マリコさんの【オリジナル】は人をくさすことばかりですが、今回の台風18号豪雨での救助ヘリの活躍は賞賛に値します。日本の自衛隊、警察、消防、そして海上保安庁は「世界で最も効率のよい救助」を行ったと評価します。
あきらかに東日本大震災の教訓が生きた例でしょう。
実はマリコのお友達の空自幹部と海自ヘリ・パイロットが、震災の際の誘導をめぐって口論になりそうになったことがあります。当時、被災地の空域管制は空自が担っていたのですが、飛来した当該パイロットが空域に達しても「NOW BUSY!!」の一言で切り捨てられたということです。一刻も早く現場につきたい気持ちのパイロットと、苦労しながら効率よく誘導したいという管制官がぶつかった感じでした。また、そこまでいかなくても「縦割り(組織)の壁を感じた」という関係者の意見を多数聞きました。
あれから4年半。話し合いやら合同訓練やら、さまざまな工夫と訓練が現場で行われてきました。今回の豪雨でヘリ運用についてはテレビを見る限り、その訓練や工夫が生きたと感じます。なにより38機を集中的に現場投入し、半日で200人以上救出という数が証明です。
さて、「報道ヘリが邪魔」というネットで見受けられますが、マリコから見れば、それは救助ヘリの運用をまったく知らないか、理解をしてない人・・はっきり言って「モノを知らないバカ」の意見です。
大震災の際、現場に行った救助関係者が口を揃えていうのは「救助でもっとも大切なことは情報」です。今回の豪雨のように、街が水没状態では地上救助部隊からの情報は断片的です。やはり頼れるのは空からの情報です。そこでヘリテレ・システム(ヘリにカメラを積んで指揮所に映像を中継するシステム)を持ったヘリを別に飛ばすのが定石です。
ヘリテレを持ったヘリは情報収集ツールとしては有効ですが、広域に要救助者が多数いる場合、救助活動に「限られた資源」(機体と乗員)を投入すれば、ヘリテレに多くの機材は割けない。そこで指揮官と幕僚(参謀)が“重宝”するのが報道ヘリからの映像です。東日本大震災の時にも、指揮所にはチャンネルごとのテレビがありました。これは休憩時間の娯楽用ではなく、立派な情報収集ツールなのです。
今回、NHKも民放もライブで中継を行っておりましたが、常総市のタクシー運転手さん(電柱おじさんと呼ばれている人)の家族とご近所のご夫妻の救出映像を見て「この救出作戦の指揮官は、冷静で頭がいい!!」とマリコは唸ってしまいました。
一時、電柱おじさんの奥さんは家ごと流され、お隣さんに流れ着いた状態。その近くには犬連れのご夫妻。その中で救出順は①電柱おじさんの奥さん②犬連れご夫妻③電柱おじさん・・でした。これには理由があると考えます。
①奥さんは一時、家が流されたうえに水をかぶっており低体温やパニック状態になっている可能性がある。家もすでに壊れていて危険(プライオリティー1番)
②犬連れご夫妻は高齢者のうえ、家自体が流されそうだ(プライオリティー2番)
③電柱おじさんは身体が水没していない(体温低下がない)し、電柱が倒れなければ時間的に持ちそう(プライオリティー3番)
この状況を瞬時に判断したのは現場のパイロットやホイストマン、救難員だけではないとマリコは思っています。これだけ効率よく救助できるのは、客観的に状況を分析して判断してアドバイスや指揮を与える必要があります。優秀な指揮官と情報をかき集める幕僚がいなければ無理なことです。その「目」になったのが中継映像であると確信します。仮にヘリテレが飛んでいたとしても別の場所に向かわせるのが効率的(同じ所を見ている「目」は2ついらない)ですし、その方が他の要救助者を発見、救助する可能性は高まります。
中継映像からは救助の状況だけでなく「要救助者に医療支援の必要があるか」「ヘリがどのくらいの時間で基地に戻れるか」「(何分飛んだので)燃料補給はどのくらい必要か」などなど取れる情報はいくらでもあります。今回の任務にあたった指揮官と幕僚は、中継映像からの情報を適正に処理してもっとも効果のある救助指揮をした・・とマリコは強く思います。
この救出作戦の指揮官と幕僚は尊敬に値します。
繰り返しになりますが、救助完遂という「戦果」を支えるのは情報です。報道ヘリは、人に情報を知らせるという報道本来の「やるべきことをやった」だけであり、救出部隊の「目」の役割を果たした・・とマリコは考えます。「邪魔だ」といって排除すればそれだけ非効率的となり「戦果」を失うだけです。批判のための批判は、本来の救助という目的を見失わせるだけです。
ただ、報道機は航空法で定められた最低安全高度150メートル以下に降りないことと、122・6MHz(共通無線波)を開かない(つまり、他機から連絡が取れない状態)で飛ぶことはやめてもらいたいと思います。撮ることだけに熱中しないで、自機の安全のため、救援機の円滑運用のため、そして本来任務の国民の知る権利に応えるためにも、高度を取って見張りはしっかりとしましょうね(航空局の役人か=笑)。