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待っていてね、ブルーインパルス
真っ青な空が広がる11月3日。晴花は埼玉県狭山市にある、航空自衛隊入間基地を訪れていた。隊員数的に航空自衛隊最大規模の基地であり、首都圏に位置する入間基地は、例年「晴れの特異日」として知られる、11月3日の文化の日に航空祭を開催している。基地内を線路が通っており、航空祭当日は西武池袋線稲荷山公園駅に臨時改札が設けられ、駅から直接基地内に入ることができるので、会場は10万人を超える来場者でとても混雑していた。
入間基地は晴花の夢が始まった場所だ。それは今から2年前の2017年のことだった。友人と一緒に入間基地航空祭を見に来た晴花は、一人のドルフィンライダーのアクロバット飛行に、一瞬で心を奪われてしまったのだ。「バード」のタックネームのとおり、風に乗った鳥のように優雅に飛び、スワローのタックネームの5番機パイロットと、息の合ったデュアルソロを飛ぶその姿に晴花は憧れを抱き、自分もドルフィンライダーになりたいと、強く思ったのである。
そして展示飛行が終わったあと、幸運にも晴花はバードのドルフィンライダーと、少しの時間だったが話すことができた。勇気を出した晴花が、ドルフィンライダーを目指して頑張りたいと伝えると、彼女は「心の翼を広げて頑張ってね!」と、満面の笑顔で応援してくれて、たまたま近くにいた超イケメンの5番機パイロットも、彼女に促されて「頑張れよ」と言ってくれたのだった。
午後13時に航空祭のラストを飾るブルーインパルスの展示飛行が始まった。迫力満点のダイヤモンド・テイクオフ&ダーティーターン。切れ味鋭いフォー・ポイント・ロール。空いっぱいに広がるサンライズ。そして新しく追加されたデュアルソロ課目のフォーチューン・クローバーなど、ブルーインパルスは入間の青空にアクロバットを描き、集まった人々を感動の渦で包み込んでいく。いつ見ても変わらない、見る者の心をすっきりとさせる展示飛行だった。
(待っていてね、ブルーインパルス。わたしはドルフィンライダーにはなれないけれど、いつか必ずみんなに会いに行くから――)
心の中を爽やかな風が吹き抜けていくような感覚が晴花を包み込む。晴花が見上げる青空には、ブルーインパルスが描いたスター・クロスが、まるで本物の星のように輝いていた。

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