USB Audioによって、Androidの10ms問題が解決する? |
日本ではまだあまり見かけませんが、iPhoneに引き続き、日本でもモトローラ・モビリティ・ジャパンが発売した「Moto Z」やau・SoftBankから発売された「HTC U11」では非搭載となっているなど、Androidでも3.5mmイヤホンマイク端子が採用されなくなり始めています。
長年に渡って3.5mmイヤホンマイク端子を利用してきましたので、この変更は多くのユーザーにとって非常に大きなデメリットだと思われますが、メリットについて考えたことはあるでしょうか。
【USB経由で音声を扱う規格、USB Audio Device Class】
3.5mmイヤホンマイク端子を利用しなくても音声を扱う規格としてまず思い浮かぶものと言えば、Bluetoothが一番に思い浮かぶかと思います。ですが実は、USBを利用して音声を扱う規格も存在します。それが「USB Audio Device Class」です。
現在はUSB Audio Class 3.0が策定されており、最近はスマートフォン(スマホ)でも採用率が上がっている「USB Type-C」端子におけるUSB Audio転送の仕様を策定しています。
USBデバイスには、USB Audio ClassをはじめとしたUSB Class Compliantという規格が存在しており、この規格に準拠していれば特にドライバを導入しなくても機器に接続することができます。
このおかげで、規格にさえ準拠していれば、別のOSで動くデバイスに挿しても問題無く認識してくれるようになります。
また、USB Audioではユーザーが操作してから、音声が出力されるまでのタイムラグ、レイテンシーが低いという特徴も有ります。
【Androidには10ms問題というものが存在する】
本題に移る前にAndroidが抱える10ms問題について簡単に説明します。スマホなどのデバイスにおいてユーザーが操作してから音がスピーカーから鳴るまでの間にタイムラグ、遅延(レイテンシー)が発生してしまいます。
もちろんこのラグを0にすることは技術的に非常に困難で、どれだけ優秀なデバイスであっても、タイムラグを0にすることは不可能です。
しかし、ありがたいことに人間の認識スピードもそこまで早くないため、このタイムラグが10ms以下であれば、リアルタイムに音が鳴っていると認識することができます。
iOSデバイスはこのレイテンシが10ms以下となっているため、リアルタイム性を要する演奏アプリのようなものであっても難なく使いこなすことができます。しかし、Androidの場合には現在流通している端末の大半はこのレイテンシが10msを超えています。
こちらは「Nexus 9」を利用した際のレイテンシ測定結果ですが、35.8msかかっていることが分かります。これでは10msを超えてしまうため、リアルタイム性が必要となるオーディオアプリで快適な操作を行うことができません。
iOSアプリには多数のDAWをはじめとしたオーディオアプリが存在していますが、Androidにはこの10ms問題があるため、オーディオアプリの数が少ないのです。
スマホなどのモバイルデバイスでこういったオーディオアプリを使いたいと考えるユーザーは現時点ではiOSデバイスを選ぶほかなく、選択肢が限られた状態にあります。
そうした中での、AndroidにおけるUSB Type-CによるUSB Audio実装はそんな問題を解決できる可能性を秘めています。
【ただし、USB Audio Classに対応したAndroidは数が少ない】
USB Audio Class 3.0に準拠したものであれば、USB Type-C経由で音声出力が可能となりますが、そもそものところ、USB Audio Classに対応したAndroidはまだ数が少ない状況にあります。ただし、その状況が改善されそうな動きが発生しています。Moto Zや発売間近のHTC U11などでは3.5mmイヤホンマイク端子が廃止され、USB Type-Cにイヤホンを挿せるモデルが増えてきました。
今後業界がこの流れに乗っていけば、USB Audioに対応したデバイスが増えてくることが予想できるため、同時に10ms問題を解決してくれるかも知れません。
記事執筆:YUKITO KATO
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