミリーがいわば群雄割拠している、そんな時代です。
麻薬ビジネスを認めないビト・コルレオーネは麻薬をもって勢力を広げたいバルジーニ派のタッタリアに命を狙われ重傷を負います。
これをきっかけに今までファミリーのビジネスに関わろうとしなかった三男マイケルの気持ちが変化します。
血の気の多い長男ソニーすら驚く程の行動力で父を負傷させた相手を殺します。そしてファミリーの手によってシシリーに高飛びさせられます。
しかし、報復として長男ソニーが惨たらしくころされてしまうんです。
ビトは心を痛め抗争を終わらせるための会合を持ち、マイケルの安全を担保する事を条件にソニーの報復はあきらめる、と、
ひとまず手打ちをおこないます。
マイケルがニューヨークに戻ってきた時ビトはマイケルにファミリーを委ね引退します。
しかしマイケルはビトが心不全で亡くなった時から全ての報復を開始するのです。
ボスが変わって浮き足立っていたファミリーもこれでマイケルを真のボス、ゴッドファーザーと認めることになりました。
名作です。なので見所はたくさんあります。
しかし、一番は何と言っても空気感ですか。
主演のアル・パチーノやマーロン・ブランド、その息づかい、立ち居振る舞い、表情、どれをとってもとにかく凄いんです。なんて言うのか「間」、とでも言いますか。
「ゴッドファーザー」という作品、この作品が演者全員で、見事に世界観が編み上げられている、そんな感じです。
出演者の誰も「私」を主張するような演技をせず、しかし「役としての個性」はしっかり醸し出してくる。うまい言葉がなかなか見当たりませんが、違うんです。
映画としての構成や技術、そしてストーリーや見せ場、それももちろん凄いんですが、それまでの映画とは、ホント空気感が違うんです。
なかでも特にマイケル役のアルパチーノ、そしてビトを演ずるマーロン・ブランドは特別です。
圧倒的なんです。
この二人の演技は「メソッド演技法」というらしいです。
演技の手法でこうも凄いのか、って軽く調べて見たんです。
軽く、とかは無理でした。
中々難しいです。
ぼくはもっぱら見るの専門で、演技のイロハとかは全くわかりません。
が、素人ながらぼくなりに「メソッド演技法」というものを理解しようと解釈してみました。
従来の「演技」とは観客に、よりわかりやすく伝えるために多かれ少なかれデフォルメして、話し方、立ち居振る舞いを演じていたんです。これはこれでひとつの切り口ですよね。
誇張した事を観客に気づかせずにストーリーや役柄を観客に伝える事ができれば、それは立派な演技とよんでも差し支えはないと思います。
しかしそこに新たな切り口として現れたのが、1947年アメリカのアクターズスタジオに端を発する、「メソッド演技法」でした。
それまでの、いわば作られたデフォルメを伴う演技ではなく、役者の私生活での感情や感覚の記憶を元に、演じる役の内面を理解し感情を追体験すること、で役に同化するんです。
役を、研ぎ澄ました自分の過去に憑依させる、とでもいいましょうか。かつ物語の世界観を、観念的のみならず物理的なレベルまでも把握する。
おそらく役者の消耗は想像を絶するとは思います。
実際、役を突き詰め、追い詰められた役者がドラッグに走ったり自殺してしまったり、という事まであるらしいです。
しかし、 そうすることでこそ自然で完全な演技が可能になる、というのが「メソッド演技法」と呼ばれるものだそうです。
伝わりますか?
もし、専門家の方が読んでたら、余りに拙い説明で恥ずかしい限りですが、大筋は間違ってないと思います。
そして「メソッド演技法」にはもちろん批判的な意見も多々あるらしいです。
ま、そりゃそうですね。真理は一つでもたどり着く手法が一つとは限らないのが世の常ですから。
「ゴッドファーザー」はとにかく凄いです。
凄いんですが、それが「メソッド演技法」によってもたらされたものなのか否か、はぼくには断言はできません。
脚本かもしれないし、技法的なものかもしれない。
あるいはその全て、総合的なものなのかもしれない。
だけど、セリフより表情の動き、息づかい、立ち居振る舞い、が見るものに訴え、記憶にも刻まれる、そんな作品である事は間違いありません。
掛け値無しに名作だと思います。
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