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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第一章:少年はすべてを思い出し回復術士になる

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第十三話:回復術士は新たな街へ思いを馳せる

 旅に必要なものを購入した俺は元フレアであるフレイアと共に街を出た。
 隣街への馬車の定期便を使おうと思ったが、この厳戒体制のせいで馬車は足止めをくらっている。

 そのおかげで徒歩で行くことになった。
 今はちょうど街を出たところだ。あっさりと検閲は通過できた。当然だろう、指名手配されているのは俺ではなく近衛騎士隊長なのだから。

「フレイア、荷物をしっかりと持っておけ」
「はっ、はい、ケアルガ様」

 まだ、ケアルガという新しい名前に慣れない。反応にワンテンポ遅れる。

 俺とフレイアは重い荷物がぎっしり入ったリュックを背負っている。
 なにせ、隣の街まで数十キロある。
 水場の確保ができるかも怪しいのでたっぷりの水と食料、それに着替え、その他もろもろでかなりの重さになっていた。

 それだけの荷物を用意するとなると、出費も大きかった。

 旅は装備品をけちると後悔することになるので、二人分、軽いが丈夫な素材の布製で、しかも縫製がしっかりしている服一式と体を覆えるマントを購入した。

 さすがに、魔術付与エンチャントされているものは手が出なかったが、そのうち自分でやろう。錬金魔術と俺の知識なら時間さえあればできる。
 金属の鎧のほうが防御力は高いが、それは論外。
 長旅に、金属鎧を着ていく奴は頭の足りない馬鹿だ。

 他にも丈夫な水筒や保存食、寝袋などなど。
 手持ちの金を半分ほど使った。早急に金策が必要だろう。

「少し、待ってください。ケアルガ様。荷物が重くて」

 フレイアが若干息を荒くしている。
 ふむ、ステータスの筋力値的には、あの荷物量でも問題ないと思ったが、おそらく体を使うことに慣れていないせいで、少しの運動で値をあげるのだろう。

「フレイアなら、耐えれるはずだ。頑張ってみよう」
「でも、こんな思い荷物初めてで、もう少しゆっくり」
「これはフレイアのためだ。戦場で疲れたから動けないなんて言ったら死ぬぞ。それに、さっきも言ったけどフレイアならできるはずだ」

 本当に能力が足りていないならしょうがないが、いくら魔法職とはいえ、フレイアのレベルは25もあり筋力は超人の域にある。

 つまりは、気持ちの問題で自分の限界を低く設定しているだけだ。それは無理やり体を動かさないと直らない。
 甘やかしていては永遠にそのままだろう。

「わかりました! ケアルガ様の期待に応えるためにもがんばります」

 俺の言葉を聞いたフレイアは足を早める。少なくてもやる気になってくれたみたいだ。
 まあ、体力が尽きたり、筋肉痛になったらその都度【回復ヒール】してやろう。
 隣街に着くころには、だいぶ改善されているだろう。

「そういえば、ケアルガ様は隣街のラナリッタを目指しているんですよね。何か目的があるんですか?」
「仲間を集めるためにね。俺もフレイアも後衛だから前衛がほしい」

 ちなみに、フレイアには俺はとある国の貴族で、武者修行をしながら、世界を救う旅をしているという設定を信じ込ませている。
 まあ、嘘ではない。世界中を旅するつもりだし、強くなることに余念はない。さらには、俺は魔族との戦争を終わらせるつもりでもある。

「なるほど、たしかにあそこには強い冒険者さんがたくさんいますからね」

 ラナリッタは、一言で言えば混沌とした街だ。
 合法、非合法問わずにたくさんの商品があつまり、街に入るのも出るのも緩々だから、人が多く集まる。
 だからこそ、半分ヤクザみたいな冒険者たちが好んで住んでいるのだ。強者であれば住みやすい街だ。

「冒険者には期待していない。何を期待しているかはついてからのお楽しみだ」

 俺の目的は奴隷売り場だ。
 この国で流通している奴隷の六割はラナリッタで売り買いされる。

 奴隷目的で捕えられた亜人ちはラナリッタに集められるのだ。冒険者たちの非合法の依頼の中には、少数民族の亜人の村を襲って、女、子供をさらい奴隷マーケットに流すというものもある。

 その存在自体、個人的にはあまり好きではない。だが、使えるものは使う。せめて、買った奴隷に俺に買われて良かったと思えるような待遇を与えてやりたい。

 ただ、奴隷購入時には注意が必要だ。
 奴隷のあたり外れは大きい。
 たいてい、無理やりさらわれた亜人だから、状態の悪いものも多く、買ってすぐ死ぬこともざらだ。
 素質値やレベル上限のよしあしも運しだい。鑑定紙つきの亜人は値が張る。

 とはいえ、俺にはこの【翡翠眼】と【回復ヒール】がある。物理攻撃・防御。素早さの素質値が高い亜人を厳選して購入してみせるし、たとえ、傷ものであろうが癒せる。

 俺とフレイアはもくもくと歩く。
 そんな中、俺はたまに野草やキノコを摘んでいた。一つの金策を思いついたのだ。うまくいけば次の街で金になる。

 レベルが高い俺たちは足も速い。このペースなら野宿は二回で済みそうだ。
 そんなことを考えていると、フレイアが声をかけてきた。

「そういえば、さきほどから草やキノコを集めていますがなんのためですか?」
「路銀を稼ぐためにね」

 そういいつつ、手にもった籠とその中身を見せる。

「それは?」
「薬に使える野草やキノコだ。俺は錬金魔術が使えるから薬効の高い成分を抽出し、魔力付与エンチャントすることでポーションにできる」
「そんなことができるんですね。驚きました」

 尊敬の混じった目で俺をフレイアは見てくる。
 俺は苦笑する。
 錬金魔術は応用性が広い、戦闘以外にもこうして生産系のスキルとしても使える。いや、ある意味こちらがただし使い方だろう。

回復ヒール】のほうは楽で手っ取り早いが、悪目立ちする。その点、薬師なら【翡翠眼】と錬金魔術のおかげで効果の高いポーションが安く作れて、目立たずに儲けられる。
 それに、錬金術師という立場を偽証できる。

「街につけば、がんばって売りましょうね」
「まあ、フレイアがいてくれれば売れるさ」

 俺だけならどんなにいい薬を作ってもアピールが難しい。
 だが、フレイアというとびっきりの美少女がいれば、客はすぐによってくるだろう。優れた容姿はそれだけで武器になる。
 客さえ来れば品質で勝負できる。そうなれば、勝ったも同然だ。錬金術師の力で作ったポーションなのだから。
 ひとまず、路銀についてはなんとかなりそうだ。 
 俺は【翡翠眼】に力を入れて次々に薬草とキノコを集めていった。

 ◇

 そのあと、二時間ほど歩いてから道からはずれ森のひらけた場所に野営の設置を始める。

 フレイアにやり方を教えながら野営の設置をする。
 彼女は四苦八苦しながら、覚えていく。頭はいいし器用なので、あと二回も一緒にすれば任せられるだろう。

 野営中に魔力の気配を感じた。
 そちらを向くと、一本角の生えた兎のような魔物がこちらを見ていた。
 ラッキーだ。俺はにやりと笑って、街で購入し懐にしまってあったナイフを投擲する。
 ナイフが兎の額に突き刺さった。

「ぴぎゃっ!?」

 その言葉を最後に兎が物言わぬ屍となる。

「よかったな、フレイア。保存食のはずだった夕食に肉が並ぶぞ」
「あの、ケアルガ様、あれ、魔物ですよ。魔物なんて食べたら、お腹を壊しちゃいますよ」

 その指摘は正しい。
 魔物と普通の動物の違いは、瘴気を気に宿しているかどうかで決まる。

 そして、瘴気は人体に対しては毒だ。
 魔物の肉を喰らえば、ただではすまない。

 だが、俺が吸収した知識の中には、その瘴気の取り除き方がある。
 とある賢者を【模倣ヒール】したときに手に入れた情報だ。大昔の英雄ソージの書いた論文にその手法が記されていた。

「まあ、大丈夫だ。それに強くなるために必要だしな」

 べつに俺だって好き好んで面倒なことをしてまで魔物を食べたいわけではない。

 そう、大昔の英雄の論文にはこう書いてある。魔物には人間が強くなるための因子があると。
 実際に、俺のもつ【翡翠眼】でもその因子が見えていた。

 あの肉を喰らえば、俺の肉体に適合し、素質値そのものがあがる。
 そう、一度【改良ヒール】し最適化した肉体の素質値はその総量を増やすことができない。
 だが、その唯一の例外が魔物の因子を適切な形で取り入れること。

 俺は笑いながら、一角兎の肉をばらす。
 少し、懐かしくなった。前世も同じことをした。嫌がらせで食事を抜かれることが多かった俺は、こっそりとパーティを抜け出し、大昔の英雄の論文の手法で瘴気を取り除いた魔物を喰って飢えを凌いだ。

 あるいは、そのおかげで最後の決戦で魔王を圧倒出来たのかもしれない。あのときの俺は、【回復ヒール】の熟練度が極まっており、瞬時に今必要なステータスにすべての素質値を集中させるなんてことまでできた。上昇した素質値の一点集中。それこそが俺の目指す最強のスタイル。

「フレイア、すぐに美味しい夕食ができるから楽しみにしておいてくれ」

 さて、美味しい、美味しいディナーといこうか。
 魔物料理も案外悪くない。
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