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【社会】

「電通事件 長時間労働だけでない」 遺族側弁護士が訴え

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 新入社員高橋まつりさん=当時(24)=の過労自殺を機に捜査が始まった広告大手電通(東京)の違法残業事件は、東京地検が法人としての電通を略式起訴し、捜査が終結した。事件では、長時間労働が注目を集めたが、遺族側はまつりさんが受けたパワーハラスメントも問題視していた。いじめなどを原因とする精神疾患の労災認定は年々増加。遺族代理人の弁護士は、パワハラの法規制の必要性を訴える。 (福田真悟)

 「電通の刑事処分は当然。改めて、一刻も早く電通の社風と労務管理の改善を行うように求めます」

 略式起訴を受け、まつりさんの母幸美(ゆきみ)さんは七日、電通の体質改善を訴えるコメントを発表した。幸美さんは労災認定後の一月、電通側と交わした再発防止の合意書にも、パワハラ防止の条項を盛り込むことを要求し、電通側に認めさせていた。

 まつりさんは生前、上司の言動をツイッターなどに書き込んでいた。「上司から女子力がないだのなんだのと言われるの、笑いを取るためのいじりだとしても我慢の限界」。ほかにも、「今の業務量でつらいのはキャパ(容量)がなさ過ぎる」と言われたこともあったという。電通は昨年十二月の会見で、まつりさんに対する上司の対応について「パワハラとの指摘も否定できない」と認めている。

 政府が進める「働き方改革」の最大の焦点は残業時間の制限だった。今春決まった上限時間は一カ月最大百時間未満などで、「過労死ラインに近い」などの批判もあったが、これまで事実上の青天井だった残業時間に法的な上限が設けられることが決まった。

 長時間労働に比べると、国のパワハラ対策の動きは鈍い。働き方改革の実行計画でも「職場のハラスメント防止を強化するため、対策の検討を行う」と記すのみ。法的な規制まで踏み込まなかった。

 しかし、過労自殺につながるうつ病などを防ぐ上で、パワハラ対策は急務だ。二〇一六年度、精神疾患にかかり、労災認定されたのは一九八三年度の調査開始以来、最多となる四百九十八件。原因で最も多かったのは「嫌がらせやいじめ、暴行」の七十四件だった。〇九年度の十六件から四・六倍となっている。

 まつりさんの遺族代理人の川人(かわひと)博弁護士は七日、略式起訴を受けての会見で「パワハラ規制について、日本はヨーロッパの先進諸国などと比べて著しく遅れている」と指摘。「法律の制定を含めて、ぜひやってほしい」と述べた。

 

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