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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第二章:回復術士は嘲笑う

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第十六話:回復術士はかつてのパーティを懐かしむ

 コロシアムの結界に仕掛けを加えた翌日、俺は氷狼族のセツナ、従者のフレイアとともに街の外に出ていた。
 街の門には常に王国の兵士が張り付き、一人ひとり出入りする人間を調べている。

「ごくろうなことだ」

 さすがに鑑定紙は使っていないか。
 王国もこの街を出入りする人間すべてに鑑定紙を使うのは無茶だ。
 クラスを聞いて回復術士と答えた場合だけ鑑定紙を使っているようだが間抜けとしかいいようがない。

 こんな状況で俺が回復術士と答えるわけがないだろうに。
 俺たちはなんの苦労もなく門をすり抜ける。
 これでは税金と兵士の稼働の無駄遣い。やはり王国は糞だ。

 ◇

 騎乗用のラプトルを駆り、魔物が多い森の中を目指す。
 いつもの通り、俺とラプトルの首の間に小さなセツナが挟まれ、フレイアが後ろから抱き着いてくる。
 ここに来たのは少しでもレベルを上げるためだ。
 強くなればなるほど生存率はあがる。
 とくに、セツナはレベル上限がだいぶ上がってきており、ため込んだ経験値はすべて消費しきった。もうレベル上限があがると同時にレベルがあがることはない。

「ねえ、ケアルガ様。一つ教えて」
「なんだ急に」
「ケアルガ様って、どうして復讐をするの? 憎い相手を殺しても誰も戻ってこない。そんなことのために自分と誰かが傷つくのはバカらしいって思うことはない?」

 なかなか深い質問だ。
 きっと、それはセツナ自身の悩みでもあるのだろう。
 彼女がこんなことを聞いたのは、アンナさんを殺した報いを受けさせるために、近衛騎士団長を殺したことを話したからだ。
 その行為は無駄以外の何物でもない。今回、コロシアムの処刑を止めるために乱入し村人を救う。これには意味がある。
 だが、あの時点で近衛騎士隊長を殺したところで誰も救われない。
 では、どうしてそんなことをしたのか?

「憎いやつがのうのうと生きているだけで虫唾が走る。そいつらが苦しむ姿を見ると心の底から楽しいし、気持ちいい……昂るんだよ。まあ、一言でいば楽しいからやる。それだけだ。生産的じゃないし建設的でもない。ただの趣味だな」

 楽しくて気持ちいい。それ以上は何も望まない。
 そして、復讐のためにすべてをささげるつもりなんて毛頭ない、俺は幸せになりたいのだ。復讐を終えたあとのほうが人生は長い。復讐が終わったら何も残らない人生なんてむなしい。
 その幸せになるための娯楽の一つに復讐があるぐらいの認識だ。俺は面白くおかしく生きるために行動している。
 フレアに復讐したときのことを思い出すと、今でも興奮するし、フレイアとなった彼女を抱くたびにあのフレアを自由にしているということが愉悦になる。
 近衛騎士隊長のレナードが嬲られている様も最高に笑えて興奮した。
 思い出すだけでも笑みがこぼれる。

「ケアルガ様の復讐は楽しいからやってる……そう、セツナもその気持ちはわかる」
「セツナは氷狼族の生き残りを守ったけどさ、それ以上を考えなかったか? 逃げて行った兵士たちの居場所を突き止めて殺そうとか」
「思ったけど、我慢した。それよりもケアルガ様のために役立つことが優先」
「セツナはそれでいいと思うよ。まともな感情だ」

 俺は、そのまともを踏み越えた。復讐をどれだけ楽しめるかはそいつの適正によるし、人によっては楽しくもないのに、そうしないといけない脅迫観念に突き動かされる。そういう連中は不幸だ。復讐を楽しむのではなく復讐にとらわれている。

「ん。セツナはまともでいる。ケアルガ様の復讐はいつまで続くの?」
「どうだろうね。殺したいほど憎い連中はそんなに多くはないかな。あとから湧いてくる連中しらないけど」

 俺は俺から奪うやつを絶対に許さないし許せない。新たに害虫が湧き出したらぷちぷちその都度つぶす。

 セツナが復讐なんていうものだから、一度目のことを思い出した。

 一度目の世界は地獄だった。

 世界を救った勇者のパーティははっきり言って異常だ。
【術】の勇者である王女フレアは俺を犬扱いしひどい仕打ちを繰り返した。

【剣】の勇者は極度の男嫌いのレズで、男嫌いのくせに女を食いやすいからと男装をし男として振る舞う。王女フレアに惚れていて、彼女が犬扱いで俺への仕打ちをすることにすら嫉妬し、汚らわしい男のくせにフレア様に触れるなと言って暴力を振るった。
 フレアはそれを知っていてあえて【剣】の勇者の嫉妬をあおるようなことをして、そのせいで比喩抜きで殺されかけた。

【砲】の勇者は頼れる兄貴分と見せかけて中身は最悪だ。
 やつはショタ専用のホモだ。可愛い少年が大好きで、俺の見た目は大層気に入ったらしい。飯を抜かれて飢える俺に、口移しで食べ物を与えようとしたり、性的ないたずらを日常的に行ってきた。
 やっかいなのは、俺はお前のためにやっているんだと親切の押し売りをしつつ、少しでも奴の期待から外れた反応をすると容赦なく暴力を振るうこと。暴力が収まれば、泣いて謝る。そして……慰めるとか罪滅ぼしとか言いながら俺の体を貪る。
 あげくの果てには、これ以上成長する俺を見ていられない。美しいまま保存すると何度か本気で殺されかけた。フレアが止めなければ本当に死んでいただろう。あれ以上に最悪なホモを俺は知らない。

 冷静に考えると、一度目に世界を救ったパーティはどう考えてもおかしい。フレアが比較的に見えすらする。
 まとめてみよう。

【術】の勇者フレア……二重人格レベルの精神破綻者。表の顔は聖女そのもの。裏側は残虐で弱いものいじめが大好きのサド。他人の痛みを理解できず、利用できるのであればなんでも利用できる氷の女。

【剣】の勇者ブレイド……見た目は好青年で勇者の規範となる存在。その正体は男装したガチレズ。極度の男嫌いかつ、異常なまでに嫉妬深い。気に入った女に近づいた男への精神的、肉体的な仕打ちは想像を絶する

【砲】の勇者ブレッド……勇者の中で最年長。経験豊富で便りになる兄貴分。いついかなるときも冷静で勇者を支え続けた。だが、その実態はショタ専門のガチホモ。そっち方面は一切の自制が利かず、可愛がりはするが思い通りにならなければすぐに癇癪を起す。そのうえ、ショタが成長することを許せず、殺してショタのまま終わらせようとする殺人鬼。

 まともなのは俺しかいない。その俺も薬漬けの廃人で壊れていた。
 途中で正気に戻りはしたが、むしろ正気に戻ったあとのほうが、なまじ意識がある分辛かった。
 よくもまあ、こんな連中で魔王討伐の旅なんてできたものだ。
 むしろ途中で全滅したほうが世界のためだったかもしれない。

「ケアルガ様、笑ってる」
「ちょっと、昔を懐かしく思ってね。仲間のことを思い出していたんだ」
「ケアルガ様の仲間? 少し気になる」
「愉快な連中だよ」

 愉快すぎて殺したくなるぐらいに。
 俺が笑っていたのは、もし【剣】の勇者や【砲】の勇者に会ったときにどうするかを考えていたからだ。
 こっちの世界のあいつらが、まともなら見逃そうと思う。未来に罪を犯すからと言って罰を与えるキチガイじゃない。

 だけど、あのクズどもが真人間になっているなんてありえない。

 そうだな、もし【剣】の勇者がクズなら大好きなフレアの見ている前で男どもに輪姦でもさせようか。きっと喜んでくれるだろう。俺は優しい、男の良さというものを魂の底まで刻んで、男なしでいられない体にしてやる。ガチレズの心を残したままで。

 もし【砲】の勇者がクズなら二度といたいけな少年たちに悪さができないように両手両足を切り落とし、局部と舌も奪ってやろう。だれも近づかないぐらいに醜悪な顔にして、一生最底辺を這いずりまわるようにしてやる。
 そうだ、やつには勇者業で得た金で得た自慢のコレクションがある。やついわく成長しすぎるまえに時を止めて保存しているもの。あれを利用すればより深い絶望を味合わせられるだろう。

 そろそろ狩りのポイントに到着。昔を懐かしむのは終わりにしよう。

「セツナ、フレイア、気を引き締めろ。そろそろ魔物の群れがいるポイントだ」
「ん。わかった」
「ケアルガ様、今日はがんばります!」

 二人が気合を入れ始める。

「フレイア、俺が教えた魔法をこの場で使ってくれないか?」

 実は、戦力を増加させるためにフレイアに彼女が使えそうな魔術を教えていた。

「やってみます。【熱源索敵】」

 その魔法は火の魔術の一種。
 熱源を感知する索敵魔法。

「見つけました。南東二百メートル先に、魔物が三匹固まってます。形状からしてオーク種です!」
「さすがはフレイアだな。いい腕だ」

 ラプトルをフレイアが指示したほうに走らせる。
 普通の魔術士ならせいぜい三十メートルが限界だというのに、今、彼女は二〇〇メートル先の魔物をとらえた。
 最大レンジはさらにその先。

 こういった、索敵魔法は下手な攻撃魔法よりもずっと価値がある。
 敵の位置がわからなければどれだけ攻撃力があろうと意味がない。
 今までのフレイアは、ただの大砲でしかなかった。斥候による情報収集がないとその価値が発揮できない。

 だが、この魔術を得たことでフレイアは変わった。
 すべての敵を捕らえる最高の目を得て、単独でも機能するし不意打ちも受けにくい。
 気配を消そうが、音を立てなかろうが、身を隠そうが、体温を消すことはできない。そんな優秀な索敵を数百メートル先まで可能。どこにいるかすらわかれば、フレイアならどれだけ離れても狙撃できる。
 反則とも言っていい魔術だ。さすがは【術】の勇者というところか。

「ケアルガ様、この魔術はおそろしく便利ですね」
「まあな、俺が作り出した魔術だからな。絶対にこの魔術のことは人に言うなよ」

 ちなみにこれは俺のオリジナル。
 この世界で使えるのは俺とフレイアだけだ。絶対に秘匿する必要がある。

 便利ということは他人に利用されれば厄介ということであり、さらに言えば、こちら側がどんなにうまく隠れようが容易に発見できるという事実は伏せておいたほうがいいだろう。油断した敵の隙をつける機会がかならずある。

 フレイアが見つけた敵の前にたどり着いた。
 さあ、狩りの始まりだ。
【熱源感知】のおかげで、最高効率でレベル上げができるだろう。たっぷりとレベルあげをして、処刑に備えよう。
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