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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第二章:回復術士は嘲笑う

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第十三話:妹姫は姉姫に思いを馳せる

~???視点~

「レナードが行方不明になったの?」

 王国の一室で騎士から報告を受けた少女が不機嫌そうな顔をしていた。
 彼女は、この国の王女でフレアの妹に当たる。
 レナードというのはかつてフレアの近衛騎士隊長を務めていた男だ。

 柔らかいセミロングの桃色の髪をして愛くるしくかわいい少女だ。その無垢な魅力で見るものに庇護欲の掻き立てさせる

 少女は姉のように【勇者】ではないが、優れた知性を持ち幼いながらも政治方面でその辣腕を振るっている。
 姉と同じ桃色の髪を指に巻き付けていた。
 彼女は不機嫌になると、いつもそうしているのだ。

「まったく、クズの部下はやっぱりクズね。ああもう、あたしも耄碌もうろくしたわ。あんなクズを見て使えるなんて思っちゃった。ほんと、うっとうしいわよね。クズは死んでも足を引っ張るもの」

 クズクズクズと少女は連呼する。 
 彼女がクズと連呼しているのは実の姉である王女フレアのことだ。

 彼女から見ると、王女フレアは頭が悪い出来損ないだった。そのことは身内の前では隠そうとしていなかった。それが許されるだけの成果をあげてきたからだ。

 とはいえ、王女フレアに対して一定の評価をしていた。あの女は頭が悪いが戦略兵器としては有用であり、民の求心を集める偶像としては便利な存在だった。
 バカであることを自覚でき、自分の言うことに逆らわないぐらいの分別があるところも認めてやっていた。

「頭が悪いなりの仕事は与えてやれるのに、まさかあっさり殺されるなんて。ほんとおおおおおにクズ。ジョン!」

 少女がジョンと呼ぶと、黒い肌をした大男が玉座の前で四つん這いになる。

「わん!」

 そのジョンを思い切り踏みつけ、蹴とばす。何度も、何度も。

「はあはあはあ、ありがとうすっきりしたわ。ふう、あの男の代わりを考えないと。まったくせっかくあたしが策を授けてあげたのに」

【癒】の勇者ケアルの村を邪教の村と認定し滅ぼし、村人を囮にする策は彼女が考えて、近衛騎士隊長に実行させた。
 その邪教というのも、実をいうとこの国に芽吹いた健全な新興宗教の一つに過ぎない。

 その教えは亜人も含めてみんな平等というのを含めて、ジオラル王国にとって都合がわるい。だから、セットで葬った。

 新興宗教のほうには、王女殺しの犯罪人がその宗教に染まっているとレッテルを張った上でいろいろと余罪をなすりつけ、【癒】の勇者の村には邪教呼ばわりした宗教にはまっていると言いがかりをつけた。

 この国の正教に邪教認定さえるのは楽だった。なにせ商売敵をつぶせるのだ。嬉々として邪教認定に必要な証拠をでっちあげてくれた。

「まあ、いっか。レナードの代わりは誰でもできるし、きっちり、【癒】の勇者の村の連中の処刑はやろうっと。【癒】の勇者がノコノコでてくるといいなー。あいつ、そんなに強くないし。呼び出しさえすればイチコロのはず。でも、望み薄だなぁ。処刑でからぶったときの保険は用意しておくからいっか」

 彼女が保険と言ったのは隣国の勇者だ。
【剣】の勇者。
 現時点で最強の勇者であり、【術】の勇者であるフレアに惚れていた。
 最高の手足となって【癒】の勇者を追い詰めてくれるだろう。

「だけど、アレ。気持ち悪いのよね」

 少女は心底嫌そうな顔をする。【剣】の勇者の性癖は理解できない。世間一般では騎士道精神にあふれる美少年で通っている彼には、秘密があった。
【剣】の勇者は男装の麗人でありレズだ。

 その正体が女であることを知る者はごく一部しかいない。
 もし、男なら勇者同士ということもあり、シンボルとしての意味合いを考慮してあの姉にあてがってもよかった。
 だが、さすがに王女をレズに差し出すわけにはいかない。
 距離をとらせるように働きかけていた。

 だが、クズは死んだ。
 ならばこそ、心置きなく【剣】の勇者の恋愛感情は利用して害虫駆除として使える。

 王女フレアのかたきをとって欲しいと言えば、すぐにこちらに出向くと考え手を回したのだ。
 そして、もくろみ通り己の”愛情”というわけのわからないもののためにこちらに向かってきている。

 処刑の際に【癒】の勇者を始末できなければ次はアレが活躍してくれる。
 それにしても……。

「あのクソレズ出迎えるのあたしじゃん。あああ、きっついなああ。あのクズのために悲劇に酔った妹の振りするの。あたし、あいつ嫌いだし」

 想像しただけで彼女には鳥肌が立っていた。
 その不快感で発生したストレスをジョンに叩きつける。
 ああ不快だ。

 クズで無能な姉も。何もできずに行方不明になった近衛騎士隊長も、気持ち悪いレズの【剣】の勇者も、その原因である【癒】の勇者も。
 全部、全部不快。

 この行き場のない気持ちはジョンを殴るだけではすっきりしない。
 そうだ、ちょっとストレス解消にあれをしよう。
 氷狼族の村では失敗したけど、後回しにしていた連中をこの機会に処理して、もし気に入った子がいればジョンの代わりにペットにしよう。

 今度は少しは優しくしないと。ジョン以外のペットはすぐに壊れてしまう。ジョンは丈夫だが飽きてきたのだ。新しいおもちゃは大事に使おう。
 亜人は人間より壊れにくいから少しは長持ちするだろう。
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