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 演壇に立ったのは、身なりはよいが、普通の男性だった――。過激派組織「イスラム国」(IS)が最大拠点としたイラク北部モスルのヌーリ・モスクで、最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者が2014年7月に行った演説を見た住民の男性が、その時の様子を証言した。演説でバグダディ容疑者は自分はカリフ(預言者ムハンマドの後継者)だと宣言。ISはその映像を世界に発信した。

 証言した男性はアブドラ・マスードさん(50)。ヌーリ・モスクから約150メートルの場所に自宅がある。

 14年7月4日、スンニ派のイスラム教徒のマスードさんは、金曜日の礼拝に参加するため、ヌーリ・モスクへ向かった。モスクの外には普段見ない軍用車両が並んでいた。モスクの中に入ると、黒い服装の一団が最前列に陣取り、周りをIS戦闘員が警備していた。

 説教の時間になると、身なりのよい男性が演壇に立った。マスードさんは演壇から10メートルほどの場所にいたが、男性にカリスマ性は感じなかった。疲れていたので演説は上の空だったが、男性が「王や統治者が約束するようなぜいたくな暮らしは、私は約束しない。その代わり、神が信徒に約束したことを、私はあなた方に約束する」と語ったのは鮮明に覚えている。

 マスードさんは「男性はISの地元司令官だろう」と思っていた。ところが、後日、テレビのニュースで、カリフ就任を宣言する人物がヌーリ・モスクに現れたと報じられ、演説した男性はバグダディ容疑者本人だったと知った。

 マスードさんはモスル出身。6…

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