小林麻央さんが乳がんでご逝去された。享年34歳、二人のお子様を残して、さぞかし心残りだったろう。
31歳という若年での発症だったこと、お母様も乳がんだったことから、遺伝性のがんである可能性を考え、生前、変異があれば乳がんになりやすくなる遺伝子についての検査をうけておられた。その結果は陰性だった。
このことについて『KOKORO 小林麻央のオフィシャルブログ』(平成28年10月7日付け)に
「実際に検査を受けて、結果を待つ人にしか 正直分からない気持ちだと思いますが
(中略)結果を待つまでの間に どんどん 現実を知ることの怖さが つのっていきました。遺伝子検査は 想像以上に センシティブなことだと分かりました。」
と綴られている。
闘病中でおつらかったろうに、さらにこのような心情で検査結果を待っておられたのかと思うと心が痛む。しかし、遺伝子診断をうけた時、誰もが運命を下される最後の審判を待つような気持ちになるのではないだろうか。
はたして、あなたは遺伝子についての検査を受けてみたいと思われるだろうか?
遺伝子診断では有名な二つの例で、思考実験をしてみよう。ひとつめはハンチントン病、不随意運動、知能障害、性格障害などをきたして死にいたる遺伝性神経疾患の場合である。
ハンチントン病は、中年以降に発症する疾患だ。アジア系では100万人に一人程度と発症率は低いのだが、もし、あなたの両親のうちどちらかがこの病気だと診断されたとすると、常染色体優性遺伝なので、あなたが発症する確率はきっかり50%である。治療法はない。
検査をうけたとすると、陽性か陰性か、結果は二つに一つだ。陰性であればめでたしめでたし。逆に、陽性であれば、いずれ必ず発症するので、心理的な重圧は相当に大きくなる。検査をうけなかったら、発症するかもしれないが、それまで丁半はわからない。
さて、あなたは遺伝子に異常を持っているかどうか、調べたいと思われるだろうか?