ワタミの求人広告が話題を呼んでいるようだ。
月給20万2100円の中に、127時間分の「深夜みなし手当」3万円と、「営業手当」1万円を含むという内容。
これが「127時間も時間外労働させるつもりか」と受け取られて炎上したようだ。
この求人広告についてワタミ側は、概要以下のとおり釈明している。
2. 127時間は理論上の最大値として表示しただけ
そこで、ワタミの言い分と求人広告を突き合わせて検証してみよう。
2.月127時間分の固定深夜手当もただちに長時間労働を意味するとはいえない
3.「127時間は理論上の最大値」の実際上の意味
4.ワタミの給料は時給換算でいくら?
4-1.基本給+営業手当からの算出
4-1-1.基礎時給の計算
4-1-2.基礎時給の算定ベースに営業手当を含めた理由
4-2.深夜手当からの逆算
5.やっぱりワタミはダメなのでは
1.深夜勤務が予定されている場合に固定深夜手当を定めること自体はおかしくない
まず、「所定時間内の深夜労働が生じるため固定深夜手当を設定した」との釈明については、特段おかしなことは言っていない。
労基法上の深夜早朝手当(25%)は、所定時間内の勤務が深夜に及ぶ場合でも支給しなければならない。
したがって、所定時間内の勤務が深夜早朝に及ぶことがあらかじめわかっている企業の場合、固定的な深夜早朝手当を給与に組み込むことはよくあるし、それ自体は悪いことでもない。*1
2.月127時間分の固定深夜手当もただちに長時間労働を意味するとはいえない
次に月127時間という時間について。
これが時間外労働なら所定時間内労働と合わせると月300時間近くになるからとんでもない話だ。仮に残業代をきちんと支給していたとしても、これだけ働かせればブラック企業と非難されても仕方ないだろう。どうも、今回のネット上の批判は、「127時間の時間外労働をさせる」と誤解したことによるものが多かったようだ。その点ではワタミも少々気の毒である。
この件は時間外労働ではなく深夜早朝労働の話だから、「所定労働時間内かつ深夜早朝労働」という部分がどれだけあるかによって総労働時間は異なる。
極端な話、拘束時間が20時から翌朝5時までの9時間である人の場合、休憩1時間を22時以降に取得すると仮定すると、実働8時間中6時間が深夜早朝労働となる。このようなケースでは21日出勤で126時間の深夜早朝労働が生じるから、残業を全くしなくても127時間に近いところまで行く。
このように、件の求人広告からは、「ワタミは大量の時間外労働をさせるつもりだ」とは必ずしも読み取れない。
3.「127時間は理論上の最大値」の実際上の意味
次に釈明2。「127時間は理論上の最大値として表示しただけ」との釈明だが、これは評価が難しいところだ。
「理論上の最大値」というのは、要するに、
・3万円という手当の金額を割増賃金単価(時間給の25%)で割ったところ127時間という数字が出てきただけ
という趣旨だろう。
一般論として、固定残業代の定め方には大きく分けて2つのアプローチがある。
2. 実際に発生しそうな残業時間とは関係なく固定残業代の額を定めてしまい、これを割増賃金単価(時間外労働なら125%。深夜早朝労働なら25%。)で除して固定残業代の枠内の時間を算出するアプローチ。
実際に発生する残業時間と関係なく固定残業代を定めてしまう後者のアプローチは一見不合理のようだが、以下のような理由から広く行われている。
・しかし、残業代の算定ベースや賞与の算定ベースとなる基本給は低く抑えたい
・そこで固定残業代を、最低賃金を割り込まない範囲で多めに設定しておく
という次第。
このようなやり方も、裁判例の示す固定残業代の有効要件をみたす限り適法ではある。
適法ではあるが、賃金を低く抑えるための工夫ではあるわけで、労働者にとって歓迎すべきことではないだろう。
ワタミの釈明を見ると、ワタミは後者のアプローチをとって3万円という金額を定めたと言いたいようである。
つまり、求人広告上見栄えのいい賃金総額を保ちつつ、できるだけ実際の賃金支払を圧縮するための工夫として3万円の深夜手当を定めているということを、ワタミ自身が事実上認めた格好になっている。
「127時間は理論上の最大値」というワタミの釈明について、評価が難しいと述べたのはこうした理由からだ。
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