安倍晋三朝食会5万円:政治資金規正法改正の立法事実

問題は下村疑惑だけではない。パーティ券代の入りのチェックは無法地帯になっている(写真:ロイター/アフロ)

ヤミ献金の温床ではないか、と誰もが思っても不思議はない。

誰がなぜ11人から計200万円を集める?

政治資金規正法では「政治資金パーティーごとに20万円を超えるものについては、支払者の氏名等を報告しなければならない」とされている。その10倍の200万円の代金を1人から受け取りながら、それが政治資金収支報告書に記載されていなければアウトである。

もし、受け取った側が文部科学大臣で、払った側が加計学園の人間なら、なおさら問題だ。

しかし、自民党の下村博文幹事長代行の場合、文部科学大臣時代のそんな疑惑を取り沙汰されると(LITERA)、本人が6月29日に会見を開き(東京新聞)、200万円は、加計学園の秘書室長が個人や企業11者から取りまとめたものだ、と説明したという。

下村氏の言ったことが真実なら1人18万円強の支払いで報告は不要だ。しかし問題は、支払った側が口裏を合わせたウソであっても、そのウソを暴くことが可能な仕組みに、政治資金規正法がなっていないことだ。

政治資金規正法は、「政治家が真実を言う」という性善説に基づいた法律であり、「ザル法だ」と言われるゆえんの1つだ。権力をカネで買うことを厳しく縛れる仕組みにはなっていない。

下村氏は、第1次安倍内閣からカネ問題(日刊ゲンダイ)が取り沙汰された人物であり、今回も、加計学園だけではなく大手予備校についての疑惑も取り沙汰されている(HuffPost Japan)ため、「疑惑」を持たれている本人にとっても、真実を知りたい有権者にとっても、不幸を呼ぶザル法なのである。

立法府たるもの、そのザル穴を、パーティ券1枚からの報告を義務付ける改正を遂げるべきところだが、しないので、何度でも繰り返し「疑惑」が生まれ、政治不信を招き、有権者たちに無用な諦めを生み、投票率を下げることにもつながる。腐敗した政治家にとっては好循環、社会にとっては悪循環だ。

1人5万円強の朝食会で年間6700万円

例えば、安倍晋三首相も、好循環を促進、悪循環を放置している一人ではないか。

2015年度定期公表分の「晋和会」の収支報告書を見ると、年3回ほどANAインターコンティネンタル東京で、「安倍晋三後援会朝食会」を開催している。年3回で1207人が出席し、6740万円を集めている。内訳は以下の通り、5月には373人が出席して2320万円、9月には410人、2074万円、12月には424人、2346万円。1人1食5万5840円の朝食だ。

「晋和会」(代表:安倍晋三)平成27年分 政治資金収支報告書より抜粋
「晋和会」(代表:安倍晋三)平成27年分 政治資金収支報告書より抜粋

たとえば、20万円分のパーティ券(この場合4枚程度)を1者が引き受けたとしても、5人が払ったことにすれば、報告は不要になってしまう。

ちなみに、永田町界隈の常識では、こうした「朝食会」は、政治資金規正法第8条の2に基づいて行うが、5万円の豪華朝食が何百人にも振る舞われるわけではない。人数より少なめの立食を提供して政治資金を得ることが目的だ。

そして、企業人に直接パーティ券を売りつけたり、企業人を官僚に紹介させたり、それを「仕事」とする政治家秘書がいたりして、「パーティ券」の売り買いそのものが、政官業癒着のブラックボックスにもなっている。そして有権者はその実態を知らされないと言っても過言ではない。

そこで、今回、あえて基本的な質問を、電話とFAXによって、安倍晋三衆議院議員事務所にぶつけてみた。

1.年3回ほど「安倍晋三後援会朝食会」を開催されましたが、安倍首相ご本人は出席するものなのでしょうか?(YES/NO)

2.例えば年3回で1207人のご出席人数が書いてありましたが、実際は参加費を払うだけでご出席しない場合が多いと推察しますが、安倍晋三後援会の朝食会でもそうだという理解でよろしいでしょうか。(YES/NO)

FAX送信前後に電話をしてみたが、2度とも「担当がいませんので伝えます」という回答で終わった。6700万円というカネが動く首相の政治資金パーティですらこうだ。

下村氏が向けられた疑惑同様、安倍首相の政治資金についてもまた、1207人が5万円づつを払ったのか、利害関係のある者20万円以上分をまとめて払ったかは、政治資金規正法を根拠にして検証することができない。性善説のルールであり、安倍首相を含めて、政治家たちは皆、自分たちの都合がよいままにしているのが実態だ。

規正法改正の立法事実

一方、支出の方はより細かく報告することになっている。

たとえば、「自由民主党東京都第三選挙区支部」の収支報告書からは、衆議院議員の「石原宏高が政治資金で『スタバひとり朝食』」(週刊文春 2017年3月30日号)をしていたと指摘されたほどだ。石原氏の自宅近くの「ライフ、ローソン、サンクスといったスーパー・コンビニや、マクドナルド、丸亀製麺、そじ坊、天丼てんやなど」の代金も政治資金から支出されていると言う。

政治資金の使途が、政治家の人としての姿勢を有権者に分かりやすく見せた一例だ。

「使途」と同様に「入り」も厳しくする必要性

使途と同様に「入り」も厳しくする必要性を、すなわち政治資金規正法改正のための立法事実を、安倍内閣ほど第1次内閣から現在に至るまで、如実に繰り返し体現した内閣はなかったのではないか。次の内閣を誰が組織するのであれ、政策のPDCAサイクルを、政治資金規正法改正でも回さなければならない。

「晋和会」(代表:安倍晋三)平成27年分 政治資金収支報告書表紙より
「晋和会」(代表:安倍晋三)平成27年分 政治資金収支報告書表紙より

参考

政治資金規正法のあらまし(総務省)

関係配信

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