ユネスコ世界遺産に「沖ノ島」日本推薦の構成資産すべて登録

ユネスコ世界遺産に「沖ノ島」日本推薦の構成資産すべて登録
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ポーランドで開かれているユネスコの世界遺産委員会で日本が推薦していた福岡県の「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」は8つの構成資産すべてが世界文化遺産に登録されることが決まりました。
「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」は、福岡県宗像市の沖ノ島や宗像大社など8つの構成資産から成る遺産群です。

ポーランドのクラクフで開かれている世界遺産委員会は、この遺産群すべてを世界文化遺産に登録することを決めました。

このなかには、ことし5月、ユネスコの諮問機関が「世界的な価値とは認められず、除外すべきだ」と勧告した、宗像大社辺津宮や宗像大社中津宮など4つの構成資産も含まれています。

諮問機関の勧告を覆して8つすべて構成資産の登録を認めた理由について、世界遺産委員会は「沖ノ島の古代の祭しと宗像大社に伝わる信仰との間には連続性があり、8つの構成資産すべてを登録すべきと判断した」としています。

今回の登録で国内の世界遺産は文化遺産が17件、自然遺産が4件で、合わせて21件となります。

岸田外相「地元の皆様に深甚なる敬意」

岸田外務大臣は、「古くから神聖な祭祀の場とされてきた沖ノ島は、わが国の古代の国際交流の歴史を示す多くの品々が手つかずの状態で残されている、世界にも類を見ない島だ。今回の登録を心から歓迎すると同時に、古代から続く遺産群の文化的伝統を現代まで連綿と受け継ぎ守ってきた地元の皆様に深甚なる敬意を表したい。今後とも、同資産を含めた日本の世界遺産について、世界中の方々に価値を理解いただけるよう、対外発信を含め関係省庁と連携して取り組んでいく」というコメントを発表しました。

宗像・沖ノ島と関連遺産群とは

「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」は福岡県宗像市の沖ノ島を中心に8つの構成資産からなる遺産群です。
8つの構成資産のうち、沖ノ島は女人禁制で、生えている草や石なども島から持ち出すことが禁じられています。
島からは銅鏡や金製の指輪などおよそ8万点の装飾品などが出土し、「海の正倉院」とも呼ばれています。

このほか、日本最古の歴史書の古事記や日本書紀に記述がある「宗像三女神」が祭られている宗像大社中津宮、宗像大社辺津宮、さらに、上陸することができない沖ノ島を祈る場所となっている宗像大社沖津宮遙拝所です。
そして、隣の福津市にあり、宗像氏の存在を示す新原・奴山古墳群です。

勧告を覆してすべての登録

「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」は、平成21年に世界文化遺産の登録を目指す国内の暫定リストに記載されました。
その後、去年1月に日本政府が「神聖な島として信仰の対象であることなどが世界的に見ても顕著だ」などとして、ユネスコに推薦しました。

ことし5月、登録の決定に大きな影響を与えるユネスコの諮問機関イコモスは、沖ノ島と周辺の岩礁など4つの資産については「世界遺産に登録することがふさわしい」とする勧告をまとめました。
しかし、残り4つの資産の宗像大社辺津宮、宗像大社中津宮、そして宗像大社沖津宮遙拝所と、さらに新原・奴山古墳群については、沖ノ島の古代の祭祀(さいし)が現在の宗像信仰につながったか多くの疑問点があるなどとして、「世界的な価値とは認められないので除外すべき」としました。

日本政府や地元の福岡県などは、世界遺産委員会の参加国に対して8つすべての構成資産の登録を求めていましたが、9日に勧告を覆してすべての登録が認められました。

登録決定に地元の400人から大きな拍手

8つの構成資産すべての世界遺産への登録が決まると、インターネット中継で審議の様子を見守っていた地元の人たちから大きな拍手が起こり、会場は喜びに包まれました。
審議が1日ずれ、地元の宗像市では9日午後4時から「海の道むなかた館」で改めてパブリックビューイングが行われ、おそよ400人を超える人たちが集まりました。
会場では、世界遺産委員会の審議の様子が大型スクリーンでインターネット中継され、登録を支援してきた地元の人や宗像大社の宮司などが緊張した表情で見守っていました。
そして、日本政府が推薦した8つの構成資産すべての登録が決まると、会場からは大きな拍手が起こり、喜びに包まれました。
このあと、「海の道むなかた館」の入り口には、登録を知らせる貼り紙が掲示され、集まった人たちが喜びを分かち合っていました。

福岡県知事「誇りと責任を持って守りたい」

福岡県の小川知事は、災害対策本部の会議を終えた9日午後7時すぎに、世界文化遺産への登録が決まったことについて報道陣の取材に応じました。

小川知事は「イコモスの勧告以降、国を挙げて考え方をしっかり説明し、すべての資産が登録されるよう理解を求める活動を続けてきたので、うれしく思う」と述べました。そのうえで、「私たちの自然観、信仰の形、それに文化というものが国際社会で認められたと思っている。世界にとって貴重な遺産を誇りと責任を持ってしっかり守っていきたい」と話しました。