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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第一章:少年はすべてを思い出し回復術士になる

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第六話:回復術士は大人の階段をのぼる

 王との謁見のため、身を清められ、用意された服に着替え、最低限の礼儀作法を叩き込まれた。
 そんな俺は謁見の間というその名の通りの場所に呼び出されていた。

 俺はメイドたちと共に扉の前までやってくると、付き人と共にやってきたフレアと合流する。
 フレアは魔術士の恰好から、優雅なドレスに着替えているようだ。

「ケアルさん、見違えてびっくりしました。そういった服もよく似合うんですね」
「ありがとう。フレアもすごくきれいだ」
「ふふ、お上手ですね。でも、うれしい」

 お互いに空っぽの言葉を交わす。社交辞令というやつだ。
 そうして、謁見の扉が開き俺たちは中に入った。



「勇者様がたが参られました」

 中に入った途端、仰々しい声が響き渡る。
 冗談のように広い部屋、その奥に設置された物々しく豪奢な玉座。

 一段高いそこには、初老の男性が座っている。
 左右には、この国の重鎮と思われる貴族たちが並んでいた。
 たかが、村人一人を出迎えるのにここまでするとは。
 いや、考えてみれば当然か。

 それだけ、勇者という存在が規格外なのだろう。
 通常なら、20~30というレベル上限が設定され、それ以上に強くなれない。
 だが、勇者は無限に強くなる。さらに自分だけでなくパーティ全員の経験値を二倍にするというスキル。
 加えて男性の勇者は、とある行為により他人のレベル上限を上げることすら可能。
 極めつけは、もともと持つクラスを高次の次元へ引き上げるという特性。
 勇者という存在は、たった一人で千人の兵にも勝る。

 従者たちに促されるように王のほうへ進んでいく。
 そして、ついさきほど習ったように、その場で膝をつき、頭をさげる。頭をさげるまでの一瞬で王を翡翠眼で見た。目に力を入れ、レベル上限、素質値まで一度に見通す。

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種族:人間(?)
名前:プローム
クラス:魔法騎士
レベル:41☆
レベル上限:41
ステータス:
 MP:153/153
 物理攻撃:81
 物理防御:67
 魔力攻撃:81
 魔力抵抗:75
 速度:55
素質値:
 MP:90
 物理攻撃:93
 物理防御:75
 魔力攻撃:92
 魔力抵抗:84
 速度:60
 合計素質値:494
技能:
・剣術Lv3
・攻撃魔術(火・雷)LV2

スキル:
・MP回復率上昇LV2:魔法騎士スキル、MP回復率に一割の補正
・攻撃魔法威力向上LV1:魔法騎士スキル、魔法にプラス補正
・剣術補正Lv3:騎士スキル、剣を使用した攻撃にプラス補正
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 翡翠眼を閉じる。
 驚いた。強すぎる。勇者でもないのに合計素質値は五百に近い。その上、素早さ以外はすべて平均以上、物理と魔法を両方を使いこなせる魔法騎士という優遇クラス。
 しかも、常人ではありえないレベル上限40オーバー。正真正銘化け物だ。
 ちなみにレベルの横に☆がついているのはレベル上限に至った証。これは、鑑定紙でも確認できる。

 そういえば、王家は勇者の血を取り入れ強い血脈を作り続けたと聞いたことがある。それであればこの強さも納得できる。

 だが、気になるのは人間(?)という表記。こんな表記は初めて見た。
 間違いない、こいつは何かをやっている。それこそ人の道から外れたことを。

「よく来てくれたな。新たな勇者よ。顔をあげよ」
「はっ、陛下!」

 言われたとおりに顔をあげる。
 顔をあげながら考える。脱走する際には少なくとも王がいない間を狙う。
 彼単独の戦闘力も危険だし。彼が不在になれば、彼の護衛につく精鋭たちも不在になる。

「ふむ、いい面構えだ。フレアからお主のクラスは回復術士と聞いておるが間違いないか?」
「はっ、その通りでございます」

 王は一瞬落胆した顔をした。
 回復は他で補える。勇者には直接的な戦闘力を求めていたのだろう。
 王は表情を取り繕って口を開いた。

「回復術士の勇者、それは我が国がもっとも求めていたものだ。お主の力の目覚めをうれしく思うぞ。お主には【癒】の勇者という名前を与えよう」
「ありがたき幸せ。このケアル。これより【癒】の勇者と名乗りましょう」

 待ちわびた? いけ、しゃあしゃあと。
 内心の怒りを押し殺しながら、俺は感謝の言葉を伝えた。

「【癒】の勇者よ。長い魔族との戦いで幾人もの英雄や賢者たちが戦えなくなった。伝説の霊薬エリクサーでも治せない傷を受けた者たちも多い。そんな彼らも癒しに特化した勇者ならば治せるかもしれぬ」
「実際に、使用したことがないのでわかりかねますが」
「いや、勇者であればきっと癒すことができるであろう。一週間後、この国最強の剣聖が訪れる。剣技だけであれば、かの有名な【剣】の勇者すら上回る存在だ」

 剣聖、懐かしい響きだ。
 彼女の技能はなんとしてもコピーしたい。ステータスによる力任せの【剣】の勇者とは違い、剣聖の剣は美しく無駄がない。

「その剣聖だが、先日高位魔族を倒した際に右腕をもっていかれた。お主の力でなんとか癒してもらいたい。それまでは、しっかりと勇者について学ぶが良い。最高の教師たちを用意しておる」

 王の言葉を聞き流しながら、歴史は繰り返されるということを再認識した。
 俺は初めての【回復ヒール】を剣聖相手に行った。
 よりにもよって最初が剣聖だったのは最悪だった。

回復ヒール】は相手が望む正常な状態を知るために、相手のすべて、その経験、今まで受けた痛みをも術者に追体験させる。

 剣聖という、幾千、幾万もの戦場を駆け抜けた存在の経験はただの村人だった俺にはあまりにも荷が重すぎた。

 剣聖を癒したものの発狂寸前まで追い込まれてしまったのだ。それがトラウマになり俺は【回復ヒール】を使えなくなり、結局薬漬けにされたのだ。

「かしこまりました。私の力、この国に捧げましょう」
「ふむ、いい心がけだ。下がっていいぞ」

 そうして、歴史をなぞった形で謁見は終了した。

 ◇

 謁見のあとは部屋が与えられた。
 専門の教師が与えられ、勉学に励む。
 冒険に必要な知識、一般教養、礼儀作法。さまざまな知識を叩き込まれる。
 この段階では、まだまっとうな勇者として扱うつもりがあったのだと改めて俺は認識していた。

 勉強のあとは軽い剣技の訓練。剣技能を回復術士が得られないとはいえ、護身術にはなる。
 その後は夕食と風呂。あっという間に夜になった。

 俺は与えられた豪華な個室でベッドに横になる。村にいたころには考えられない上質なベッドだ。疲れがたまっているせいでやけに眠い。

 意識が落ちかけたころ、扉が開く音がした。そちらに目を向ける。

 すると俺の部屋に若い女性が入ってくる。
 入ってきたのは最初に紹介された使用人。この国の精鋭騎士にも匹敵する力をもった俺の監視者だ。

「勇者様、私、勇者様を一目見たときから恋に落ちましたの。是非、抱いてくださいな」

 薄く肌に張り付く煽情的な服を着ている。
 その女性が俺を押し倒し、そして服を脱がし始めた。

「やめろ、やめてくれ」
「そんなこと言って、ここは元気ではありませんか」
「本当にやめてくれ。どうしてこんなことを!?」
「言いましたわ。恋に落ちたと」
「やめてよ。お姉ちゃん」

 必死に抵抗するが、俺のレベルは1。身体能力の差はどうしようもない。
 力づくで俺は犯され、汚された。

「怖い、怖いよ」

 汚されている間、なんとなく、精神年齢はともかく、実年齢は成人したばかりの十五なので無垢な少年を演じてみた。
 どうやら、女の琴線に触れたらしく、それはそれは楽しそうに俺を凌辱してくれた。

 女性が去り、一人になってから笑う。
 こんなところまで一週目と同じか。

「最初は、喜んだんだけどな」

 エロくて美人な若い女に迫られて、健全な男。それも童貞だった俺が喜ばないはずがない。

 だが、今回は素直に喜べない。俺は彼女の真の目的を知ってしまっている。

 目的は二つ。
 一つは俺の懐柔だ。勇者を肉欲に溺れさせ操りやすくする。
 もう一つは、レベル上限の解放。勇者は自身のレベル上限が解放されているだけではなく、男性の場合、命の源を直接注ぐことで他者のレベル上限を一つあげることができる。とはいえ、一日に何度やっても意味があるものではない。もっとも魔力と生命力がこもった、その日の一発目でなければならない。

 簡単に言えば勇者とやれば強くなれるのだ。
 思えば、あの使用人たちが無駄に強いのも、それ目的で一流の女冒険者たちが志願しているのが原因かもしれない。レベルの差は些細な素質値なんて撥ね返す。

「これから、日替わりか」

 あの使用人たちは、レベル上限の増加目当てで毎晩襲ってくる。
 どうせ抵抗できないし楽しもう。幸い、みんな見た目はいいのだから。

 ◇

 王城に来てから一週間が過ぎた。
 だいぶ知識も得られたし、夜のほうにも慣れてきた。
 まだ、女性が相手をしてくれるだけマシだなと俺は思う。

 一週目の薬漬けにされていた間は、容赦なく男ともさせられた。男でもレベルの上限をあげられるなら喜んでしゃぶってくる。強さのためなら人間はどんなことにも耐えられるのだ。
 そのことも俺が復讐に燃えている原因ではある。あの屈辱忘れるものか。

 そして、とうとう運命の日が来てしまった。
 俺が回復術士としても使えないと判断されてしまう日。
 王女フレアが、俺はまっとうな勇者としての利用価値はないから家畜として使いつぶそうと決定したその日が。

 俺は呼び出され、とある一室でその少女と出会うだろう。
 剣聖クレハ・クレイレット。
 この世界でもっとも美しい剣技をもった美少女と。







 
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