大手製薬会社に勤めるMRが言う。
「製薬会社が高い薬を売りたがるのは、仕方がない。薬の値段には、広告宣伝費や、研究補助の名目で大学の先生に寄付した研究費、そして全国で6万人といわれるMRの人件費などが反映されていますから。
MRは正しくは『医薬情報担当者』と言いますが、要するに先生のところに行って『この薬はこういう患者さんに使ってください』『これ、何とか使っていただけませんか』と頼むのが主な仕事です。
降圧剤などは、言ってしまえば『処方してもしなくても、死にはしない』薬ですから、どのメーカーの薬を使うかは、『MRとの人間関係で決める』という先生も、実は多いんです」
現在、医薬品の売り上げランキング上位には、高価な新薬が並んでいる。昨年の国内1位・4位は、ともに同年発売されたばかりのC型肝炎の薬ハーボニーとソバルディ。'07年に認可された抗がん剤のアバスチンや、'09年に発売された糖尿病薬のジャヌビアなど、比較的新しい薬の名前ばかりだ。
「ハーボニーは、1ヵ月あたりの費用総額が200万円超えという、超高額な薬です。また、今話題のがん治療薬オプジーボは、年間の費用が3500万円(いずれも患者負担は3%)とケタ違い。オプジーボは、当初は皮膚がんの薬として'14年に保険適用が認められましたが、その後肺がんにも使えるようになって爆発的に売り上げが伸びたのです。
これらの薬は確かに薬効はあるのですが、まだ症例が少なく、どんな副作用が起きるか完全には分かっていません。しかも、血圧や糖尿病の薬と違って、副作用が命にかかわる可能性も高くなる。
もし今後、重大な案件が発生すれば、下手するとその薬自体にストップがかかりかねません。患者にとってもメーカーにとっても、いわば両刃の剣です」(前出・MR)
究極の「高くて危ない薬」——今まさに、「オプジーボのような高い薬を医療保険でまかなうと、国の財政が破綻してしまう」という激論までも起きている。