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"【FGO】純真無垢なるシリアルキラー", is tagged with「ぐだ男」「Fate/GrandOrder」and others.

ジャックかアンメアかダヴィンチちゃんかニトクリスで一本書けって友人に脅迫されたの...

鷹星天雅

【FGO】純真無垢なるシリアルキラー

鷹星天雅

6/27/2017 22:48
ジャックかアンメアかダヴィンチちゃんかニトクリスで一本書けって友人に脅迫されたので書きました
「此よりは地獄。私達は炎、雨、力――」

 視界一面暗い色。月夜に紛れて影が飛ぶ。闇に紛れた影の姿を追うことは、マスターである俺にも難しい。

「殺戮をここに。『解体聖母』(マリア・ザ・リッパー)――!」

 さっと一陣冷たい風。次の瞬間には、俺達の前に立ちはだかっていたマリカスフィンクスが、腕を落とし足を落とし、首を落とし。その断面から血液を噴き上げながら、崩れ落ちた。

「……バラバラになっちゃった」

 すとんと降り立つ黒い影。漆黒の、所々破れたマントの中から甘く幼い、少女の声。鉄の臭いが鼻を突く。マントの中から伸びてきた手に握られている肉の塊、血液溢れるそれは――。

「だいじょうぶ? おかあさん」
「大丈夫。ジャックこそ、大丈夫?」
「うん。だって、解体しただけだもん」

 彼女が手のひらを返すと、先ほどまで脈動していたのであろうスフィンクスの心臓がべしゃりと音を立てて地に落ちた。血濡れた手で、マントを取り払ったその中身。現れた銀髪は月光を受けて煌めき、微かに黄色がかっているものの色味の薄い瞳もまた、興奮の為か爛々と。極めて露出の高い衣装が故に、その肌は返り血で赤く染まっていた。
 十になるか、ならないか。年端も行かぬ少女、いや幼女――その真名、ジャック・ザ・リッパー。マントで頬の返り血を拭い……きれずに、頬に赤い跡を作りながら。

「疲れちゃった。おかあさん、おんぶして!」

 あどけない笑みを浮かべ、とてとて俺の背後に回り込んだ後にひとっ跳び。非常に軽い衝撃と共に、首に手が回される。

「お疲れ様。帰ろうか」
「うん。ねぇおかあさん、今日の晩御飯はなぁに?」
「さぁ、なんだろう。でもジャックは大活躍だから、きっとエミヤがジャックの食べたいもの作ってくれるよ」
「わーい! じゃあ、えっとね――」

 無邪気にはしゃぐ姿は純真無垢。されど彼女はシリアルキラー。
 血液の、鉄の入った生臭さを感じつつ、この背に殺人鬼を乗せて。会話は和やか、穏やかに。俺たちはカルデアへの帰路に着いた。

 ◆

「こんばんわ、おかあさん」

 マイルームで、レイシフトの報告書を作っていた所だ。音も無く、いつの間にか彼女は俺の背後に。立っていた。いつの間に扉を開いたのか、それすら気が付かなかった。

「あぁ、ジャック。どうしたの?」
「うーん……なんだか今日は、眠れないの。おかあさんと一緒なら、眠れるかなって。駄目?」
「いいよ。でも、俺はもう少し起きてなきゃいけないから。俺のベッド、使っていいよ」

 視線をレポート作成中のPCに戻すと。ジャックが俺の腕を潜り、足をよじ登って座り込み、こじんまりと腕の中に収まってしまった。ぐるんと首を捻じって俺を見上げ、ニッと笑って見せた。

「おかあさんと一緒が良いの。だから、待ってるね」
「ん。分かった」
「お仕事の邪魔はしないよ?」
「ありがとう。良い子、良い子」

 ぽん、と頭に手を乗せて撫ででやると、ジャックは目を細めてにひひと笑った。手元をPCのキーボードに戻すと、ぽすんと俺の胸の中に頭を投げ出してきたけれど……言葉通り、邪魔はしてこない。
 カタカタと、タイプ音だけが響く。

「ふぁ……」
「眠そうだね、おかあさん」
「うん……少しね。だけど、もう少しで終わるから」
「ねぇ、おかあさん」
「うん?」
「どうしておかあさんはそんなに頑張るの?」
「どうしてって。世界を救わなくちゃいけないからね」

 至極当然のことを答えたつもりなのだけれど、ジャックは……その身に似合わぬ、強い力で。俺の脚を、ズボンの上から掴んだ。

「おかあさん。世界はとても、醜いんだよ。わたしたちはそのことを知っている。こんな世界を救うために、どうしておかあさんが頑張らなきゃいけないの?」

 世界は醜くなんてない、美しいものなんだ――ジャックの境遇、成り立ちを想えば、そんな言葉を口にすることは出来なかった。その言葉は、余りにも安っぽい。

「そう、だね……きっと、俺が世界の醜さを知らないから、なんだろうね。綺麗なところを知っているから、醜いところを知らないから。良い人ばかりじゃない、助ける価値の無い人間がいるって分かっていても、俺が知っている良い人達を助ける為に……かな」
「……幸せだったんだね、おかあさんは」
「まぁね」

 否定出来る事ではない。普通に生まれ、普通に生きて、成長して。それだけのことが、どれほど幸せなことであるか。彼女は知っている。

「世界は醜くて、酷いことをする人ばっかりで。救う価値があるのかなんて、私は分かんない。だけど……うん。おかあさんのことが好きだから。わたしたちは、何でもするよ。おかあさんの為に」

 包み込む様に、ジャックの小さな体に手を伸ばして抱きしめる。この小さな体で……いや、小さくて弱かった故に、世界の醜さを知ってしまったジャック、達。世界の美しさを知らない彼女達に、そう言った面を見せるのも……マスターとしての、俺の役目の一つ、かもしれない。

「……もう、今日は寝ちゃおっか」
「うん!」

 ジャックは俺の膝の上でもぞもぞと。体の向きを反転させ、俺の腹に手足を回してしがみついた。

「このまま、ベッド。行くの?」
「うん。暖かいお布団の中で、おかあさんにぎゅってしてもらったら……きっと、気持ちいいと思うから」
「分かった。それじゃあ、このままベッドに行こう」

 純真無垢にて悪逆非道、幼い彼女はシリアルキラー。その真名は悪名高き切り裂きジャック、ジャック・ザ・リッパー。19世紀末のロンドンを恐怖の底に貶めた殺人鬼。彼女が真に切り裂きジャックであるのかは既に本人でさえ分からず、そういったものである、としか言いようのない。
 しかし彼女が幼く無垢であるということは紛れもない事実で、出来る事ならば、俺は綺麗な物を見せてあげたい。マスターとして……ともすれば、おかあさんと呼ばれ過ぎたせいで母性めいた感情が芽生えているのかもしれない。

「ジャック、これでいい?」
「うん……あったかいよ、おかあさん」

 ベッドに入って毛布を掛け、腕を回せばそれだけで。ジャックは瞳をとろりと小さくして舟を漕ぐ。純真無垢なるシリアルキラーを優しく抱きしめたまま、電気を消して……俺も、闇の中で瞳を閉じた。

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