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ワタミの求人広告を検証してみたが、やっぱりワタミはダメなのでは

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4.ワタミの給料は時給換算でいくら?

4-1.基本給+営業手当からの算出

4-1-1.基礎時給の計算

私は残業代請求の依頼をよく受けるので、残業代の算定ベースとなる時間単価の計算は日常的に行っている。

この時間単価に法律上定まった呼び方はないが、私は「基礎時給」と呼んでいるので、本稿でも以下「基礎時給」と呼ぶ。

基礎時給の計算方法は以下のとおり。

1. 年間の日数(365または366)から年間休日日数を引いて、年間所定労働日数を算出する。
2. 上で求めた年間所定労働日数に1日あたりの所定労働時間(9時間拘束の1時間休憩なら8。)を乗じて、年間所定労働時間数を算出する。
3. 上で求めた年間所定労働時間を12で除して、年間平均月間所定労働時間数を算出する。
4. 賃金月額を、上で求めた年間平均月間所定労働時間数で除して、基礎時給を算出する。

この手順にしたがって、ワタミ求人広告に記載の賃金月額から、基礎時給を求めてみよう。

1. 今年はうるう年ではないから365日。求人広告によるとワタミの年間休日は107日。よって年間所定労働日数は258日。
2. 求人広告によるとワタミの1日の所定労働時間数は8時間。したがって、年間所定労働時間数は258×8=2064。
3. 年間平均月間所定労働時間数は、2064÷12=172。
4. ワタミの月給20万2100円のうち、基礎時給の算定から除かれる固定深夜手当以外のもの(基本給+営業手当)は、162100+10000=172100円。これを172で割ると、1000.6円(少数第2位を四捨五入)。

ワタミの基礎時給は1000円強であるようだ。微妙な賃金だが、求人広告によると賞与も支給されるようだから、コンビニなどのバイトよりはマシというところか。

4-1-2.基礎時給の算定ベースに営業手当を含めた理由

①諸手当でも労働の対価なら残業代の算定ベースに含まれる

上記の計算では、基礎時給の算定ベースに「営業手当」を含めた。

一般の方は、「残業代のベースになるのは基本給のみで、諸手当は含まれない」と思っているケースが多いが、実はこれは誤りだ。

名目が基本給であろうと諸手当であろうと、実質的に見て労働の対価である限り残業代の算定ベースに含まれるというのが確立した判例だ。

逆に算定ベースから除いてもよいのは、定期代相当額の通勤手当、家賃を基に定められた住宅手当など、実費弁償的な手当の場合。

ただし、名目が通勤手当や住宅手当でも、実質的に見て実費弁償ではなく労働の対価にあたると認められる場合は算定ベースに含まれる。例えば従業員全員に一律同額の通勤手当や住宅手当を支給しているといった場合、実質的には労働の対価にあたると認定されるであろう。

なお、いわゆる固定残業代の趣旨で手当が支給されている場合は、これも算定ベースから除かれる。残業代の算定ベースに残業代が含まれるということは論理的に不可能だから、これは当然のことだ。

②ワタミの「営業手当」が算定ベースに含まれると考えた理由

そこでワタミの「営業手当」を見ると、名目からして通勤手当や住宅手当などの実費的なものではないことが明らかだし、支給基準も一律1万円のようだ。したがって、これが労働の対価にあたることは明らかだ。

だから算定ベースに含まれそうである。

残る可能性として、「営業手当は固定残業代の趣旨なのではないか」というものがある。

固定残業代の趣旨なら算定ベースから除かれる。深夜早朝分は深夜手当が既にあるから、可能性があるのは時間外手当だろう。

しかし、求人広告には、営業手当が固定残業代の趣旨であるとの記載は見当たらない。

固定の深夜手当については明記しているのに、営業手当についてだけ明記がないのは、善良な私が素直に考えると、「営業手当は固定残業代ではないから」だろう。

そこで、営業手当も算定ベースに含まれると判断した。

4-2.深夜手当からの逆算

上記の基礎時給計算が正しいか確認するため、深夜手当3万円からの逆算をしてみよう。

すなわち、深夜手当3万円の計算式は、

基礎時給(1000.6円)×割増率(0.25)×深夜早朝労働時間数(127時間)≒3万円

となっているはずである。イコールでなくニアリーイコールとしたのは、さっき私自身が基礎時給の小数第2位を四捨五入したし、そもそも深夜手当が3万円という切りの数字である上に「127時間」という数字が整数なのはやや不自然なので、ワタミもどこかで数字を丸めている可能性があるから。

だから30000を127で除して、これを更に0.25で除すれば、1000.6に少なくとも近似するはずである。

30000÷127÷0.25=944.9(小数第2位四捨五入)

全く近似しなかった。私が計算した基礎時給よりも50円も安い。

そうすると、先に私が算定ベースに「営業手当」を含めた点が違うのだろうか。

ためしに「営業手当」を除いて基礎時給を計算し直してみる。

161200÷172=942.4(小数第2位四捨五入)

こちらはだいぶ近似する。

ここまで極力計算を正確にするため四捨五入を用いてきたが、実際には労務の現場では、従業員に有利な「切り上げ」を用いることが多い。

そこで、この基礎時給の小数点以下を切り上げ943円とした上で、これに0.25を乗じた割増賃金単価で、深夜手当3万円を除してみよう。

30000÷(943*0.25)=127.3(小数点以下四捨五入)

はい、近似しましたね。

これにより、「ワタミは営業手当を残業代計算のベースに含めていない」ということがわかった。

5.やっぱりワタミはダメなのでは

先に述べたとおり、ワタミの「営業手当」が実費弁償的な手当でなく、労働の対価であることはおそらく間違いない。

それなのにワタミがこれを残業代ベースに含めていないということは、可能性は以下の2つのどちらかである。

1. ワタミが、本来残業代ベースに含めるべき営業手当を違法に残業代ベースから除外している
2. ワタミの「営業手当」は、実は固定残業代の趣旨なのに、求人広告にはその旨記載していない

前者だとすれば論外。

仮に後者だとしても、深夜手当の方はきちんと記載していることを考えると、「営業手当」についてだけ固定残業代であるということを記載しないのは、故意に隠しているのではと疑われても仕方ないだろう。

ワタミの求人広告に対し、誤解に基づく批判もあったのはたしかだが、検証してみた結果、「やっぱりワタミはダメなのでは」というのが私の印象だ。

*1:なお、固定残業代制度は、実態としては「固定分を超過しても超過分を支払わない」という違法な運用をされている場合が多い。ワタミの現場の運用がどうなっているか私にはわからないが、少なくとも求人広告上は、超過分は追加支給するとされているので、言い分としてはおかしくない。

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